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コロナ禍で申し込みが激減した会社が、海外採用を始めて2年未満で年商1.6億円の事業に成長するまで

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コロナ禍で申し込みが激減した会社が、海外採用を始めて2年未満で年商1.6億円の事業に成長するまで

ビジネス概要

事業タイプ

Agency

フェーズ

拡大期

規模感

立ち上げから2年に満たない時点で年商約1.6億円(100万ドル)超

概要

米国のスタートアップや広告会社が中南米の広告・マーケティング人材を低コストで採用できるよう支援する事業。

ターゲット

アメリカのスタートアップや広告会社の採用責任者

主な打ち手

応募者数を追わず、面談を何度も重ねて詳しい人にも確認してもらい、会った人のごく一部だけを紹介する選考プロセスにした。

ストーリーの流れをザッとつかむ

事業の転機をタイムラインで一気読み

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感染症の流行で、事業の前提が一気に崩れた。申し込みは減り、資金調達の話も止まる。共同生活向けの住まいを扱う会社は、突然「縮むしかない」局面に追い込まれた。

それでも仕事は止められない。人を減らしたいのに、必要な業務は増えていく——この矛盾をどう解くのか。アニルが選んだのは、苦し紛れの海外採用だった。

危機対応の一手は、やがて次の仕事に変わっていく。2年に満たない時点で年商約1.6億円(100万ドル)を超える事業へ。何が転機になり、どんな考え方で積み上げていったのか。

苦し紛れの一手が会社を救い、その経験が次の仕事に繋がった

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Photo by Adeolu Eletu on Unsplash

アニル・ヤセルリは、起業をこう例える。「飛んでいる飛行機を、飛びながら組み立てる。しかも機体は燃えている」

大げさに聞こえるが、アニルはその"燃える瞬間"を本当に味わった。2020年3月のことだ。

アニルが働いていたのは、共同生活向けの住まいを扱う会社だった。知らない人同士が一つの家で暮らせるよう部屋を用意し、家賃を抑えて住める仕組みを作っていた。入居前には相性の確認もして、安心して暮らせるよう工夫していた。

ところが感染症の流行が始まると、空気が一変した。「知らない人と同じ家で暮らす」ことを避ける人が増え、申し込みが一気に減った。資金調達の話も止まり、会社は急に崖っぷちに立たされた。

人を減らすしかないのか。それでも事業の手は止められない。アニルは矛盾した課題を同時に抱えた。

そこでアニルが打ったのが、苦し紛れの一手だった。仕事の一部を海外の人材に任せることを急いで進めた。アメリカ国内で採用するより費用を抑えつつ、必要な仕事を回すためだ。

この判断が当たった。会社はなんとか持ちこたえ、2年半ほどで25人規模のチームを動かすまでになった。アメリカ国内にいたのは、たった3人だった。

最初は危機をしのぐための工夫にすぎなかった。だがアニルは気づく。遠く離れた場所から働く流れは、一時的なものではない。もっと大きな波になる。

そこでアニルは次の一歩を踏み出す。アメリカのスタートアップや広告会社が、中南米の優秀な広告・マーケティング人材を採用できるよう支援する会社を立ち上げた。

出発点はシンプルだった。「才能はどこにでもいる」

大企業での出世より、自分で決められる人生を選んだ

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Photo by Pablo Heimplatz on Unsplash

アニルはトルコからアメリカに移り、経営を学んだ。そのあと目指したのは、大企業で出世していく王道の道だった。

30代前半のころには、こう決めていた。「40歳までに、中くらいの会社で広告・マーケティングの責任者になる」

まずは小さめの会社で経験を積み、その後、大手企業の電子書籍端末に関わるチームに入った。優秀な人たちと働けた一方で、職場の雰囲気や上司の進め方が合わず、心も体もすり減っていった。

いつしかアニルは、大企業の文化そのものが自分に向いていないと感じるようになる。仕事の成果よりも、社内での立場や見え方を気にして動く時間が増えていく。本当に役に立つことに力を注ぎにくい環境だった。

そこでアニルは、投資家の資金で急成長を狙うスタートアップに移った。社内の根回しや調整に時間を取られるより、目の前の仕事に集中できると考えたからだ。

その後いくつかの会社で責任ある立場を任され、38歳で広告・マーケティングの責任者になった。目標より2年早かった。

だが、肩書きを手にしても、思ったほど心は満たされなかった。毎日が同じ繰り返しに見え、この先の道が本当に自分の望むものなのか、考えるようになった。

高い給料よりも大事なものがある。それは、自分の人生を自分でコントロールできることだ。

感染症の流行で事業が崩れかけ、海外採用で立て直した

共同生活向けの住まいの会社で責任者になってから、わずか3か月で感染症の流行が始まった。

需要は急落し、資金調達も止まった。会社は縮むしかない。でも、縮むだけでは立ち行かなくなる。未来に向けた動きも必要だった。

アニルが選んだのが、海外採用だった。費用を抑えながら、必要なチームを作る。

このやり方で成果が出ると、知り合いの会社から相談が来るようになった。最初の支援は、会社のサイトすらなく、個人のメールだけで進めたという。

それでも結果は出た。予算の半分ほどで、腕のいい広告・マーケティング担当者を2人採用できた。

ただし、誰でもいいわけではない。中南米などで応募者が多いほど、本当に力のある人を見つけるのは難しくなる。

そこでアニルは選び方を徹底した。面談を何度も重ね、詳しい人にも確認してもらう。紹介するのは、会った人の中のごく一部だけ。数より質を優先した。

投資家のお金に頼るか、自分の力で進むか

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Photo by Andreas Klassen on Unsplash

新しい会社を本格的に進める段階で、アニルは分かれ道に立った。

投資家から資金を集めて一気に大きくするか。外部の大きな資金に頼らず、売上で少しずつ育てるか。

アニルは、大企業やスタートアップで責任ある仕事をしてきた。だから「起業するなら資金調達が当たり前」という空気もよく分かっていた。

でも、資金を集めて人を増やし、また次の資金を求める。その繰り返しに疲れもあった。投資家の期待に追われるより、自由度を保ったまま長く続く形で成長したい。

投資家のお金を否定しているわけではない。必要な場面があることも理解している。ただし、自分には合わないと判断した。

一方で、のんびりした小さな商売を目指したわけでもない。立ち上げから2年に満たない時点で、年商約1.6億円(100万ドル)を超えた。ちゃんとした事業だった。

最初の採用支援の仕事から1年もたたないうちに、アニルはそれを本業にしようと決めた。ただし途中は別の会社で事業成長を担う仕事もしており、2023年5月に退職して自分の会社に専念した。

2025年2月時点で、アニルの会社は中南米の広告・マーケティングの専門家19人を雇っている。そのうち17人が取引先の仕事を担当している。

興味深いのは、自社の採用にも同じ仕組みを使っていることだ。自分たちが提供しているサービスを、自分たちが真っ先に使っている。

最後にものを言うのは、粘り強さ

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Photo by Brett Jordan on Unsplash

急成長の会社で学んだ大きな教訓の一つが、「売る力」の重要さだった。

事業を作る仕事の大半は、結局「売ること」になる。いいサービスを用意しただけでは足りない。必要な人に届く形にして、選ばれるところまで持っていく必要がある。

起業は、気持ちの面でもきつい。周りの目が集まり、答えのない問題を自分で決めて進まなければならない。その重さに耐えられず、途中で折れる人も多い。

それでもアニルは、苦しさと向き合う経験こそ学びが大きいと考えている。「ここを押さえれば一気に成功する」という魔法はない。近道もない。

助けになるのは、地道な努力と粘り強さだけだ。

起業家は華やかに見えることもある。だが現実は簡単ではない。誰にでも向く道ではなく、合う人は少ない。それでも、それでいい。

最近アニルは、広告を使って売上を伸ばす支援を行う別の会社も共同で立ち上げた。2つの会社を合わせて、年間売上をさらに大きくする目標を掲げている。

家族は応援している。ただ、アニルが何をしているのか、細かいところまでは伝わっていないこともあるらしい。長年働いてきても、訪問販売のような仕事をしていると思われている気がする、と冗談めかして話す。

それでも、ゼロから始めた事業で家族を支えられていることを、アニルは誇りに思っている。


ストーリーの流れ

アニル・ヤセルリ アメリカ

トルコからアメリカに移り、経営を学んだ後、大企業やスタートアップで広告・マーケティング領域の責任ある立場を担ってきた。共同生活向け住居を扱う会社で責任者になって間もなく感染症流行で事業が崩れかけ、危機対応として海外採用を進めた経験を持つ。その経験を起点に、米国企業が中南米の広告・マーケティング人材を採用できるよう支援する事業を立ち上げ、2023年5月に退職して自社に専念した。

Origin

アニルは起業を、飛びながら燃える飛行機を組み立てるようなものだと表現した。

  • 極限の状況でも手を動かして形にする前提で起業を捉えていた。
Origin

アニルはトルコからアメリカに移り経営を学んだ。

  • 当初は大企業で出世していく王道のキャリアを目指していた。
Origin

アニルは高い給料よりも自分の人生を自分でコントロールできることを重視した。

  • 肩書きを得ても満たされず、この先の道を考えるようになった。
Problem

感染症の流行で共同生活向け住まいの申し込みが急減し資金調達も止まった。

  • 知らない人と同じ家で暮らすことを避ける人が増えた。
  • 会社は急に崖っぷちに立たされた。
Problem

人を減らしたいのに必要な業務は増えるという矛盾が生じた。

  • 縮むしかない局面でも事業の手は止められなかった。
  • 未来に向けた動きも必要だった。
Action

アニルは費用を抑えるために仕事の一部を海外の人材に任せた。

  • アメリカ国内で採用するより費用を抑えつつ必要な仕事を回す狙いだった。
  • 危機をしのぐための工夫として急いで進めた。
Scale

海外採用の判断が当たり共同生活向け住まいの会社は持ちこたえた。

25人規模チーム規模
たった3人米国内人数
  • 2年半ほどで25人規模のチームを動かすまでになった。
  • アメリカ国内にいたのはたった3人だった。
Insight

アニルは遠隔で働く流れが一時的ではなく大きな波になると気づいた。

  • 危機対応の一手が次の仕事の種になった。
Action

アニルは米国企業が中南米の広告・マーケティング人材を採用できるよう支援する会社を立ち上げた。

  • 出発点は「才能はどこにでもいる」という考えだった。
Growth

海外採用のやり方が成果を出し、知り合いの会社から相談が来るようになった。

  • 最初の支援は会社のサイトすらなく個人のメールだけで進めた。
Action

アニルは予算の半分ほどで広告・マーケティング担当者を2人採用した。

予算の半分ほど採用コスト圧縮
2人採用人数
  • 費用を抑えながら腕のいい人材を確保できることを示した。
Action

アニルは面談を重ねてごく一部だけを紹介する選び方を徹底した。

  • 応募者が多いほど本当に力のある人を見つけるのは難しくなると捉えた。
  • 数より質を優先した。
Insight

アニルは資金調達で急拡大するか売上で育てるかの分かれ道に立った。

  • 資金を集めて人を増やし次の資金を求める繰り返しに疲れがあった。
  • 投資家の期待に追われるより自由度を保ったまま長く続く形を望んだ。
Monetize

アニルは外部資金に頼らず売上で育てる道を選び年商約1.6億円を超えた。

年商約1.6億円(100万ドル)年間売上
2年に満たない時点到達期間
  • のんびりした小さな商売を目指したわけではないと位置づけた。
Action

アニルは最初の採用支援から1年もたたないうちにそれを本業にすると決めた。

2023年5月退職時点
  • 途中は別の会社で事業成長を担う仕事もしていた。
  • 2023年5月に退職して自分の会社に専念した。
Team

2025年2月時点でアニルの会社は中南米の専門家19人を雇っている。

19人雇用人数
17人取引先担当人数
  • そのうち17人が取引先の仕事を担当している。
Scale

アニルは自社の採用にも同じ仕組みを使い提供サービスを自分たちが先に使った。

  • 運用の再現性を自社で証明する形になった。
Insight

アニルは事業づくりの大半は結局売ることだと学んだ。

  • いいサービスを用意しただけでは足りないと捉えた。
  • 必要な人に届く形にして選ばれるところまで持っていく必要があるとした。
Action

アニルは広告を使って売上を伸ばす支援を行う別の会社も共同で立ち上げた。

  • 2つの会社を合わせて年間売上をさらに大きくする目標を掲げている。

3層インサイト

2020年3月の感染症流行で、共同生活向け住まい事業は「知らない人と同じ家で暮らす」ことを避ける動きが増え、申し込みが一気に減った。
感染症流行の影響で資金調達の話も止まり、会社は縮小を迫られた。
アニルは業務を回すため、費用を抑えつつ仕事の一部を海外人材に任せる海外採用を急いで進めた。
海外採用の判断により会社は持ちこたえ、2年半ほどで25人規模のチームを動かすまでになり、アメリカ国内のメンバーは3人だった。
海外から働く流れは一時的ではなく大きな波になると捉え、米国企業が中南米の広告・マーケ人材を採用できるよう支援する会社を立ち上げた。

危機でコストを削りたいのに業務量は減らせないという矛盾が生じたときは、仕事を細かく分けて外部に任せることでコストの組み立て方を変えると、事業を続ける手が増える。

根拠

-感染症流行の影響で資金調達の話も止まり、会社は縮小を迫られた。

-アニルは業務を回すため、費用を抑えつつ仕事の一部を海外人材に任せる海外採用を急いで進めた。

-海外採用の判断により会社は持ちこたえ、2年半ほどで25人規模のチームを動かすまでになり、アメリカ国内のメンバーは3人だった。

一時的な危機対応で得た運用ノウハウは、環境変化が続くと判断できれば新規事業の核になりうる。

根拠

-海外採用の判断により会社は持ちこたえ、2年半ほどで25人規模のチームを動かすまでになり、アメリカ国内のメンバーは3人だった。

-海外から働く流れは一時的ではなく大きな波になると捉え、米国企業が中南米の広告・マーケ人材を採用できるよう支援する会社を立ち上げた。

最初の確認段階では見た目を整えるより早く動くことを優先し、最低限の手段で仕事を成立させると、次の受注につながる実績になる。

根拠

-知り合い企業からの最初の採用支援は、会社サイトなしで個人メールだけで進めた。

-最初の採用支援では、予算の半分ほどで広告・マーケ担当者を2人採用できた。

候補者が多い市場ほど選考の流れを見直し、絞り込みを厳しくして紹介する人数を減らすと、質を保ちやすい。

根拠

-応募者が多いほど有力人材の見極めが難しくなるため、面談を何度も行い、詳しい人にも確認してもらい、会った人のごく一部のみを紹介するなど数より質を優先した。

資金調達の可否だけでなく、経営の自由度や成長の持続性を基準に資金戦略を選ぶと、望む運営スタイルに合わせた成長ができる。

根拠

-事業拡大の方針として、投資家資金で急成長を狙うか、売上で少しずつ育てるかを比較し、アニルは外部の大きな資金に頼らず自由度を保って成長する道を選んだ。

-立ち上げから2年に満たない時点で年商約1.6億円(100万ドル)を超え、2025年2月時点で中南米の広告・マーケ専門家19人を雇い、そのうち17人が取引先業務を担当している。

需要急落や資金調達停滞で、縮小圧力がある一方で必要業務が減らせない。

1業務をタスク単位に分解し、社内に残す業務と外部に任せる業務を切り分ける。
2外部化する業務は、コストと供給量の観点で採用・委託先の地域やチャネルを複線化する。
3外部化後の運用(指示、納品物、品質基準、連絡頻度)を文書化し、少人数でも回る体制にする。

危機対応で編み出した運用が、別の企業にも価値がある可能性が見えてきた。

1危機対応で再現できた手順を「何を受け取り→どう動き→何を渡すか」の形に整理し、他社にも使える形にまとめる。
2最初の提供は体裁を整える前に、既存の連絡手段で小さく受注して成果指標を作る。
3得られた成果(コスト、期間、採用数など)をケースとして記録し、次の提案の根拠にする。

候補者数が多く、採用・選抜の質が成果を左右するが、見極めが難しい。

1面談回数や評価観点を固定化し、複数回の選考で判断のブレを減らす。
2候補者の評価に詳しい人の確認を加え、通過・不通過の判断基準を明確にする。
3紹介・推薦する人数を意図的に絞り、質を優先する運用ルールを設ける。

資金調達で急成長するか、売上で積み上げるかの意思決定が必要になった。

1成長速度だけでなく、意思決定の自由度や継続性などの評価軸を並べて比較する。
2資金戦略ごとに「必要な採用数」「固定費の増え方」「次の資金需要」をシナリオ化してリスクを見える化する。
3選んだ戦略に合わせて、採用計画と提供価値(品質基準や運用)を先に設計する。