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家も売った無名の広告屋が「カードはおまけ」と言い切って6か月でVisaデビットを実現。暗号資産を“使えるお金”に変えた金融インフラの全戦略

7 min read2026年4月10日
家も売った無名の広告屋が「カードはおまけ」と言い切って6か月でVisaデビットを実現。暗号資産を“使えるお金”に変えた金融インフラの全戦略

ビジネス概要

事業タイプ

Other

規模感

約6か月で形にし、実際に使えるカードとして提供

概要

暗号資産の価値をVisa決済で日常の支払いに使えるようにするデビットカード/口座連動サービス。

ターゲット

暗号資産を保有して日常の買い物に使いたい個人の本人

主な打ち手

広告事業からカード事業へ軸足を移し、規制に沿って小規模銀行・信用組合と組んで合法的なVisaデビット発行ネットワークを構築した。

30秒で分かる

1広告出身の創業者が、暗号資産デビットカードを実現。

カードは「おまけ」のはずだった

売上は大きく伸びた

2始まりは広告のムダ削減だった

広告費の中抜きを減らす狙い。

ブロックチェーンで直送を考えた。

39か月で売れず、声が変わった

大手広告会社の反応は悪くない

でも本格売上につながらない

導入の手順と契約が壁だった。

4「カードだけ欲しい」で軸を移した

広告と無関係な人が問い合わせた。

暗号資産の使い道が少なかった。

Visaデビット「Block card」を中心にした。

5近道せず、銀行と規制で組み上げた

Visa連携は責任が曖昧になりがち。

Unbankedは正式手順で発行を選んだ。

大手が動かず、小さな銀行から広げた。

Litecoin向けを約6か月で出し信用が上がった。

6本質は「需要」と「手順」だった

本当に求められたのは支払いの出口だった。

規制を飛ばさず、止まらない形にした。

おまけの機能が本業になった。


ストーリーの流れ

Problem

暗号資産は価値があっても現実の支払いに使いにくいという課題があった。

  • 価値を使えるお金に変えるには法定通貨の世界とつながる出口が必要だった。
  • 出口としてカードはわかりやすいが銀行・カード会社・法律が絡み技術だけでは進めない領域だった。
Insight

広告の中間手数料で価値が目減りする構造にブロックチェーンで風穴を開けられると考えた。

  • 広告主の支払いがそのまま掲載サイトに届かず仲介が積み重なる問題があった。
  • 仲介を減らして広告の価値を直接届ける仕組みを構想した。
Action

広告の仕組みを成立させる部品として暗号資産と連動したカードの必要性に行き着いた。

  • サイトが受け取った価値を暗号資産として保有し現金のように使える状態を目指した。
  • 暗号資産を使える形にするためカードが浮上した。
Team

創業者は高収入の仕事を辞め家も売って無給で事業に賭けた。

  • 貯金を取り崩しながら時間も体力もすべて事業につぎ込んだ。
Team

共同創業者と開発者2人の少人数でプロダクト開発と企業営業を進めた。

  • 最初のチームは小さく限られた体制で動いた。
Problem

広告業界では理屈が正しくても導入障壁が高く売上につながらなかった。

  • 大手広告会社の反応は悪くなかったが本格的な売上には結びつかなかった。
  • 相手企業には変えられない手順や既存契約が山積みだった。
Insight

広告とは無関係な層から「カードだけ欲しい」という問い合わせが増え需要の中心が見えた。

  • 暗号資産は持っていても使い道が少なく生活の中で動かないという声があった。
  • 本当に求められているのは広告の新機構ではなく支払いに変える出口だと気づいた。
Action

事業の軸を広告からカードへ移しVisaデビットカード「Block card」を中心に組み直した。

  • 暗号資産を入れて使えるデビットカードとして提供する方針に切り替えた。
  • カード利用に応じた還元も用意し口座に近いサービスへ広げていった。
Problem

暗号資産企業がVisaと組むには責任の所在や規制対応が障壁になっていた。

  • 複数業者を挟む発行で責任が曖昧なケースがありVisaが取り締まりを強化した。
  • その結果Visaが暗号資産を嫌っているという誤解も広がった。
Action

近道を避けて規制に沿い銀行と組んで正式手順でカード発行まで進める道を選んだ。

  • 書類や審査が増えて時間はかかるが飛ばすと後ですべてが止まると判断した。
Scale

大手銀行が動かない状況で地域の小さな銀行や信用組合から協力網を築いた。

  • 小さな銀行にとって新しい顧客獲得の仕組みは魅力で意思決定も速いことが多かった。
  • 協力先が少しずつ増え暗号資産を扱える口座と合法的なVisaデビット発行ネットワークが組み上がった。
Monetize

自社提供に加えて他社向けホワイトラベル提供を始めた。

  • カード発行の仕組みを他社ブランドでも使える形に広げた。
Growth

Litecoinコミュニティ向けカードを実際に提供した実績が信用を一気に引き上げた。

約6か月Litecoin向けカード提供までの期間
  • 過去に似た話で失敗した経緯があり最初に問われたのは実現可能性だった。
  • 試作品の披露をきっかけに関心を得て実際に使えるカードとして提供した。
Scale

Litecoinでの実績を受けてVisa側からより大きな規模での展開相談が来るようになった。

  • 単なる利用許可を超えてより深い協力関係へ発展していった。
Action

カード単体ではなく口座・ウォレット・還元を含む生活で機能する金融体験を設計した。

  • 米ドル口座から暗号資産を購入でき既存保有者はカード連動ウォレットに送るだけの導線を用意した。
  • Visaが使える場所ならどこでも暗号資産の価値を決済に充てられる形にした。
  • 独自トークン保有で条件が良くなる仕組みも組み込んだ。
Insight

銀行口座を持ちにくい人でもスマホがあればウォレットを作れ経済参加の余地があると捉えた。

  • 本人確認の条件を満たせず口座を作れない人が多いという前提があった。
  • 暗号資産と現実の支払いの溝がつながらない限り生活は変わらないと整理した。
Scale

海外送金の文脈でもカード連動ウォレットが受け取った価値を生活支払いに直結させ得ると示した。

  • 米国で働く人が家族のいる国へ送金する場面で受け取り側がガソリンや食料品の支払いに使える想定を置いた。
  • 従来の海外送金は手数料が高いことも多く24時間動くブロックチェーンが形を変える可能性があるとした。
Action

規制を避けず当局に理解してもらう方針で信頼を積み上げた。

  • 規制回避のため海外設立する例がある中で逆の道を選んだ。
  • 取引が記録され追跡しやすい点も説明しながら時間をかけて進めた。
Growth

NFTにも取り組み保有者特典を軸に現実サービスと結びつける展開を進めた。

  • NFTを絵の価値だけで終わらせず会員権に近い発想で特典を重視した。
  • NFTを貸し出して利益の一部を受け取る仕組みもコミュニティ提案として検討した。

暗号資産を持っていても、そのままではコンビニでパンは買えない。価値を「使えるお金」に変えるには、法定通貨の世界とつながる出口が必要だ。

その出口として最もわかりやすいのがカードだ。しかし銀行、カード会社、法律のルールが複雑に絡み合い、技術だけでは前に進めない。

その難所に真正面から挑み、暗号資産で支払えるデビットカードを実現したのがUnbankedだ。ただ、出発点は「カード事業」ではなかった。カードはもともと、おまけのつもりだった。

おまけの機能が本業になった、暗号資産の「銀行」

暗号資産を持っていても、それだけでは現実の店で買い物はできない。使うには、どこかで法定通貨に換えて決済する仕組みが必要になる。その役割を最もわかりやすく果たすのがカードだ。

ただ、そこには銀行・カード会社・法律のルールが幾重にも重なっている。技術だけでは進めない世界だ。

その難所に真正面から挑み、暗号資産で支払えるデビットカードを実現した会社がUnbankedだ。売上は大きく伸びた。しかし出発点は「カード事業」ではなく、カードはもともとおまけのつもりだった。

始まりは、広告のムダを減らす計画だった

創業者のイアン・ケインは、長年デジタル広告の仕事に携わってきた。

ネット広告の世界では、広告主が払ったお金が掲載サイトにそのまま届くとは限らない。間に入る業者が多く、手数料が積み重なる。サイト側に届くころには価値が目減りし、取り分が減れば良い掲載場所も育ちにくくなる。

イアンはここに、ブロックチェーンで風穴を開けられると考えた。仲介を減らし、広告の価値を直接届ける仕組みだ。

さらに一歩進めて、サイトが受け取った価値を暗号資産として保有し、現金のように使えるようにする。そこで浮上したのが「暗号資産と連動したカード」だった。広告の仕組みを完成させるための部品として、カードが必要だったのだ。

生活をかけた挑戦と、最初のつまずき

イアンは高収入の仕事を辞め、家も売った。貯金を取り崩しながら給料なしで働き、時間も体力もすべて事業につぎ込んだ。

最初のチームは小さかった。共同創業者と開発者2人の少人数でプロダクトを作り、企業への営業を続けた。

大手広告会社とも話し、反応は悪くなかった。しかし9か月たっても本格的な売上にはつながらない。広告業界で新しい仕組みを導入してもらうのは容易ではなく、相手企業には変えられない手順や既存の契約が山積みだった。

理屈が正しくても、動かない。空気が重くなった。

想定外の問い合わせが、方向転換の合図になった

そんなとき、別の種類の連絡が増え始めた。

広告とは無関係な人や会社から「そのカードだけ欲しい」という問い合わせが届いた。理由はシンプルだった。暗号資産は持っている。でも使い道が少ない。買い物に使えない。価値はあっても、生活の中で動かないのだ。

イアンは気づく。本当に求められているのは広告の新しい仕組みではなく、暗号資産を現実の支払いに変える「出口」だと。

ここでUnbankedは舵を切った。事業の軸を広告からカードへ移し、暗号資産を入れて使えるVisaデビットカード「Block card」を中心に組み直した。カード利用に応じた還元も用意し、口座に近いサービスへと広げていく。

暗号資産企業がVisaと組むのは、口で言うほど簡単ではない

当時、「Visaと提携している」と称する暗号資産企業は多かった。だが実態は、複数の業者を挟んでカードを発行しているケースも少なくなく、責任の所在が曖昧になりがちだった。

Visaはこれを問題視して取り締まりを強化した。すると今度は「Visaは暗号資産を嫌っている」という誤解が広がる。

Unbankedは近道を探さず、法律と規制に沿った形で銀行と組み、正式な手順でカード発行まで進む道を選んだ。

時間はかかる。書類も増える。審査も厳しい。しかしここを飛ばすと、あとですべてが止まる。

大手銀行が動かないなら、小さな銀行から始める

イアンが動き始めたころ、暗号資産に前向きな銀行はほとんどなかった。特に大手は慎重で、新技術の失敗リスクを恐れて動けない。

そこで狙いを変え、地域の小さな銀行や信用組合に声をかけた。

小さな銀行にとって、新しい顧客を獲得できる仕組みは魅力的だ。意思決定のスピードも大手より速いことが多い。こうして協力先が少しずつ増え、暗号資産を扱える口座の仕組みと、合法的にVisaデビットカードを発行できるネットワークが組み上がっていった。

Litecoinのカードが、信用を一気に引き上げた

Unbankedは自社ブランドだけでなく、他社向けのホワイトラベル提供も始めた。

早い段階で大きな転機となったのが、Litecoinコミュニティ向けのカードだ。

暗号資産イベントで試作品を披露すると、Litecoin側が強い関心を示した。ただ、過去に別の会社が似た話で失敗した経緯があったため、最初に問われたのは派手な約束ではなく「本当に出せるのか」という実績だった。

Unbankedは約6か月で形にし、実際に使えるカードとして提供した。

この実績が広まると、今度はVisa側から「他の暗号資産企業向けにも同じことをより大きな規模でできないか」と相談が来るようになる。単なる利用許可を超え、より深い協力関係へと発展していった。

暗号資産を「使えるお金」に変える仕組み

Unbankedが目指したのは、カード単体ではなく、生活の中でちゃんと機能する金融の仕組みだ。

米ドルの口座を用意してそこから暗号資産を購入できるようにし、すでに暗号資産を持っている人はカードと連動したウォレットに送るだけ。あとは店で支払えば、Visaが使える場所ならどこでも暗号資産の価値を決済に充てられる。

支払いに応じた還元も用意し、一般的なクレジットカードより高い還元率を実現する設計で、独自トークンを保有することでさらに条件が良くなる仕組みも組み込んだ。

銀行口座を持ちにくい人を、世界の経済につなぐ

世界には、本人確認の条件を満たせず銀行口座を作れない人が多い。しかしスマートフォンがあれば、暗号資産のウォレットは作れる。経済活動に参加できる可能性は十分ある。

問題は、暗号資産と現実の支払いの間にある溝だ。ここがつながらない限り、生活は変わらない。

Unbankedは、その橋を架けることを自分たちの役割と考えた。

たとえば米国で働く人が家族のいる国へ送金する場面。家族側のウォレットがカードと連動していれば、受け取った価値をガソリンや食料品の支払いにそのまま使える。従来の海外送金は手数料が高いことも多く、24時間動くブロックチェーンは送金の形を変える可能性を持っている。

規制から逃げず、規制の中で進む

暗号資産の世界では、規制を避けるために海外に会社を設立する例もある。しかしUnbankedは逆の道を選んだ。規制は避けられない前提として、当局に理解してもらう方向で進んだ。

ブロックチェーン上の取引は記録が残りやすく、不正があれば追跡しやすい面もある。そう説明しながら、時間をかけて信頼を積み上げた。

遠回りな道だ。しかし長い目で見れば、「正しい手順で作った」という事実そのものが強みになる。

NFTにも広がった取り組み

UnbankedはNFTにも手を広げ、保有者に特典がつくシリーズを展開した。

NFTは絵としての価値だけで終わらない。現実のサービスで得られるメリットこそが重要だという考え方だ。会員権に近く、持っているあいだは特典があり、手放すときは次の買い手を探す。

さらに、NFTを貸し出して別の人が運用し、得た利益の一部を受け取る仕組みも検討した。コミュニティの提案から生まれたアイデアだ。

成功の理由は、聞く力と切り替える勇気

Unbankedの成長を支えたものは二つある。

一つは、規制の厳しい金融の世界でルールから逃げずに進んだこと。もう一つは、顧客の声に耳を傾け、最初の計画に固執せず方向転換できたことだ。

広告改革のための仕組みとして始まった事業は、思うように売れなかった。しかし「カードだけ欲しい」という声が集まり、そこに本当の需要があった。

おまけのつもりだった機能が会社の中心になった。Unbankedは暗号資産を現実の支払いにつなぐサービスとして、そこから一気に成長していった。