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ビジネス概要

事業タイプ

SaaS

フェーズ

成長期

どんな事業?

Mac向けの開発者ツールやスクリーンショット加工アプリなど、小さなプロダクトを複数運営し、個人開発者や一般ユーザーに月額・買い切りで提供。

💰 いくら儲かった?

4つのプロダクト合計で月約700万円($45,000)規模の売上。

💡 成功の気づき × 打ち手
1
気づき

掲示板で一度バズっても話題が落ちると売上がゼロに戻り、見つけてもらい続ける仕組みが必要だった。

打ち手

制作過程をSNSとニュースレターで出し続け、フォロワーを200人から47,000人以上に増やして自前の配信チャネルを作った。

2
気づき

SNS側のルール変更ひとつで主力プロダクトが崩れるリスクがある。

打ち手

依存度の高いBlack Magicを売却し、4つの小さなツールに分散して収入源を安定させた。

月に約700万円($45,000)の売上を、たった数本の小さなプロダクトで生み出す。そんな話は、遠い世界の成功談に見えるかもしれない。

けれどTony Dinhがやったことは、一発逆転の勝負ではない。作って、出して、反応を見て直し、また作る。その繰り返しだった。退屈だった在宅勤務の時間が、いくつもの収入源を生む起点になる。ただし順風満帆ではない。SNS側のルールが変わっただけで、柱のひとつが揺れる。そこで彼は、あるプロダクトを手放す決断もしている。

在宅勤務の退屈が、彼を「作る側」へ押し出した

Tony Dinhは「一発で大成功する会社」を狙わなかった。小さなプロダクトをいくつも作り、それらを束ねて生活を支える道を選んだ。

ベトナム出身のソフトウェア開発者で、経験は7年ほど。画面の見た目からサーバー側の処理、運用の仕組み、使いやすさの設計まで、ひととおり手がけてきた。これが後に「ひとりでも速く作れる強み」になる。ふだんは会社員として働き、空いた時間にアプリを作っていた。

流れが変わったのは2020年。新型コロナの流行で在宅勤務になり、人と会う機会が減って毎日が単調になった。SNSをぼんやり眺めて時間をつぶす代わりに、個人でプロダクトを作る人たちのコミュニティをのぞいた。

そこには、作った記録、失敗、学びが並び、ときには売上の画面まで貼られていた。「どれくらい稼げたか」が数字で見える。だからこそ、夢物語ではなく「自分にも届くかもしれない話」に見えた。

Dinhはすぐに作り始めた。最初はMac用のログ閲覧アプリ。商売としては伸びなかったが、「自分で作って世に出せる」ことは確認できた。

ここから彼は、同じサイクルを繰り返すようになる。自分の困りごとを見つける。まず自分のために作る。作っている途中も発信する。反応があれば、誰でも使える形に整えて売る。この繰り返しが、やがていくつもの収入源に育っていく。

一度はバズった。しかし売上はすぐに止まった

次に作ったのがDevUtils。開発者が日常的に行う細かい作業を、まとめて片付けられるMacアプリだ。小さな面倒を減らし、手を止める回数を減らす狙いだった。

これも出発点は「自分のため」。まわりの反応がよかったので、課金機能をつけて公開した。開発者が集まる投稿サイトで紹介すると、売れ始めた。

ところが話題が落ち着くと、売上も止まった。

ここでDinhは痛い学びを得る。公開した瞬間に注目されても、それだけでは続かない。プロダクトが良いだけでは足りない。見つけてもらい続ける仕組みが必要だ。

そこでDinhは、広告費を使うより先に「自分から直接届けられる相手」を増やす方向へ動いた。

制作の途中経過を見せ続けて、見てくれる人を増やした

Dinhは制作の進み具合、学び、更新情報をSNSとニュースレターで出し続けた。積み重なると、発信そのものが資産になる。見ている人が使う人になり、使う人が買う人になっていく。

会社を辞めて1年で、フォロワーは200人から47,000人に増えた。その後も伸び続け、97,000人に達している。数字そのものより重要なのは、その増やし方だ。

発信を「ついで」ではなく、仕事の中心に据えた。

ちょっとしたお祝いの仕掛けが、月額課金のサービスに発展した

独立の決め手になったのがBlack Magicだった。きっかけは小さな節目だった。SNSのフォロワーが1,000人に届いたとき、記念として、フォロワー数の進み具合をプロフィール画像に表示する仕掛けを作った。

すると周りが面白がり、「自分もほしい」という声が出た。そこで誰でも使える形に整え、サービスとして公開した。

Black Magicは月額約600円($4)で、SNS上での活動を助ける機能をそろえたサービスだった。

公開から3か月ほどで、毎月約4.5万円($300)の売上になった。この手応えが「これなら作り続けて食べていけるかもしれない」という自信につながった。2021年8月に退職し、個人での活動に集中し始めた。

独立後、Black Magicは伸びた。2022年8月には毎月約150万円($10,000)、同年10月には約200万円($13,000)に到達した。

さらに年間売上が約1,500万円($100,000)に届いたころには、口コミやSNSプロフィール経由で自然に人が来る状態になっていた。新機能の追加は続けつつも、毎日必死に売り込まなくても事業が回るようになっていった。

一本の柱ではなく、複数の柱で立つと決めた

2022年8月の振り返りで、Dinhは独立後1年の成果をまとめている。

  • フォロワーが200人から47,000人へ増えた
  • あるプロダクトの月売上が0ドルから10,000ドルになった
  • ニュースレターを19本書いた
  • 利益が出るプロダクトを3つ作った

ポイントは、Black Magicだけに寄りかからなかったことだ。小さくても利益が出るものを複数持ち、まとめて生活を支える形を作っていた。

そして同じ月に、Xnapperも公開する。発信の力とプロダクト作りの経験を、新しい分野で試す一手だった。

スクリーンショットにお金を払う人がいると信じて、Xnapperを作った

XnapperはMac用のスクリーンショットアプリだ。撮った画像をSNSに載せやすい見た目に整える。

スクリーンショットは無料で撮れる。それでも「見栄えよく、素早く整えられる」ことに価値を感じる人はいる。Dinhはその需要に目をつけた。

Xnapperは、ただ撮るだけでなく、投稿向けに仕上げるところまでを短時間で終わらせるツールだった。ショートカットキーでの起動、背景の加工、矢印や文字、ぼかしの書き込み、SNS向けサイズへの調整、さらに画像内の文字の読み取りまで、撮ってから投稿するまでの手間をまとめて引き受ける。

公開直後には約65万円($4,212)を売り上げた。

2024年1月の時点では、Xnapperは毎月約90万円($6,000)の売上になっていた。

Xnapperが大事だったのは、最大の稼ぎ頭になったからではない。「自分の必要から作り、品質を上げ、すでに見てくれる人に届けて伸ばす」というやり方を、もう一度証明したからだ。

ChatGPTの波を見て、5日で出したTyping Mind

Xnapperが日々の小さな面倒を消すツールだとすると、Typing Mindは「新しい波が来たらすぐ形にする」というスピード勝負の一手だった。

DinhはChatGPTの画面が使いにくいと感じていた。ちょうど、ChatGPTを外部のアプリから使えるAPIが公開された直後だった。ここで「もっと使いやすい画面を作れる」と判断する。

公開から5日後の2023年3月6日には最初の版を出した。その後、機能を少しずつ足し、料金も月額約1,400円($9)から月額約6,000円($39)へと上げていった。さらに会社向けに、自社用のChatGPT画面を作れる版も用意した。

2024年1月時点で、Typing Mindは平均で毎月約450万円($30,000)を売り上げ、ここで挙げた中では最大の収益源になっている。

SNSのルールが変わっただけで、事業が揺れる怖さ

複数のプロダクトを持つ戦略は、ある出来事で真価を試されることになる。

Black MagicはSNSの仕組みに強く依存していた。そのSNS側が外部アプリ向けの料金を急に変え、Black Magicの継続が危うくなった。

Dinhは大きな決断をする。Black Magicを約1,900万円($128,000)で売却したのだ。

生活を変えた大切なプロダクトだった。それでも、他社のルール次第で成り立たなくなる危険を抱えていた。売却で危うい収入源を現金化し、ルール変更の影響を減らした。

一本の柱に頼らない理由を、この出来事がはっきりと示した。売却後も、残る4つのプロダクトで毎月約700万円($45,000)を売り上げていた。

歩みを数字で振り返る

Dinhのやり方は、大きな会社をひとつ作るというより、便利なツールをいくつも作り、その収入を束ねる形に近い。主な数字を時系列で並べると、歩みの速さがよくわかる。

  • 2021年8月:会社を辞め、個人での活動に集中
  • 2022年8月:Black Magicが毎月10,000ドルに到達
  • 2022年10月:Black Magicが毎月13,000ドルに到達
  • 2023年3月:Typing Mindの最初の版を短期間で公開
  • 2023年10月:全体で毎月45,000ドル規模に
  • 2023年10月ごろ:Black Magicを約1,900万円($128,000)で売却
  • 2024年1月:4つのプロダクトで毎月約700万円($45,000)、Typing Mindが毎月約450万円($30,000)、Xnapperが毎月約90万円($6,000)

在宅勤務の退屈しのぎから3年あまり。会社員の副業は、毎月約700万円($45,000)を生むポートフォリオに変わっていた。

Dinhのやり方から学べること

ここまでの歩みからは、個人開発を事業に育てるための型がいくつも読み取れる。

  • 退屈をものづくりの合図に変える。毎日が単調になっても時間をつぶすだけで終わらせず、コミュニティに入ってすぐ手を動かした。
  • 公開の瞬間の注目に頼らない。DevUtilsで「バズは続かない」と痛感し、見つけてもらい続ける流れを作りに行った。
  • 必要になる前から届け先を増やす。発信を仕事の中心に据え、新作を出すたびに直接届けられる相手を増やした。
  • 手応えが出てから独立する。引き金は毎月約4.5万円($300)という小さな売上だった。完璧を待たず、かといって手応えゼロのまま飛び込みもしなかった。
  • 複数の柱が危機の選択肢を生む。Black Magicが揺らいでも他のプロダクトがあり、売却という手も打てた。
  • 速く動き、縛られすぎない。Typing Mindを5日で出すスピードは武器になる。一方で、他社のルールに依存しすぎない形を探し続ける必要もある。

小さなツールを束ねて、ひとつの事業にした

Xnapperは「スクリーンショットのアプリ」にすぎないように見える。それでも、丁寧に作られた便利ツールは、見てくれる人に届ける力と組み合わされば十分に事業になる。売上は2024年時点で毎月約90万円($6,000)。Typing Mindの毎月約450万円($30,000)に比べれば小さいが、複数の収入源のひとつとして確かに積み上がっている。

自分の困りごとから作る。作る過程を公開する。反応を見て直す。ひとつに賭けず、いくつも育てる。外の環境が変われば、売るか、作り直すか、別の柱を伸ばす。

その積み重ねが、副業の個人開発を、月に数万ドルを生む事業へと変えていった。


3層インサイト

Tony Dinhは大きな会社の一発成功ではなく、小さなプロダクトを複数作って収入を束ねる方針を選んだ。
2020年の在宅勤務をきっかけに個人開発者コミュニティを見つけ、作った記録や売上の証拠に触れて個人開発を始めた。
最初にMac用ログ閲覧アプリを作って公開したが、商売としては伸びなかった一方で「作って世に出せる」ことを確認した。
DevUtilsは自分のために作り、反応が良かったため支払い機能を付けて公開し、投稿後に売れ始めたが、話題が落ち着くと売上が止まった。
売上が止まった経験から、公開時の注目だけでは継続せず、見つけてもらい続ける仕組みが必要だと判断し、広告費より先に直接届けられる相手を増やす方向へ動いた。

単発のヒットよりも、複数の小さな収益源を組み合わせる設計は、外部環境変化への耐性を高める。

根拠

-Tony Dinhは大きな会社の一発成功ではなく、小さなプロダクトを複数作って収入を束ねる方針を選んだ。

-Black MagicはSNSの外部利用料金変更により継続が危うくなったと報じられ、DinhはBlack Magicを約1,900万円($128,000)で売却したという。

-紹介記事では4つのプロダクトで毎月およそ約700万円($45,000)の売上があるとも書かれている。

公開直後の注目は一過性になりやすく、継続的に見つけてもらう導線を別途作らないと売上は安定しにくい。

根拠

-DevUtilsは自分のために作り、反応が良かったため支払い機能を付けて公開し、投稿後に売れ始めたが、話題が落ち着くと売上が止まった。

-売上が止まった経験から、公開時の注目だけでは継続せず、見つけてもらい続ける仕組みが必要だと判断し、広告費より先に直接届けられる相手を増やす方向へ動いた。

制作過程を継続的に発信して見込み顧客を蓄積しておくと、新規リリース時の立ち上がりと継続販売の両方を支えやすい。

根拠

-制作の進捗・学び・更新情報をSNSとニュースレターで継続発信し、退職後1年時点でフォロワーが200人から47,000人に増えた。

-2022年8月の振り返りで、ニュースレターを19本書き、利益が出るプロダクトを3つ作ったとまとめ、同月にXnapperを公開した。

自分の不便から作って反応を見て商品化する流れは、需要の検証と改善を同時に進めやすい。

根拠

-DevUtilsは自分のために作り、反応が良かったため支払い機能を付けて公開し、投稿後に売れ始めたが、話題が落ち着くと売上も止まった。

-Black Magicはフォロワー1,000人到達の記念として作った仕掛けを、要望を受けてサービス化し、月額約600円($4)で提供した。

-XnapperはMac用のスクリーンショットアプリで、撮った画像をSNSに載せやすい見た目に整える需要に目をつけて作られた。

新しい波に対して短期間で初版を出し、その後に段階的な機能追加と価格改定を行うと、成長機会を取り込みやすい。

根拠

-Typing Mindは外部からChatGPTを利用できる仕組みの発表直後に「より使いやすい画面を作れる」と判断し、発表から5日後の2023年3月6日に初版を公開し、その後月額約1,400円($9)から月額約6,000円($39)へ値上げし、会社向け版も用意した。

-2024年1月の紹介ではTyping Mindは平均して毎月約450万円($30,000)ほどの売上で、最大の収益源になっている。

プロダクトがリリース直後は売れるが、話題が落ち着くと売上が止まる。

1リリース前後に制作の進捗や学び、更新を定期的に発信し、継続的に見つけてもらうための露出を作る。
2新規リリースの告知先として、直接届けられる購読者リストを作り、更新情報を継続配信する。
3初期反応が良かった機能や用途に絞って改善し、継続的にアップデートを出して再露出の機会を増やす。

特定の外部プラットフォームや仕様に依存しており、ルール変更で事業が揺れるリスクがある。

1依存している外部要因(API料金、規約、配布経路など)を洗い出し、売上に与える影響度で優先順位を付ける。
2収益源を複数に分散させるため、小さくても利益が出るプロダクトを追加し、合算で生活・事業を支える設計にする。
3外部依存が高いプロダクトは、撤退・売却・代替手段の検討など、選択肢を事前に用意して意思決定を早める。

新しい技術トレンドや市場の波が来たが、機会を逃さずに参入したい。

1波の発生を確認したら、最小機能の初版を短期間で出し、実ユーザーの反応を早期に得る。
2初版公開後は、利用状況や要望に合わせて機能を段階的に追加し、提供価値が増えたタイミングで価格を見直す。
3個人向けだけでなく、組織向けの利用形態も用意し、同一コア機能を別パッケージとして展開できる形にする。

独立やフルタイム化を検討しているが、ゼロの状態で踏み切るのはリスクが高い。

1副業段階で小さく公開し、一定期間の売上や継続利用の手応えを確認してから稼働比率を上げる。
2最初のプロダクトが伸びても単一依存を避け、2〜3本目の利益プロダクトを並行して育てる。
3発信と配布導線を先に整え、新規リリースのたびに届けられる相手が増える運用にする。