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Story AIツール月商10万〜50万買い切りエンジニア

「欲しいと言わないと、何も始まらない」15歳の交渉で人生が動いた話

8 min read2026年2月18日
「欲しいと言わないと、何も始まらない」15歳の交渉で人生が動いた話

ビジネス概要

事業タイプSaaS
概要見出しの型をもとに、見出し文を自動生成するサービス
ターゲット商品の紹介ページなどのコピーを書いて販売したい事業者・マーケター
規模感買い切りプランで1週間で大きな売上
主な打ち手運営側に直接連絡して新しいAI技術の早期アクセスを取り付け、サービスをAI中心に作り替えた
フェーズ売却後

欲しいものがあるのに、断られるのがこわくて言えない。挑戦したいのに、最初の一言が出なくて立ち止まってしまう。そんな感覚に覚えがある人は多い。

オランダ出身の起業家ダニー・ポストマも、もともとはバリ島で働く「よくいるデジタルノマド」の一人だった。けれど数年後、AIを使ったサービスを形にして大きな金額で売却し、その2年後には別のAI写真サービスでも発売直後から大きく売るところまでたどり着く。

特別な才能の話ではない。言うべきことを口にし、動き、積み上げた。その最初のスイッチが、どこにあったのか。

「欲しい」と言わないと、世界は動かない

欲しいものがあるのに、頼むのがこわくて言えない。断られるのがいやで、最初からあきらめてしまう。そういう場面は誰にでもある。

でも現実はシンプルだ。言わなければ、手に入らないことが多い。

オランダ出身の起業家ダニー・ポストマは、そのことを人生で何度も証明してきた。AIを使ったサービスを素早く形にし、大きな金額で売却した。その2年後には、別のAI写真サービスを出して、発売直後から大きく売った。

今でこそ有名だが、2019年ごろのダニーは、バリ島で働く「よくいるデジタルノマド」の一人にすぎなかった。そこから数年で景色が変わったのは、特別な才能というより、「欲しい」と言って、動いて、積み上げたからだ。

パソコンの時間を「遊び」から「武器」に変えた

子どものころのダニーは、ゲーム機が欲しくて父に何度も頼んだ。なかなか許してもらえなかったが、誕生日にようやく手に入った。ダニーは夢中でゲームをやった。

そんなある日、父は一冊の本を渡す。CSSという、ウェブサイトの見た目を作る技術の本だった。

「そんなにパソコンを触るなら、役に立つことに使え」

父の狙いはそこだった。

ところがダニーは、プログラミングのほうにもハマった。作ったものが画面に出る。少し直すと、すぐ変わる。ゲームと同じくらい刺激があった。夜遅くまでサイトを作り続け、学校では得られなかった達成感を感じた。

学校自体は好きではなかった。ただ、興味のあることなら、いくらでも集中できた。

15歳、はじめて「交渉」でパソコンを手に入れる

15歳のとき、母の職場でウェブサイト作りを手伝う話が来た。ダニーはそこで、ただ働くだけにしなかった。

「ノートパソコン代の半分を出してほしい」

そう頼んだ。

作業は手打ちのHTMLが中心で、何百時間もかかった。それでも最後にパソコンを手に入れた経験は、ダニーの中に残った。

頼めば、状況は変わる。口に出せば、交渉が始まる。

16歳、ウェブサイトを売って「時間がお金になる」感覚をつかむ

次にダニーは、自分で作ったウェブサイトが売買されている世界を知る。大金ではないが、確かに売れる。

売れそうな分野を選び、とにかく形にして出す。すると本当に売れた。

短い時間の努力が、そのまま現金になる。アルバイトのように「時給で時間を切り売りする」感覚とは違った。ネットで何かを作ることの強さを、ダニーは早い段階で知った。

「かっこいい」より「成果が出る」デザインへ

ダニーは学び続け、2011年に卒業した。その後もコミュニケーション、デザイン、UX、メディアなどを学んだ。大学では、学んだことが仕事につながる実感があり、姿勢が変わった。

特に大きかったのは、フロントエンドや、成約率を上げるためのページ作りに関わったインターン経験だ。

そこで理解したのは、デザインは「見た目をきれいにする」だけではないということだった。

なぜこの形が売上につながるのか。なぜこの文章の順番なのか。理由を言葉で説明できると、仕事は強くなる。好みで作る人ではなく、結果を出す人になれる。

時給約3,000円($20)から約1.1万円($75)へ。「言ったもん勝ち」ではなく「言わないと負け」

ダニーは商品の紹介ページを作る仕事を、時給20ドル(約3,000円)で続けていた。やがて思う。成果は出している。なら、単価を上げるべきだ。

周りからは止められたが、ダニーは時給75ドル(約1.1万円)を要求した。

相手は高いと感じた。それでも、ページが売れていたこともあり、最終的に受け入れた。

ここでも答えは同じだった。言ってみなければ、上がらない。

バリ島で、人と環境が背中を押した

2015年に大学を終えるころ、ダニーにはウェブ制作、デザイン、文章、ビジネスの経験がそろっていた。仕事も順調だった。だが次の段階に進むには、力を一つの大きな挑戦に向ける必要があった。

2016年、オランダでの仕事をいったん終え、アジアを旅し始める。短い休みのつもりが、長い旅になった。

旅は、過去の経験もほどいていった。学校でいじめられて自信がなかった自分から、落ち着いて自分を出せる自分へ。環境が変わると、人は変わる。

バリ島では、短期間で次々とサービスを作る起業家とも出会った。コワーキングスペースで、個人でプロダクトを作る人たちともつながった。毎週集まって進捗を見せ合い、遠慮のない批評や助言をもらう。そんな場があった。

感染症の流行で観光客が減った時期も、少人数の開発者たちは島に残り、新しいサービスを作り続けた。ダニーもその輪の中で、後に大きく伸びる二つの事業を形にしていく。

1回目の大きな成功:Headlimeを売るまで

最初のヒットは、ロックダウンの時期に生まれた。最初はただのPDFだった。「見出しの型」をまとめただけの資料だ。

でもダニーはそこで止まらない。型を使って見出し文を自動で作り変えるソフトに育てた。買い切りプランを出すと、1週間で大きな売上が立った。

伸び始めたタイミングで、ダニーはさらに新しいAI技術に目を向ける。多くの人が一般公開を待つ中、ダニーは運営側に直接連絡し、早期アクセスを求めた。

つまり、ここでも「欲しい」と言った。

結果、早く使えるようになり、サービスをAI中心に作り替えた。成長スピードは一気に上がる。そして大きな買収提案を受け、Headlimeを売却した。

バリ島で過ごした数年の間に、ただの挑戦者だったダニーは、「結果を出して売る」起業家になった。

2回目の成功:HeadshotProで、もう一度勝つ

売却後のダニーは、しばらく気楽に過ごした。小さな挑戦もした。結婚してバリ島で暮らし、生活は楽しかった。

でも次第に退屈が出てくる。何かを作っていないと、物足りない。

そのころ気になっていたのは、AI画像生成が「アート」中心で使われていることだった。もっと実用的に使えないのか。たとえばSNSのプロフィール写真のように。

ダニーはプロフィール画像を作るサービスに取り組み始めた。新しく公開された技術を使い、同じ分野の友人とも情報交換しながら進めた。

短期間で公開するとSNSで話題になり、大きく売れた。だが市場には強い競合も入ってきた。広告で一気に広げるアプリ型サービスがシェアを取り、利益は削られていった。

そこでダニーは判断する。広く浅く戦うのではない。狙いを絞り、専門性で勝つ。しかも仕組みは自分たちのものにする。

こうして生まれたのが、写真館で撮ったようなリアルな写真を作るHeadshotProだった。

「撮影しない時代」が来ると見た

ダニーは、人物写真は将来「必ず撮影しないといけないもの」ではなくなると考えている。

実際の撮影はお金がかかるし、緊張で表情が固くなりやすい。オンラインで十分な品質の写真が作れるなら、負担は大きく減る。

ダニーは安定した画像生成技術を土台にしながら、学習の仕組みを自分たち用に作り込み、リアルさに重点を置いた。SNSに出すと、再び一気に広がった。発売直後から大きな売上が出て、そのまま拡大していった。

売れるかどうかは「クリックの後」で決まる

ダニーが強く見ていた数字がある。SNSの投稿からサイトに来た人が、その後どれくらい行動するか。申し込みや購入につながる割合だ。

反応が良ければ、商品として強い。HeadshotProは特に数字が良く、勝てると確信できたという。

これでダニーは示した。成功は一度きりの運ではない。同じ姿勢で、もう一度勝てる。

燃え尽きないために、最初からチームを考える

一人で何でもやる文化はある。だがダニーは、早い段階でチーム作りに慣れるべきだと考えている。

過去に疲れ切って、長い休みが必要になった経験がある。その後、人を雇うことを受け入れた。

全部を一人で抱えない。そうすると起業家としての自由度が上がる。心も体も、長く走れる。

「時間を売る」働き方から抜け出す

もう一つ、ダニーが大事だと思っていることがある。できるだけ自動で回るビジネスを目指すことだ。

仕組みが整えば、休んでも事業が止まりにくい。働いた時間だけお金になる形から離れ、仕組みで収益が生まれる形へ移る。そうすると「ずっと働き続けないと生活できない」状態から抜け出せる。

自分で上限を決めない。「もっと」を口に出す

ダニーが一番伝えたいのはここだ。

「自分はここまで」と勝手に上限を作らない。事業が伸び始めると、可能性は想像以上に広がる。

大きく夢を見る。そのために必要なことを聞きにいく。頼む。交渉する。新しい技術に早く触れにいく。

その積み重ねが、短期間で二度の大きな成功を連れてきた。欲しいなら、言う。世界を動かす最初のスイッチは、いつもそこにある。