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「燃え尽きる寸前だった」月220万円のSaaSを約1.2億円で手放して得た再起動

7 min read2026年2月27日
「燃え尽きる寸前だった」月220万円のSaaSを約1.2億円で手放して得た再起動

ビジネス概要

事業タイプ

SaaS

フェーズ

売却後

規模感

利用者2万7000人超

概要

スタートアップが短時間で見栄えのよいWebサイトを作れるサイト作成ツールを提供する事業。

ターゲット

立ち上げ初期のスタートアップ(Webサイトを早く用意したい創業者・担当者)

主な打ち手

Product Huntで大きなアップデートのたびに投稿し、再投稿できるよう新要素を用意し続けた。

ストーリーの流れ

Growth

Unicorn Platformは利用者が2万7000人を超え、毎月の定期収益も約220万円($15,000)に到達した。

2万7000人を超え利用者数
毎月の定期収益も約220万円($15,000)月次定期収益
  • 外から見れば順調だったが、本人は燃え尽きる寸前だった。
Problem

情熱で走り続けた結果、事業を続けるには何かを手放さなければならない状態になった。

  • 共同創業者を得るか売却するかが現実的な選択肢として浮上した。
Insight

技術に詳しくない人が短時間で見た目のいいページを作れる道具が必要だと考えた。

  • Webデザイン会社で非エンジニアの困りごとを毎日見た経験が出発点になった。
Action

仕事を辞めて自分でUnicorn Platformを作り始めた。

  • まずは機能を増やしすぎないMVPとしてシンプルなHTMLのサイト生成ツールを作った。
Monetize

開発資金を作るために買い切りライセンスを50人に売った。

合計で約150万円近く($10,000)開発資金
  • 1つ約2.7万円($180)で合計約150万円近く($10,000)を集めた。
Action

開発は雇わず自分で進めると決め、約束したものを自分の手で形にした。

  • PythonやJavaScriptを学びながら1年かけて完成させた。
Growth

広告に頼らず無料でできるマーケティングを片っ端から試した。

  • ポッドキャスト出演やインタビュー、SNS投稿、ブログ記事などを実行した。
  • 多くは結果ゼロだったが一部だけが大きく当たった。
Growth

Product Huntへの継続投稿を軸に当たり施策を回し始めた。

  • 大きなアップデートのたびに投稿し、一定期間後の再投稿に向けて新要素を用意し続けた。
  • 投稿方法を解説する動画シリーズも作るようになった。
Problem

顧客を大事にしすぎた結果、一人でSaaSを運営し続けることに疲れ切った。

  • 顧客は創業者が深く関わることを価値だと感じており、手を引けば成長が止まる恐れがあった。
  • 気分は落ち込み、うつに近づいている感覚があった。
Action

共同創業者探しを試みたが条件が合わず、売却の検討に重心を移した。

  • CEOを引き継ぎたいという人もいたが、会社の半分を求められるなど折り合わなかった。
Insight

巨大企業ではなく、考え方を共有できる理想の買い手像を定めた。

  • 統合がうまくいかず顧客が置き去りになる可能性があるため巨大企業の買収は避けたかった。
  • 自社より大きいが大企業ではなく、シンプルさと美しさでWeb体験を良くする考えを共有する相手を求めた。
Monetize

2022年9月にUnicorn Platformは約1.2億円($800,000)で買収された。

2022年9月買収時期
約1.2億円($800,000)買収額
  • MarsXの創業者ジョン・ラッシュが高く評価して連絡してきた。
  • 数回の連絡と対面で短期間に合意に至った。
Team

買収後もCEOを続けつつ、重い作業の多くをMarsX側に引き受けてもらった。

  • サーバー管理や日々の開発の負担が減り、責任を分け合えるようになった。
Scale

細かい実装よりも製品の方向性やロードマップ、顧客の声にもとづく判断に集中できるようになった。

  • 落ち着く時間が戻り、製品への前向きな気持ちが戻ってきた。
  • 会社を売ることは終わりに見えやすいが本人にとっては新しい始まりだった。

好きで始めた仕事ほど、止まれなくなる。頑張れば頑張るほど前に進めるはずなのに、気づけば息が詰まっていく——そんな感覚に覚えがある人も多いはずだ。

Unicorn Platformを作ったアレクサンダー・イソラも、まさにその渦中にいた。サービスは伸び、利用者は2万7000人を超え、毎月の定期収益も約220万円($15,000)に到達。外から見れば順調だった。

それでも本人は燃え尽きる寸前だった。続けるためには何かを手放す必要がある。共同創業者か、売却か。迷いの先で彼が選んだ道は、約1.2億円($800,000)の買収という「終わり」に見える決断だったが、実際は息を取り戻すための始まりだった。

情熱が強すぎると、事業は苦しくなる

情熱は武器になる。好きで始めた仕事なら、寝る間を削ってでも進められる。起業家なら特にそうだ。

でも情熱は、強すぎると重りにもなる。

Unicorn Platformを作ったアレクサンダー・イソラは、その両方を味わった。サービスは伸び、利用者は2万7000人を超え、毎月の定期収益も約220万円($15,000)まで届いた。外から見れば順調そのものだった。

ただ本人は、ずっと全力で走り続けて、燃え尽きる寸前だった。事業を続けるには、何かを手放さなければならない。問題は、何をどう手放すかだった。

電気工学の学生が、Webの世界に引き込まれた

アレクサンダーはジョージアの首都トビリシ出身。大学では電気工学を学んでいた。

あるとき、空き時間にHTMLやCSSを触った。それがきっかけで、ソフトウェア開発に夢中になった。独学で学び、フリーランスとして仕事を始め、最後は大学を辞めてWebデザイン会社に入った。

その会社は、テンプレートやテーマのような「Webサイトを作りやすくする道具」を作っていた。そこでアレクサンダーは、技術に詳しくない人たちが何に困り、何を大事にしているのかを毎日見た。

そして疑問が生まれる。

「立ち上げたばかりのスタートアップにとって、本当に使いやすいWebサイト作成ツールって何だろう」

起業したばかりの人は、まず早く検証しなければならない。ターゲットを見つけ、アイデアが本当に求められているか確かめる。その期間はだいたい1年くらい続く。しかもときには、1日でページを用意しなければならない。

だったら、難しい操作はいらない。知識がなくても、短時間で見た目のいいページが作れる道具が必要だ。

アレクサンダーはそう考え、仕事を辞めて、自分で作ることにした。こうしてUnicorn Platformが始まった。

最初の資金は「信じてくれた人」から集まった

アレクサンダーはまず、MVPという最小限の試作品を作った。機能を増やしすぎず、設定も少ない。シンプルなHTMLのサイト生成ツールだった。

最初の有料顧客は、前の仕事でつながっていたWebデザイン業界の知り合いから生まれた。アレクサンダーの道具を「自分の顧客向けのサイト制作に使いたい」という人が出てきた。

反応は良かった。むしろこう言われた。

「もっと本格的なサイト作成ツールにできないか」

そこでアレクサンダーは、開発資金を作るために、買い切りライセンスを50人に売った。1つ約2.7万円($180)。合計で約150万円近く($10,000)集まった。

まだ完成前なのに買う人がいたのは、アレクサンダーが完成させると信じたからだ。購入者は、完成後に無制限で使える権利を手に入れた。

ただ、アレクサンダーは最初から「複雑なツールを作る方法」を全部知っていたわけではない。開発者を雇うことも考えたが、細かい理想を伝える難しさや、管理の負担を思うと気が重かった。

結局、開発は自分でやると決めた。約束したものを、自分の手で形にしたかったからだ。

本を読み、動画を見て、PythonやJavaScriptを学んだ。こうして1年かけてUnicorn Platformを完成させた。

共同創業者を探した時期もあったが、条件が合う相手はいなかった。一人で進めると、完全に休めない。常に状況を追い続けることになる。任せるのが得意ではない性格も重なり、気づけば全部を抱え込む形になっていった。

マーケティングは「当たり」を見つけるゲームだった

完成したあとに待っていたのは、「どう売るか」だった。

メンターや専門家は、広告が分かりやすいと言った。広告費と、顧客が生涯で払う金額を比べれば、もうかるか計算できる。

でも調べてみると、キーワード広告はクリック単価が高すぎた。現実的ではない。

そこでアレクサンダーは、無料でできる方法を片っ端から試した。ポッドキャスト出演、インタビュー、SNS投稿、ブログ記事。見つけたものはほとんどやった。

ただし、努力がきれいに積み上がる感じではなかった。多くは結果ゼロ。ほんの一部だけが大きく当たった。

特に大きかったのがProduct Huntだった。大きなアップデートのたびに投稿し、ルールに合わせて、一定期間が過ぎたら再投稿できるように新しい要素を用意し続けた。うまく回り始め、投稿方法を解説する動画シリーズまで作るようになった。

顧客を大事にしすぎて、自分が削れていった

アレクサンダーの強みは、製品と顧客への強い思いだった。

誰かが不満を言えば気になる。できる限り直したくなる。場合によっては「この人には別のツールの方が合う」と判断して、別サービスを勧めることさえあった。

それは誠実さでもある。でも、ずっと続けると体がもたない。

4年が過ぎた頃、アレクサンダーは一人でSaaSを運営し続けることに疲れ切っていた。やる気が落ちれば、事業そのものが沈むかもしれないという不安もあった。顧客は「創業者が深く関わっていること」を価値だと感じていたから、手を引けば成長が止まる恐れもあった。

気分は落ち込み、うつに近づいている感覚があった。過去にも経験があったので、危険だと分かった。

変える必要がある。考えた選択肢は2つだった。

  • 共同創業者やパートナーを見つける
  • 会社を売却する

まず共同創業者を探した。でも前より難しくなっていた。CEOを引き継ぎたいという人もいたが、会社の半分を求められるなど条件が合わなかった。

次に会社売却を考えた。こちらの方が現実的で、気持ちも少し前向きになった。

ただし、巨大企業に買われるのは避けたかった。統合がうまくいかず、顧客が置き去りになる可能性があると思ったからだ。

理想の買い手はこうだった。

  • 自分の会社より大きいが、大企業ではない
  • 「シンプルさと美しさでWeb体験を良くする」という考えを共有している

買収は終わりではなく、息を取り戻すための始まりだった

2022年9月、Unicorn Platformは約1.2億円($800,000)で買収された。

MarsXの創業者ジョン・ラッシュは、シンプルなアプリ作成ツールを成功させた人物で、Unicorn Platformを高く評価して連絡してきた。

交渉は短期間で進んだ。数回の連絡と対面で合意に至った。

アレクサンダーは「偶然ではない」と感じていた。創業以来、考え方や開発の様子をオープンに発信し続けていたからだ。それが結果的に、買収に向けた信頼づくりにもなっていた。ジョンは多くのインタビューを読み、以前から応援者になっていたという。

買収後もアレクサンダーはUnicorn PlatformのCEOを続けた。ただ、サーバー管理や日々の開発など重い作業の多くをMarsX側が引き受けた。

その結果、アレクサンダーには「落ち着く時間」が戻った。責任を分け合えるようになり、細かい実装よりも、製品の方向性やロードマップ、顧客の声をもとにした判断に集中できるようになった。

何より、製品への前向きな気持ちが戻ってきた。

もし買収がなければ、心の状態はさらに悪化し、会社も顧客もがっかりさせていたかもしれない。アレクサンダーはそう振り返る。

会社を売ることは、物語の終わりに見えやすい。でもアレクサンダーにとっては、新しい始まりだった。同じ考えを持つ仲間と進めることで、理想をもっと広い人たちに届けられる。情熱も、もう一度燃え始めた。