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飛行機代すらなかった旅人が「$5の単純作業から全部やる」で月商1億円。Shopify分析SaaSを伸ばしたサポート設計の仕掛け

7 min read2026年3月19日
飛行機代すらなかった旅人が「$5の単純作業から全部やる」で月商1億円。Shopify分析SaaSを伸ばしたサポート設計の仕掛け

ビジネス概要

事業タイプ

SaaS

規模感

約800円($5)の単純作業から開始

概要

Shopify店舗の注文データとGA4の計測データを正確に結びつけるための連携ツールを提供する。

ターゲット

Shopifyでネットショップを運営する事業者の意思決定者

主な打ち手

GA4連携の正確さにこだわり、導入時の初期設定・作業まで無料で対応する制作会社レベルのサポートを組み込んだ。

30秒で分かる

1旅する働き手が$5から積み上げた

ペルーのリマで飛行機代が足りない

約800円($5)の単純作業から再出発

できる仕事を全部やるに切り替えた。

2小さな受託が命綱になった

学生時代にSEOや広告の小さな会社を作った。

お金が底をつくと戻れる安全ネットになった。

3受託を「一回払い商品」に変えた

制作会社型の継続契約に限界を感じた。

作業一式をまとめて一回払いで提供した。

短期で支援し、客が自走したら卒業にした。

4相性の良い客をShopifyに絞った

ネットショップ運営者は支払いが明確だった。

サポートの価値も理解してくれた。

分析まわりに不足があると見えた。

5「数字が合わない」を製品にした

GA4移行期でデータ連携が難しくなった。

社内用の連携ツールを自作し、公開した。

GA4連携の品質にこだわった

料金を一度だけにして分かりやすくした

さらに初期設定は無料で手厚く支援した。

6本質は「良い客の不満」を設計で潰す

この話の核心は、派手な発明ではない。

相性の良い客の困りごとに絞る。

品質と料金とサポートを作り込む。

それが似た製品があっても選ばれる理由になる。


ストーリーの流れ

Problem

旅をしながら働く生活は自由な反面、収入が不安定で次の移動費すら不安になる状況だった。

  • エルマン・キュプリュはペルーのリマで口座残高を見て飛行機代が足りない現実に直面した。
Action

停滞を抜けるために「小さくてもいい。できる仕事は全部やる」と決めて仕事を積み上げた。

  • 夜遅くまで仕事サイトを見続けて受注を増やす方針に切り替えた。
  • 最初は約800円($5)の単純作業から始めた。
  • 対応できない内容は別のフリーランスに教わりながら仕上げた。
  • その結果、トルコの家族に会いに帰れるだけの資金を作った。
Insight

制作会社的な継続契約は関係が長引くほど目的がズレやすく、客が損をする構造があると気づいた。

  • 最初は熱心でも時間がたつと対応が最低限になりやすいと感じていた。
  • 基本設定すら整っていない広告アカウントも少なくない現場を見てきた。
Monetize

Solverhoodを立ち上げ、月額ではなく必要作業一式をまとめた一回払いの提供形態に変えた。

  • ブランディング、サイト制作とSEO、広告、データ連携、追加開発などをセットにして売った。
  • 短期間で集中支援し、客が自分で回せる状態になったら卒業してもらう設計にした。
  • この形でSolverhoodは安定し、数年で大きな売上を作った。
Insight

いちばん相性の良い客はShopifyでネットショップを運営する事業者だと見えてきた。

  • こうした事業者はすでに売上が立っていることが多く、必要な機能にきちんとお金を払う。
  • 良いサポートを価値として理解してくれる点が決定的だった。
  • 一方でShopify向けアプリには分析まわりで足りていない部分があった。
Problem

GA4移行期の影響でShopifyの注文データとサイトデータを正しく結びつけられず「数字が合わない」問題が起きていた。

  • 売上規模の大きい店でも正しくデータを取り出すことが難しくなっていた。
  • Solverhoodで外部連携ツールを使うと数字がずれる問題が起きやすかった。
Action

社内用に連携ツールを自作して改良し、外部に公開してAnalyzifyとして提供した。

  • 単体の製品として売れるのかは慎重に見ていた。
  • 無料で使える形で公開し、導入方法を解説する動画も用意した。
  • 要望を取り込みながら機能を拡充していった。
Growth

似たツールがある中でも、GA4への連携品質と料金の分かりやすさでAnalyzifyは伸びた。

  • 正確にデータを送れることにとことんこだわった。
  • 導入費用は一度だけで、その後も使い続けられる料金設計にした。
  • データ処理はGoogle側の仕組みを使うため、利用者が増えてもコストが急増しにくい形にした。
Action

SaaSに制作会社レベルの手厚いサポートを組み込み、初期設定や導入対応を無料で提供した。

  • 必要であればアカウントの状況を実際に確認し、作業までこなした。
  • やり方も丁寧に説明し、競合が高額で請求しがちな部分を体験として提供した。
Monetize

導入後の追加サポートを希望する利用者向けに継続課金のサポートプランを用意した。

  • 満足度は高く、毎月の定期収益が積み上がっていった。
  • 定期収益の積み上がりに伴いチームも大きくなっていった。
Insight

Shopifyは支払い能力のある店舗が多い一方でアプリ供給とサポートが追いついておらずSaaSを作る場として強いと捉えた。

  • 市場規模に比べてアプリの数は十分とは言えないと見立てた。
  • サポートが手薄なアプリが目立ち、そこにチャンスがあると考えた。
  • 一定規模までのアプリ売上に対する手数料が下がるなど開発者に有利なルール変更もあった。
Growth

サポートの徹底がレビューにつながり、レビューが次の利用者を呼ぶ循環を重視した。

  • 丁寧な対応はレビューにつながるという前提で運用した。
  • レビュー数が少なく見えても、その裏に多くの利用者がいることがあると捉えた。
Insight

新しいアプリのアイデアは評価の高いアプリを2つ試し不便な点を見つける方法で探せると整理した。

  • トップのアプリは利用者が多すぎて細かい改善まで手が回らないことがある。
  • 小さくても根強い不満の穴を埋めるだけでも大きな価値になる。
Scale

いちばん良い客の困りごとに全力で向き合い手厚いサポートで信頼を積み上げることがSaaSを強くすると結論づけた。

  • 派手な発明から始めなくていいという学びに集約した。
  • シンプルなツールでも利用者が増えるほど収益が伸びやすい特性を前提に置いた。

旅をしながら働く。自由に見える一方で、収入は安定せず、次の移動費すら不安になる瞬間がある。

Shopify向けSaaSツール「Analyzify」を作ったエルマン・キュプリュも、まさにそんな停滞と迷いの中にいた。ペルーのリマで口座残高を見て、飛行機代が足りないと気づく。そこから「小さくてもいい。できる仕事は全部やる」と決め、約800円($5)の単純作業から積み上げていった。

やがて制作会社的な働き方に限界を感じ、「いちばん相性の良い客」の困りごとに絞ってプロダクトを磨く。似たツールがあっても伸びた理由は何だったのか。その答えは、サービス設計とサポートの作り込みにあった。

成功するSaaSの作り方:いちばん良い客のためのサービスを作る

仕事の道は、まっすぐには進まない。子どものころに思い描く職業は、料理人や医者のように分かりやすいものが多い。でも大人の世界には、名前すら知られていない働き方が山ほどある。遠回りに見える経験が、あとで強い武器になることもある。

Shopify向けSaaSツール「Analyzify」を作ったエルマン・キュプリュの歩みは、まさにそんな遠回りの連続だった。

生活のための小さな事業が、命綱になった

エルマンと親友のアリ・ウルヤイは、若いころから「どこかに大きなチャンスがあるはずだ」と考え、国を変え、仕事を変え、動き続けた。

2人がトルコで学生だったころ、地元企業向けにSEOや広告運用をする小さな会社を立ち上げた。最初は大きな夢のためというより、生活の安全ネット的な位置づけだった。挑戦が失敗してお金が底をついたとき、ここに戻れば現金を作れる——そんな感覚だ。

事業を続けるうちに、SEO・広告、そして後にはデータ分析の知識が着実に積み上がっていった。この積み重ねが、あとで大きく効いてくる。

10代後半から20代前半にかけて、2人はリモートで働きながら世界を旅した。必要なときは仕事を増やし、余裕ができたら減らす。収入は安定しないが、旅を続けるには十分だった。

だが2016年、ペルーのリマで現実にぶつかる。口座残高を見ると、次の移動の飛行機代すら足りなかった。

エルマンは夜遅くまで仕事サイトを見続け、こう決めた。「小さくてもいい。できる仕事は全部やる」

最初の仕事は、約800円($5)の単純作業だった。

それでも何でも受ける姿勢で動くと、少しずつ依頼が増えた。やがて大企業からの相談も入るようになり、対応できない内容が出れば別のフリーランスに教わりながら仕上げた。そうやって2人は、トルコの家族に会いに帰れるだけの資金を作った。

「制作会社」ではなく「商品」にした

その後、仕事の形は変わっていく。エルマンは、いわゆる制作会社のやり方に疲れを感じていた。

毎月の継続契約は一見安定するように見えるが、関係が長引くほど空気が悪くなることがある。最初は熱心でも、時間がたつと対応は最低限になりやすい。結果を出すより契約を続けることが目的になってしまう会社もある。

エルマンは多くの広告アカウントを見てきたが、基本設定すら整っていない例も少なくなかった。これでは客が損をする。

そこでエルマンは、Solverhoodという形を作った。毎月の契約ではなく、必要な作業一式をまとめて「一回払い」で提供する。ブランディング、サイト制作とSEO、広告、データ連携、追加開発などをセットにして売った。

短期間で集中して支援し、客が自分で回せる状態になったら卒業してもらう。この設計でSolverhoodは安定し、数年で大きな売上を作った。

いちばん相性の良い客が見えてきた

旅を続け、さまざまな仕事をこなす中で、エルマンにははっきり見えてきたことがあった。「仕事がやりやすい客」の存在だ。

それがShopifyでネットショップを運営する事業者だった。

こうした事業者はすでに売上が立っていることが多く、必要な機能に対してきちんとお金を払う。そして何より、良いサポートを価値として理解してくれる。

一方、Shopify向けのアプリは多そうに見えても、まだ足りていない部分があった。特に大きかったのが、分析まわりの困りごとだった。

「数字が合わない」問題からAnalyzifyが生まれた

当時、Googleアナリティクスは新しい仕組み(GA4)への移行期に入っていた。古い仕組みは終わりに向かい、計測の考え方も変わっていった。

その影響で、売上規模の大きい店でも「サイトのデータを正しく取り出して、Shopifyの注文データと結びつける」ことが難しくなっていた。

Solverhoodでも最初は外部の連携ツールを使っていたが、数字がずれるといった問題が起きやすかった。そこでエルマンは社内用に連携ツールを自作し、それを改良して外部に公開したものがAnalyzifyになった。

最初は「単体の製品として売れるのか」と慎重だったが、需要は強かった。無料で使える形で公開し、導入方法を解説する動画も用意した。早い段階で利用者が集まり、要望を取り込みながら機能を拡充していった。

似たツールがあっても勝てた理由

市場には似たツールがいくつもあった。それでもAnalyzifyが伸びたのは、2つの工夫が大きい。

1つ目は、GA4への連携品質だ。正確にデータを送れることにとことんこだわった。

2つ目は、料金の分かりやすさだった。導入費用は一度だけで、その後も使い続けられる。データ処理はGoogle側の仕組みを使うため、利用者が増えてもコストが急増しにくい。

エルマンはこう考えた。「売ること」と「与えること」は相反しない。料金が明確だと、利用者は安心して判断でき、評価もしやすくなる。

SaaSに「制作会社レベルのサポート」を組み込んだ

Analyzifyのもう一つの特徴は、サポートだった。

一般的なSaaSは説明記事を用意して「読んで設定してください」で終わりになりがちだ。しかしエルマンは、制作会社のような手厚さをSaaSに組み込んだ。

初期設定や導入時の対応は無料。必要であればアカウントの状況を実際に確認し、作業までこなす。やり方も丁寧に説明する。競合が高額で請求しがちな部分を、最初から体験として提供した。

導入後も、追加サポートを希望する利用者向けに継続課金のサポートプランを用意した。満足度は高く、毎月の定期収益が積み上がり、チームも大きくなっていった。

ShopifyはSaaSを作る場として強い

Shopifyは、アプリを作る側にとって魅力の大きい市場だ。売上規模の大きい店舗が多く、必要な機能に対して支払う力もある。

それでいて、アプリの数は市場規模に比べて十分とは言えない。サポートが手薄なアプリも目立つ。そこにチャンスがある。

さらに、一定規模までのアプリ売上に対する手数料が下がるなど、開発者に有利なルール変更もあった。事業として黒字化しやすい環境が整ってきている。

Shopify向けにアプリを作るなら、サポートの徹底が特に重要になる。丁寧な対応はレビューにつながり、レビューは次の利用者を呼ぶ。レビュー数が少なく見えても、その裏に多くの利用者がいることがある。わざわざレビューを書くのは、強い満足を感じた人が多いからだ。

新しいアプリのアイデアの見つけ方

エルマンが勧めるアイデアの探し方はシンプルだ。

同じ分野で評価の高いアプリを2つ試し、「どこが不便か」を探す。

トップのアプリは利用者が多すぎて、細かい改善まで手が回らないことがある。すると小さくても根強い不満が残る。その穴を埋めるだけでも、利用者にとっては大きな価値になる。

いちばん良い客の困りごとから始める

SaaSの強みは、シンプルなツールでも利用者が増えるほど収益が伸びやすいところにある。少人数では小さな収入でも、利用者が何千・何万と増えれば、事業は大きく育つ。

Analyzifyの物語が教えるのは、派手な発明から始めなくていいということだ。いちばん相性の良い客の困りごとを見つけ、そこに全力で向き合い、手厚いサポートで信頼を積み上げる。その積み重ねが、SaaSを強くする。