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無名の元クラウド運用屋が「1GB9セントの引っ越し代を半額にする」で1億5,000万円。クラウド乗り換えビジネスの禁断のルール

7 min read2026年4月1日
無名の元クラウド運用屋が「1GB9セントの引っ越し代を半額にする」で1億5,000万円。クラウド乗り換えビジネスの禁断のルール

ビジネス概要

事業タイプ

SaaS

フェーズ

拡大期

規模感

大手クラウドではデータ持ち出しが1GBあたり約9セントかかることがある

概要

クラウド間の大量データ移行を低コストで実行できるようにし、企業のクラウド乗り換えを現実的な選択肢にするサービス。

ターゲット

大量データを保有しクラウド乗り換えコストを下げたい企業のIT部門責任者

主な打ち手

クラウド事業者側に複数アカウント・運用拠点を持って転送単価を下げ、顧客には一般的な持ち出しコストより安い単価で提供して差額を利益化した。

30秒で分かる

1現場支援の創業者が、1GB約9セントの壁を崩した

クラウド間のデータ移動が高すぎる問題に集中

移行コストを下げて「乗り換え」を現実にした

2問題は「クラウドから出られない」

クラウドは便利だが、別のクラウドへ移すと高い。

数GBでも費用が膨らみやすい。

3メディア現場で「重いデータ」を見た

メディア企業は動画などを大量に扱う。

社内ストレージは保守費が重かった。

42016年のSaaSを閉じ、2020年に絞った

創業者は複数クラウド管理のSaaSを自費で作った。

顧客の声は「次の移行が高い」だった。

2020年にAcemblyを閉じ、Cloudflyerへ集中した。

5転送単価を組み替え、差額で勝った

大手では1GBあたり約9セントかかることがある。

Cloudflyerは有利な条件で転送できる立場を作った。

例:自社が約2セントなら、顧客に約5セントで提供

顧客は安くなり、差額が利益になる

6本質は「払う人」に合わせて作る

この話の核心は、実際に代金を払う顧客の痛みを起点にすること。


ストーリーの流れ

Problem

クラウド移行後に別クラウドへ移れないほど持ち出しコストが高い問題が現場で顕在化した。

  • 数GBの転送でも「大金」になり、安いクラウドへ移る意味が消えてしまう状況が生まれた。
Insight

大手クラウドの持ち出し課金がクラウド間の乗り換えを阻む最大の壁だと見抜いた。

1GBあたり約9セント(約13円)大手クラウドの持ち出しコスト
  • 大手クラウドではデータを外部に転送するだけで費用がかかり、移行の意思決定を止めてしまう。
Insight

データ規模が桁違いな企業ほど移行費用が跳ね上がり、ロックインが強化される構造がある。

数百万ドル(約1億5,000万円)規模移行費用の跳ね上がり
  • 何十億GBを保有する企業では一部の移動だけで合計が数百万ドル規模になることもある。
Insight

創業者パトリックはメディア企業の現場で「重いデータ」を扱う痛みを体感していた。

  • 動画や素材の大量保存と高速取り出しが必要で、保守費が本体価格を上回ることも珍しくなかった。
Action

パトリックは顧客の業務フローとインフラを技術面から支援するためにACESを立ち上げた。

2012年ACES立ち上げ
  • メディア企業のデータ保存やインフラ運用を支えるサービスとして独立後に開始した。
Insight

クラウド活用が加速する一方で大企業ほど移行が遅れ、現場のクラウド知識不足が課題になった。

  • 運用の容易さやセキュリティ整備で移行は進んだが、組織の動きが鈍い企業が残った。
Action

パトリックは複数クラウドをまたいでファイルを保存・管理できるSaaSのAcemblyを自費で開発した。

2016年Acembly自費開発
  • クラウドを横断して扱える仕組みを自前で作り、現場の運用課題に応えようとした。
Team

パトリックは幅広いインフラと開発経験を持つマイケル・アサドリアンと組んだ。

  • インフラ、ネットワーク、ソフトウェア開発の経験を補完し合う体制になった。
Insight

顧客の声からニーズの核心が「クラウドへの移行」ではなく「クラウド間の移行」だと判明した。

  • 移行はできても別のクラウドに移りたい時に困るという声を何度も聞くようになった。
Action

2人はAcemblyを閉じてCloudflyerに集中する決断を下した。

2020年Cloudflyer集中の決断
  • クラウド利用企業の増加に伴い「クラウドからクラウドへ」の引っ越し需要が大きな波になると見た。
Action

Cloudflyerは大量データ移行をわかりやすい操作で進められる仕組みを作った。

  • ドラッグ&ドロップの感覚で引っ越しできる世界を目指している。
Monetize

Cloudflyerは複数クラウド側の有利な転送条件を活かし差額で利益が出る構造を作った。

  • 主要クラウド事業者それぞれにアカウントや仕組みを持ち複数拠点で運用することで、顧客の直接契約より有利な条件で転送できる立場にある。
Monetize

転送原価を下げて顧客価格を抑えつつ差額を利益にする価格設計を示した。

顧客には1GBあたり約5セント(約7円)提供単価
Cloudflyer側の転送コストが1GBあたり約2セント(約3円)転送原価
  • Cloudflyer側の転送コストが安ければ顧客には一般的な持ち出しコストより安い単価で提供できる。
Growth

Cloudflyerは派手な広告に頼らず市場拡大の追い風で成長できると見立てた。

  • クラウドを使う企業が増えれば乗り換え需要も増えるため成長の障壁は少ないと考えている。
Scale

Cloudflyerは自動化とスケールの仕組みで大量データ移行に特化し差別化した。

  • 類似サービスが小規模データや小さな移行案件に寄りがちな中で、大量データを効率よく移動させることに焦点を当てた。
Scale

Cloudflyerは「どのクラウドからどのクラウドへでも簡単に移行できる定番サービス」を目指している。

  • 引っ越しの実行を標準化し、企業の選択肢を広げる立ち位置を狙っている。
Action

Cloudflyerはデータ利用状況とコストを分析して最適な保存先を提案する機能を強化していく。

  • 引っ越しだけでなく保存先の最適化まで担う構想で、必要に応じた自動転送も目指している。
Insight

保存料金が下がるほど企業は最適配置を真剣に考え、判断と実行を支えるサービスの価値が増す。

  • 1GBあたりの単価が下がる競争が進むほど、どこが最もコスト効率が高いかを見極める必要が高まる。
Insight

創業者は製品は「実際に代金を払う顧客」のために作り早期に売上へつなげるべきだと説く。

  • 思い込みで投資せず価値が高いポイントを見極め、顧客が求める方向に合わせて改善していく方針である。
Insight

製品の強さが実証されるまでは宣伝や営業に大金をかけず現場で役立つものを優先する考え方を取る。

  • まず使えるものを作り、その後に拡販へ投資する順序を重視している。

クラウドに移行すれば、サーバー管理の苦労から解放される。そう信じて動いた企業は多い。しかし現場では、次の不安が静かに積み重なっていった。

「このクラウドは高いから、別のクラウドに移りたい」。そう思っても、データの移行コストが高すぎて身動きが取れない。数GBの転送が、いつの間にか「大金」になってしまう。

その痛みのど真ん中に、Cloudflyerは切り込んだ。1GBあたり約9セントがかかることもある世界で、コスト構造を組み替え、移行を現実的な選択肢に変えようとしている。

クラウドの世界では、数GBの移動が「大金」になる

クラウドが普及する以前、企業のデータは社内サーバーで管理されていた。オフィスのどこかにラックが並び、壊れれば止まり、修理にも更新にも費用がかかる。水害や火災といった事故が起きれば、バックアップがなければ一発で終わりだ。

そこにクラウドが登場した。自社でサーバーを抱えなくても、外部の大規模データセンターを必要な分だけ借りて使える。容量の増減も素早く、障害にも強い。多くの企業が一気にクラウドへと移行した。

しかし、次の問題が浮上した。

クラウドから別のクラウドへ移れない。正確には移れるのだが、コストが高すぎる。データの「引っ越し代」が、笑えない金額になるのだ。

この痛みに目をつけて成長したのが、Cloudflyerだった。

パトリックは、メディア企業の現場で「データの重さ」を知った

創業者のパトリック・ケネディは、ロサンゼルスでメディア企業のデータ管理を長年支えてきた。以前はシステム会社で営業責任者を務め、CBSやディズニーといった大手とも仕事をしていた。

その後、独立を決意し、2012年にACESを立ち上げる。顧客の業務フロー、データ保存、インフラを技術面から支援するサービスだ。

当時のメディア企業は、巨大なストレージを社内に購入・設置しており、保守費が本体価格を上回ることも珍しくなかった。それでも、動画や素材といった「重いデータ」を大量に保存し、かつ高速に取り出す必要があったからだ。

クラウドへの大移動が始まり、次の壁が見えた

2014年から2015年にかけて、企業のクラウド活用は一気に加速した。クラウド事業者の管理するサーバーに移行すれば、運用は楽になり、セキュリティも整ってきた。働き方も変わっていった。

ただ、メディア企業の中には移行が遅れているところもあった。大企業ほど動きが鈍く、社内のクラウド知識も不足しがちで、現場は困っていた。

そこでパトリックは2016年、複数のクラウドをまたいでファイルを保存・管理できるSaaSを自費で開発した。名前はAcemblyだ。

同じ年、パトリックはインフラ、ネットワーク、ソフトウェア開発まで幅広い経験を持つマイケル・アサドリアンと出会い、2人は手を組んだ。

Acemblyは動き出し、顧客も増えていった。しかし現場では、同じ声を何度も聞くようになる。

「クラウドへの移行はできた。問題は、別のクラウドに移りたい時だ」

クラウドに移行した企業が増えたからこそ、今度は「クラウドからクラウドへ」の引っ越しが必要になる。2人はそこに大きな波を見た。2020年、Acemblyを閉じ、Cloudflyerに集中する決断を下す。

なぜクラウドの引っ越しは高いのか

クラウド業界は長い間、少数の巨大企業が市場を押さえてきた。規模が大きいほど速く、安全で、障害にも強い。大企業の複雑な業務も支えられる。

その一方で、料金は高くなりやすい。

近年は、同等の機能をより安く提供する新興クラウドも増えてきた。そこで企業はこう考える。

「安いところに移りたい」

ここで立ちはだかるのが「持ち出しコスト」だ。データを外部に転送するだけで費用がかかる。大手クラウドでは1GBあたり約9セント(約13円)かかることがある。

1GBなら小さく見える。しかし企業のデータは桁が違う。何十億GBという規模で保有していることもあり、一部を移動させるだけで合計が数百万ドル(約1億5,000万円)規模になることもある。

引っ越し代が高すぎて、安いクラウドに移る意味が消えてしまう。これが現場の壁だった。

Cloudflyerは「引っ越し代」を下げる仕組みを作った

Cloudflyerのアプローチはシンプルだ。

高いクラウドから安いクラウドへ大量データを移す作業を、わかりやすい操作で進められるようにした。目指すのは、ドラッグ&ドロップの感覚で引っ越しできる世界だ。

ただの便利ツールにとどまらない。収益が生まれる仕組みがある。

Cloudflyerは主要クラウド事業者それぞれにアカウントや仕組みを持ち、複数拠点で運用している。つまり、個々の企業が直接契約するよりも有利な条件でデータを転送できる立場にある。

たとえばCloudflyer側の転送コストが1GBあたり約2セント(約3円)で済むなら、顧客には1GBあたり約5セント(約7円)で提供できる。顧客は一般的な持ち出しコストより安く済み、Cloudflyerはその差額が利益になる。

大企業でも中小企業でも、この構造は機能する。ここが強みだ。

競合が少ない、と考える理由

Cloudflyerは派手な広告をほとんど打っていない。それでも成長の障壁は少ないと見ている。理由は、市場そのものがこれから拡大するからだ。クラウドを使う企業が増えれば、乗り換えの需要も増える。

類似サービスはあるものの、小規模なデータや小さな移行案件が中心になりがちだという。Cloudflyerは自動化とスケールの仕組みで、大量データを効率よく移動させることに特化した。

また、移行元になりやすい巨大クラウド事業者も、今のところ最大の脅威とは見ていない。Cloudflyerは大手同士の移動も支援しており、結果として大手のビジネスにも一部で貢献する面があるからだ。

次の狙いは「引っ越し」だけじゃない

Cloudflyerが目指すのは、どのクラウドからどのクラウドへでも簡単に移行できる、定番サービスになることだ。

さらに一歩進めて、データの利用状況やコストを分析し「どこに置けば安くなるか」を提案する機能も強化していく。引っ越しだけでなく、保存先の最適化まで担う構想だ。

たとえば、ある企業がAWSに500TB、別のクラウドに150TBを保有していて、バックアップや移行を検討しているとする。条件に合う安価な保存先を提示し、必要に応じて自動転送する。そんなサービスを目指している。

保存料金は今後さらに下がる可能性がある。1GBあたり約6セント(約9円)が約4セント(約6円)になり、将来は約2セント(約3円)を争う競争になるかもしれない。そうなれば、企業は「どこが最もコスト効率が高いか」をより真剣に考えるようになる。Cloudflyerはその判断と実行を支える役割を狙っている。

創業者の教訓:「払う人」のために作れ

パトリックが強調するのは、製品は「実際に代金を払う顧客」のために作るべきだということだ。

うまくいくはずだという思い込みだけでアイデアに投資しない。価値が高いポイントを見極め、できるだけ早く売上につなげる。そのうえで、顧客が求める方向に合わせて改善していく。

そして、製品の強さが実証されるまでは、宣伝や営業に大金をかけない方がいい。まず現場で役立つものを作れ、という考え方だ。

クラウドで起きたことは、他の業界でも起きる

クラウド業界で見られる「高い価格」と「一部企業への集中」は、広告、金融、エネルギーなど他の分野でも繰り返されてきた。

大きな企業が市場を押さえ続けると、そこに隙間が生まれる。より良い価値を提供できる小さな企業が入り込む余地だ。

そこに生まれる機会は2つある。より良い価値を作り出すこと。そして、企業がより良い選択肢へ乗り換える手助けをすること。

Cloudflyerは後者に賭けた。クラウドの乗り換えを「現実的な選択」に変える。その一点を突き詰めて、会社は成長を続けている。