子どもが2人いて、貯金はほとんどない。それでもSNSのDM(個別メッセージ)だけで仕事を取り、今では年に何億円もの売上が出る「文章の会社」に育てた。
最初の仕事は約3万円($200)で、次は月約60万円($4,000)だった。派手な広告費も潤沢な資金もない中で、どうやって信頼を積み上げ、仕事を広げていったのか。
アメリカ・アラバマ州のクリフトン・セラーズが選んだのは、「文章」と「毎日のDM」という地味な打ち手だった。
お金がなくても始められた。DMから育った文章の会社
子どもが2人。貯金はほとんどない。そんな状況からSNSのDM(個別メッセージ)だけで仕事を取り、いまは年に何億円もの売上が出る「文章の会社」を作った男がいる。アメリカ、アラバマ州に住むクリフトン・セラーズだ。
始まりは、何となくSNSを眺めていた夜のことだった。
「ネットで週に約15万円($1,000)稼いでる」
そんな投稿が目に入った。正直、怪しいと思った。それでも気になって、約5,000円($30)の教材を買ってみた。しかし中身は薄く、短い文章が並ぶだけで、期待した答えはなかった。
それでも一つだけ残ったものがある。「SNSで発信する」という方向性だ。
そこからしばらく遠回りが続く。ネットで物を売る方法を試したり、別の稼ぎ方に手を出したりしたが、どれもうまくいかない。家計は苦しいまま、焦りだけが募っていった。
そして2022年のはじめ、腹を決めた。
「文章を書く。発信はそれ一本で行く」
すると流れが変わる。3月だけでフォロワーが4万人増えた。書くことが楽しくなり、投稿を続けるほど文章が自分の武器になっていくのを実感した。
やがて「代わりに書いてほしい」という相談が届くようになる。最初は小さな依頼だったが、積み重ねるうちに仕事は増えた。ついにクリフトンは会社を設立する。名前はLegacy Builderだ。
クリフトンの生い立ちや経歴
クリフトンはアラバマ州の田舎で育った。家庭環境は複雑で、母親は早くに亡くなり、生後3か月で養子になった。子どものころは薬物依存にも苦しんだという。
人生を立て直すきっかけになったのがアメリカンフットボールだった。自分の環境から抜け出し、流れを変えた最初の一人になれた、とクリフトンは語っている。
社会人になってからは、非営利団体で約7年働いた。大学関係の仕事や寄付集めなど、社会の役に立つ仕事だったが、生活は楽にならない。子どもが小さい時期、クリフトンはこう思った。
「このままでは、お金を増やす道が見えない」
最初の仕事は約3万円($200)。次は月約60万円($4,000)
最初の依頼は約3万円($200)で、相手はアイルランドに住む若いフィットネストレーナーだった。
次に大きかったのは、リーダーシップを教えるコーチからの仕事で、月約60万円($4,000)で、投稿文や長文の文章など、SNSアカウント全体の文章を任された。
結果は分かりやすかった。そのコーチのフォロワーは、16週間で6万8,000人まで増えた。
クリフトンはここで確信する。文章はただの言葉じゃない。人を集め、信頼を作り、ビジネスを動かす力になる。
仕事の広げ方はシンプルだった。DMを毎日100通
Legacy Builderが大きくなるまでには、はっきりした2つの段階があった。
段階1:まず自分のアカウントで結果を出す
最初の武器は「自分自身が実例」だった。自分のSNSが伸びた事実を見せて信用を作り、依頼につなげた。
広告を出すお金はない。だからDMを使った。毎日100通。体力勝負だった。
断られることも多い。それでも送り続け、返事が来たら会話を続ける。必要な人に、必要な形で提案する。そうして少しずつ仕事が増えていった。
段階2は、「個人の副業」から「会社」に見える形へ変えることだ。
ある時期まで、外から見ると「ノートパソコンを持った個人が請け負っている」ように見えていた。
頼む側からすると不安になる。金額が大きくなるほど、「この相手は大丈夫か」と気にするためだ。
そこでクリフトンは決めた。「ちゃんとした会社に見える形」に作り直す。
以前のサイトは、安いサービスで作った簡単な1ページだけだった。そこからロゴ、色、言葉の選び方、見せ方を一気に整えた。動画も用意し、費用もかけた。
すると変化が起きる。相談してくる人の質が変わった。リニューアル直後から「大きな会社を動かしている人」が問い合わせてくるようになり、売上はさらに伸びた。
お客が増え、続いている理由
相手が経営者になるほど、「安心して任せられるか」を気にする。Legacy Builderは仕事の進め方や連絡の仕方を整え、プロとしての振る舞いを徹底した。
そして、他社との違いをはっきりさせた。「文章づくりに本気で向き合う」という姿勢を前面に出した。
自分たちも毎日発信し、文章の力で会社を大きくしてきた。広告に頼らず、発信を見た人や紹介から仕事が来る。そこに強みがあった。
ただし難しいのは、依頼主になりきって文章を書くことだ。本人らしく聞こえない文章は、本人の投稿として使えない。
だからLegacy Builderは、言い回しや考え方のくせをつかむことを大事にしている。確認の流れも含めて、ブレない仕組みを作った。
さらに「代筆屋」で終わらないことも重視している。新商品を出す時期、大事な発表がある時期に必要な文章をまとめて作り、その人の発信チームとして動く。そこまでやるから、長く続く関係になる。
これからやりたいこと
クリフトンが次に目指すのは、経営者や会社の代表が「一目でこの人だと分かる発信」を作る際の、全体を束ねる役割を担うことだ。
SNSだけでなく、メールで届く読み物や動画も含め、発信全体を支えられる体制を作りたいと考えている。
文章づくりに加えて、DMでのやりとりの設計、メールの送り先リストづくり、メール配信の運用も手伝っている。社内だけで全部そろえようとすると、やることが増えすぎて回らなくなるからだ。
うまくいかないと思った瞬間
会社一本にした直後、初めて「社員に近い立場の人」との問題が起きた。仕事量は多いが、質が追いつかない。お客が離れた。
クリフトンはその人に辞めてもらう決断をした。つらい選択だったが、会社を続け、目指す形に近づけるには必要だった。
この出来事をきっかけに、仕事の手順を整え、現場を回す役割の人も加え、運用を締め直した。
もう一つの不安は、SNSのルールが突然変わることだ。昨日まで通じたやり方が、翌日には通じなくなる。
大きな変更が起きた時、クリフトンは2日間ほとんど寝ずに新しいやり方を探したという。
だからこそ、SNSだけに頼らない。クリフトンはお客に「メールの送り先リストを作れ」と勧めている。SNSが変わっても、連絡できる相手が残るからだ。
仕事に欠かせないツール
使うツールは多すぎない。
社内の作業整理には、メモや資料をまとめられるサービスを使う。投稿の予約や複数SNSの管理には、投稿をまとめて扱えるサービスを使う。メールで届く読み物の配信には、ニュースレター向けのサービスを使っている。
DMのやりとりを効率化するツールや、別のSNSでの反応づくりを助けるツールも、必要に応じて活用する。
影響を受けた本
クリフトンには、社員全員に読んでもらう本がある。飲食店でお客の体験を最高にするための工夫を描いた本だ。
高級店のように感じてもらえる小さな気配り。それを文章の仕事にも取り入れたいと考えている。
これから始める人への助言
クリフトンの助言はシンプルだ。
得意なことを1つ選び、それに集中する。
次に壁になるのは時間だ。早く結果が欲しくなる。でもできるのは、方向を決めて少しずつ学び続けることだけ。
いまは情報が手に入りやすい。学び方次第で、必要な力は身につけられる。
事業が伸びない理由は、たいていどこかに「足りない力」があるからだ。売り方が弱い。約束した仕事をやり切る力が弱い。商品としてのまとめ方が弱い。そういった穴が残っている。
問題を見つけて埋める。次の段階へ進む。するとまた新しい課題が出る。逃げずに埋めていく。それが大事だとクリフトンは言う。
仲間の集まりで得たもの
クリフトンは、経営者同士の非公開の集まりにも参加している。そこで出会った相手と、ネット上のサービスを一緒に作ったこともある。一度も直接会わないまま進め、月に約300万円(約2万ドル)の売上に近づいているという。
イベントに参加して、もう一つ変わったことがある。
「自分はこの場にいていいのか」
その不安が薄れた。周りの成功している経営者も、同じように悩み、家族や仕事を抱えながら生きていると分かったからだ。
大事なのはお金だけではない。どんな影響を世の中に残したいか、どうやってそれをやるか。そういう話を重ねることで、落ち着いて判断できるようになったとクリフトンは語っている。
