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戦禍で帰れない無名エンジニアが「完成前に公開して毎日作り変える」で月間200万人。採用AIを伸ばした集客先行の裏ファネル

ビジネス概要

事業タイプ

Marketplace

規模感

月間の訪問者数は200万人規模

概要

求人サイトや企業の採用ページから求人を集約し、チャットボットで求職者に合う求人を提示して企業の採用までつなぐサービス。

ターゲット

採用活動をしている企業の採用担当者

主な打ち手

収益化より先に公開求人を大量に掲載して検索流入を集め、売上機会になり得たデータ分析機能の外販をやめて自社の集客に集中した。

30秒で分かる

1ウクライナ出身の起業家が、先に公開して毎日1万5,000人登録。

求人は毎日200万件規模で更新

運営はたった5人

2迷う前に出すと決めた。

完璧を待たず「動くもの」を先に出した。公開後も直し続ける方針にした。

3前の事業が土台になった。

2016年に夫婦でBotmakersを起業した。チャットボットの流行が落ち着き、技術の転用先として採用に移った。

4求人探しを1か所に集めた。

Tarta.aiは各所から求人を集めてまとめる。求職者はチャットで条件を伝え、合う求人が出る。

5収益化より先に人を集めた。

2019年後半から求人を載せ続けた。更新が速い情報源として検索から伸び、アクセスは2万人→8万人になった。

6本質は、先に需要を作ってから直す。

公開して人を集めると、改善の方向が見える。稼ぎ方も12〜15か月で4〜5種類試し、続く形だけを残せた。


ストーリーの流れ

Problem

新規事業は決めることが多すぎて不安が膨らみ、計画だけが分厚くなって動けなくなる問題がある。

  • サービスの形や値段や宣伝のしかたや作る順番まで、考えるほど迷いが増える構造である。
Insight

スタートアップで大事なのは最初から完璧を狙うことではなく、まず動くものを出して直し続けることだ。

  • オレクサンドル・ガマニュクは完璧を待つのではなく公開して走りながら直すと決めた。
Action

オレクサンドルは2019年に仕事探しを助けるAIアシスタントTarta.aiを立ち上げ、細部を作り切る前に公開した。

2019年Tarta.ai立ち上げ
  • 完成度より前に進む速さを選んだ判断だった。
Action

公開から約1年でTartaは何度も形を変え、収益モデルも4〜5種類試してうまくいかない案を捨てた。

  • 続けられる形だけを残していく運用で前進を止めなかった。
Growth

Tarta.aiはいま毎日およそ1万5,000人が新規登録し、求人情報は毎日200万件規模で更新されるまでになった。

毎日およそ1万5,000人が新規登録日次新規登録
求人情報は毎日200万件規模で更新日次求人更新規模
  • 公開後も形を変え続けた結果として規模が積み上がった。
Team

Tartaの運営はたった5人のチームで行っている。

5人運営チーム規模
  • 開発チームはBotmakersのときと同じ5人で、開発者中心の体制のまま進めた。
Team

2016年にオレクサンドルは妻ヴィクトリア・ペルミノワと会社を辞め、貯金でBotmakersを立ち上げた。

  • Botmakersはチャットボットのテンプレートを売るマーケットだった。
  • オレクサンドルが開発を担当し、ヴィクトリアがデザインと運営を担った。
Insight

チャットボットの流行が落ち着く中で技術を別分野に生かす必要があると考え、採用にチャンスを見出した。

  • 仕事探しは情報が散らばっていて手間が多いことが着眼点になった。
  • Botmakersは次の事業Tarta.aiへつながる踏み台になった。
Action

Tartaは求人サイトや企業の採用ページから求人情報を定期的に集めて1か所にまとめ、チャットボットが質問で条件を聞き取って求人を提示する。

  • 探す時間を減らし、ミスマッチも減らす狙いである。
Team

会社はアメリカで設立し、チームはウクライナからリモートで働く体制を取った。

  • ロシアの侵攻が始まってからオレクサンドルの家族はウクライナに戻れずカリフォルニアで暮らしている。
  • 戦争が始まった直後は働ける状態になく社員は3週間の有給休暇を取った。
Insight

Tartaは収益化より先にアクセスを集め、検索で見つかる状態を作ってから収益化を考える方針を取った。

  • どれほど良いプロダクトでも知られなければ存在しないも同然だという前提があった。
  • SaaSは作ることより興味を持ってもらうことのほうが難しい場合がある。
Action

2019年後半にプロダクトを作りながらTartaのサイトに公開求人を載せ始め、毎日大量の求人を追加し続けた。

2019年後半公開求人掲載開始
  • 検索エンジンから見ると新しくて更新が速い情報源として評価されやすい構造を作った。
Action

独自のデータ分析の仕組みを作って企業の反応を得たが、デモを2回やったところで顧客として受け入れるのをやめた。

  • その仕組みは自社の成長のためだけに使うと決めた。
  • 売上のチャンスを手放す決断だった。
Growth

売上機会を捨てて自社成長に集中した結果、1日のアクセスは2万人から8万人へ伸びた。

1日のアクセスは2万人から8万人へ伸びた日次アクセス増加
  • アクセスを先に作るやり方は危うさもあるが前に進み続ける力になった。
Scale

Tartaはいま複数ルートから求人情報を集め、毎日100万件の新規求人を取り込み100万件を再掲載して合計200万件の最新求人として扱う。

月間の訪問者数は200万人規模月間訪問者規模
  • 企業から直接受け取る求人や提携先の採用サイト経由の求人も含めて集約している。
Monetize

Tartaは12〜15か月の間に4〜5種類の収益モデルを試し、最初から正解を決めない進め方を取った。

  • マーケット型サービスで選択肢が多いぶん稼ぎ方の初期確定が難しかった。
Monetize

最初の求職者向け月額会員モデルは料金を低く設定していたため売上が伸びにくく、1人あたりの合計売上は約4,500〜6,000円($30〜$40)程度にとどまりやすかった。

1人あたりの合計売上は約4,500〜6,000円($30〜$40)程度顧客あたり売上
  • 採用分野は仕事が決まれば使わなくなるため解約も起きやすい構造だった。
Monetize

広告モデルは当初収益が出たが、広告のルール変更などで収入が大きく落ち込んだ。

  • 外部要因に左右されるリスクが顕在化した。
Monetize

企業側からの収益を強化し、企業が求人を依頼すると約20万人のアクティブな候補者へ情報を届け、候補者単位またはクリック単位で課金する形にした。

約20万人のアクティブな候補者アクティブ候補者規模
  • ボットが候補者を自動でふるい分け、面接の日程調整まで進める仕組みである。

新しい事業を始めようとすると、考えることが一気に増える。形、値段、宣伝、作る順番。迷っているうちに、動けなくなることもある。

ウクライナ出身の起業家オレクサンドル・ガマニュクも、そんな不安と隣り合わせで選択を迫られた。完璧を待つのではなく、まず公開して走りながら直す。そう決めた。

その結果、Tarta.aiは公開後も形を変え続け、いまでは毎日およそ1万5,000人が新規登録し、求人情報は毎日200万件規模で更新されるまでになった。しかも運営はたった5人。どうやってそこまでたどり着いたのか。

完璧を待つより、まず動かすほうが強い

新しいビジネスを始めようとすると、決めることが一気に増える。サービスの形、値段、宣伝のしかた、作る順番。考えれば考えるほど不安になって、計画だけが分厚くなっていく。

でもスタートアップで大事なのは、最初から完璧を狙うことではない。まず「動くもの」を出して、そこから直し続けることだ。

ウクライナ出身の起業家オレクサンドル・ガマニュクは、2回の起業でそれを身をもって学んだ。2019年に立ち上げたTarta.aiは、仕事探しを助けるAIアシスタントだ。細部を作り切る前に、とにかく公開した。完成度より、前に進む速さを選んだ。

公開からの約1年、Tartaは何度も形を変えた。収益モデルも4〜5種類試した。うまくいかない案は捨て、続けられる形だけを残していった。

いまTartaには、毎日およそ1万5,000人の求職者が新しく登録する。求人情報も毎日200万件規模で更新される。しかも運営しているのは、たった5人のチームだ。

最初の起業が、次の挑戦の土台になった

オレクサンドルはもともと、ウクライナのIT企業でソフトウェアエンジニアとして約8年働いていた。会社員のころから起業の勉強も続けており、特に役立った本として「The Four Steps to the Epiphany」を挙げている。スタートアップが伸びる理由、倒れる理由を考えるための地図になったという。

2016年、オレクサンドルは妻ヴィクトリア・ペルミノワとともに会社を辞め、貯金でBotmakersを立ち上げた。Botmakersはチャットボットのテンプレートを売るマーケットで、マーケターがテンプレートを使ってメッセージアプリのキャンペーンなどに活用できるチャットボットを作れる仕組みだった。

役割分担はシンプルだった。オレクサンドルが開発を担当し、ヴィクトリアがデザインと運営を担った。

ただ、チャットボットの流行はだんだん落ち着いていく。そこで2人は考えた。「この技術を、別の分野で生かせないか」

たどり着いたのが採用だった。仕事探しは情報が散らばっていて手間が多い。ここにチャンスがある。そうしてBotmakersは、次の事業Tarta.aiへつながる踏み台になった。

Tartaがやっていること

Tartaは、求人サイトや企業の採用ページから求人情報を定期的に集めて、1か所にまとめるサービスだ。

求職者はチャットボット型のアシスタントと会話する。ボットが質問を通じてスキルや経験を聞き取り、その情報をもとに合いそうな求人を探して提示する。探す時間を減らし、ミスマッチも減らす狙いだ。

開発チームはBotmakersのときと同じ5人。開発者中心の体制だったため、大きく採用し直す必要がなかった。管理画面など運営の仕組みも、使える部分はそのまま活用した。

「すでにあるものを活用できるなら、最初から作り直す必要はない」——それがオレクサンドルの考えだった。

会社はアメリカで設立したが、チームはウクライナからリモートで働いている。ロシアの侵攻が始まってから、オレクサンドルの家族はウクライナに戻れず、カリフォルニアで暮らしている。

オンライン会議の途中に空襲警報が鳴り、地下室に避難しなければならない日もある。戦争が始まった直後は働ける状態になく、社員は3週間の有給休暇を取った。少しずつ業務に戻ったが、厳しい状況は続いている。

収益化より先に、人を集めた

起業で最初にぶつかる壁は、「手応え」を作ることだ。話題を作るのも、アクセスを増やすのも、最初の顧客を獲得するのも簡単ではない。

どれほど良いプロダクトでも、知られなければ存在しないも同然だ。だからTartaは、内容が完全に固まっていなくても、早い段階で世に出すことを選んだ。

特にSaaSは、作ることより「興味を持ってもらうこと」のほうが難しい場合がある。1年かけて作っても、誰にも必要とされていなかったと気づくケースすらある。

そこでTartaは、まずアクセスを集める方針を取った。検索で見つかる状態を作り、収益化はあとから考える。

2019年後半、プロダクトを作りながらTartaのサイトに公開求人を載せ始めた。採用市場には昔からの大手がいる。それでもアメリカ市場は巨大で、しかもTartaは毎日大量の求人を追加し続けた。検索エンジンから見ると「新しくて更新が速い情報源」として評価されやすい。

さらにオレクサンドルは独自のデータ分析の仕組みも作り、いくつかの企業に見せると反応は強かった。だがデモを2回やったところで、あえて顧客として受け入れるのをやめた。その仕組みは自社の成長のためだけに使う、と決めたのだ。

売上のチャンスを手放す決断だったが、結果は大きかった。1日のアクセスは2万人から8万人へ伸びた。

いまTartaは、企業から直接受け取る求人や提携先の採用サイト経由の求人など、さまざまなルートから情報を集めている。毎日100万件の新規求人を取り込み、さらに100万件を再掲載して更新し、合計200万件の最新求人として扱う。月間の訪問者数は200万人規模になった。

アクセスを先に作るやり方には危うさもある。それでもTartaにとっては、前に進み続ける力になった。完成を待たずに出せる。途中で考えながら変えられる。すでに興味が集まっていると、作り続けるモチベーションも折れにくい。

収益モデルは、試しながら見つけた

Tartaは企業と求職者をつなぐマーケット型のサービスだ。選択肢が多いぶん、最初から正解の稼ぎ方を決めるのは難しい。だからオレクサンドルは、12〜15か月の間に4〜5種類を試した。

最初は求職者向けの月額会員モデルだった。月額料金を払うと個人に合った求人が届く仕組みだ。ただ料金を低く設定していたため売上が伸びにくく、採用分野は解約も起きやすい。仕事が決まれば使わなくなるからだ。結果として、1人あたりの合計売上は約4,500〜6,000円($30〜$40)程度にとどまりやすかった。

次に広告モデルも試した。アクセスが多かったので当初は収益が出たが、広告のルール変更などで収入が大きく落ち込んだ。

そこで企業側からの収益を強化した。いまは企業がTartaに求人を依頼し、約20万人のアクティブな候補者へ情報を届けられる。ボットが候補者を自動でふるい分け、面接の日程調整まで進める仕組みで、企業は候補者単位またはクリック単位で料金を支払う。

企業と直接組むことは、採用体験そのものを変える力にもなる。いまの就職活動は、複数のサイトに登録して同じ情報を何度も入力し、応募後は状況が見えないまま待たされることが多い。連絡が来ないこともある。

オレクサンドルは、もっと前向きで効率のいい体験が必要だと考えており、その中でTartaが重要な役割を担えると信じている。

早めに飛び込む勇気が、成長を早めた

オレクサンドルには約10年の開発経験がある。それでもTartaは、これまでで最も難しいプロダクトの一つだという。CEOでありながら今もコードを書き、チームが難しい課題にぶつかったときは自分で手を動かす。

外から見ると求人掲載サイトに見える。だが裏側では毎日大量のデータを処理しており、見えない部分の作り込みが勝負を決める。

それでも目標はぶれていない。多くの人に役立つものを作ることだ。35歳になり、体力とやる気があるうちに本当に価値のあることへ集中したい。その思いが挑戦を支えている。

後悔があるとすれば、会社を辞めたのが29歳だったことだという。もっと早く挑戦していればよかった。経験と人脈を作るには2〜3年あれば十分で、それ以上になると学びが頭打ちになりやすく、エネルギーを最大限に使いにくくなる。

若い時期には、まだ使い切れていないエネルギーがある。そのエネルギーをどこに向けるかが重要だ。会社の仕事に向けるのか、自分の事業に向けるのか。年齢が上がり、家族などの責任が増えるほど、後者の選択は難しくなる。

だからこそ、完璧を待つより先にまず一歩踏み出す。オレクサンドルの物語は、その強さをはっきり示している。