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元契約エンジニアが「地味なバックアップだけ」で年間4,000万円。退屈市場の全戦略

8 min read2026年3月14日
元契約エンジニアが「地味なバックアップだけ」で年間4,000万円。退屈市場の全戦略

ビジネス概要

事業タイプ

SaaS

フェーズ

拡大期

規模感

年間約4,000万円規模($270,000)の継続売上

概要

Azure DevOps上の重要なコードを、事故や攻撃で消えても短時間で復旧できるようにバックアップするサービス。

ターゲット

Azure DevOpsを運用する大企業のIT部門の責任者

主な打ち手

大企業の深刻なリスクに合わせて年$25,000〜$30,000の価格で価値を伝え、検索で見つけてもらえる導線と申込〜利用開始の自動化を整えた。

30秒で分かる

1契約エンジニアが年約4,000万円。

Azure DevOps向けバックアップで継続売上

サービス名はBackrightup

2狙いは「バックアップの穴」。

Azure DevOpsに専用の復元手段が少なかった。

コードが消えると事業が止まる。

3ないなら自分で作った。

まず基本の仕組みを作った。

利用者の掲示板に投稿した。

要望の上位に「バックアップ」がいた。

4数日で大企業が動いた。

投稿後、通信会社から連絡が来た。

未完成と伝え、急いで作り直した。

月末にその会社が最初の顧客になった。

5伸びた理由は値付けと検索。

月約1万5,000円でなく年約380万〜約460万円で売った

申し込みから利用開始まで自動化した

検索で見つけてもらい、静かに増えた。

6この話の核心は地味な必需品。

大企業でも守りが手薄な領域がある。

そこを埋めると高単価の継続売上になる。


ストーリーの流れ

Problem

Azure DevOpsには失ったコードを復元するためのバックアップ専用サービスがほとんどない問題があった。

  • 人為的ミスやハッキングでコードが消えれば、会社の事業が止まりかねない危機になる。
  • クラウドに預けているだけで守られていると誤解されやすい一方で、対策は手薄だった。
Insight

契約エンジニアとして大企業の現場で「バックアップの穴」を見て、解決の価値が大きいと確信した。

  • 現場の担当者にバックアップ可否を聞かれて調べても良い答えが見つからなかった。
  • 契約社員の立場では予算や仕組みを動かしにくく、その場は黙ってやり過ごした。
  • 「大切なコードが急に消えない」と分かるだけで会社は安心できると考えた。
Action

自分でAzure DevOps向けバックアップサービスBackrightupを作り始めた。

  • 契約の仕事が落ち着いたタイミングで基本的なバックアップの仕組みを作った。
  • Azure DevOps利用者が集まる掲示板に投稿して反応を確かめた。
Insight

掲示板の要望でAzure DevOpsのバックアップ需要が上位にあり、課題が広く共有されていると分かった。

  • 「こんな機能がほしい」という要望が並び、困っているのは自分だけではないと判明した。
Growth

投稿から数日でオーストラリア最大級の通信会社が興味を示し、初期の市場牽引が起きた。

  • 当時のBackrightupは大企業に出せる完成度ではなかった。
  • 解決策はあるが企業向けに整える時間が必要だと正直に伝えた。
Action

安全性と運用と使いやすさを大企業水準に合わせてBackrightupを作り直した。

  • 急いで作り直し、求められる水準に合わせて形を整えていった。
Monetize

月末にその通信会社が最初の顧客になり、企業向け販売が成立した。

  • 大企業でも導入できる形に整えたことが契約につながった。
Monetize

値付けを「軽いツール」ではなく「大企業の深刻なリスクを取り除くサービス」として再定義した。

年約380万〜約460万円($25,000〜$30,000)企業向け年間価格帯
  • 見せ方と説明が変われば相手の受け取り方も変わると学んだ。
  • 大企業が本当に困っている問題であれば価格もそれに見合うべきだと判断した。
Action

申し込みから支払いまでを自動化し、契約後すぐ使い始められる導線を整えた。

  • 利用者が自分で申し込みと支払いを完了すれば、そのまま利用開始できる形にした。
  • 売上が一回きりではなく継続して積み上がる形になった。
Growth

検索で見つけてもらう導線を作り、派手な宣伝なしで問い合わせが積み上がった。

  • Azure DevOpsのバックアップを探す人は毎月一定数いる前提で設計した。
  • 検索結果の上位に表示されれば毎日少しずつ問い合わせが来ると捉えた。
Growth

Backrightupは大企業4社と中小企業の利用者から年間約4,000万円規模の継続売上を得るまでに成長した。

年間約4,000万円規模($270,000)の継続売上継続売上規模
大企業4社大企業顧客数
  • コードを守る話は地味だが利益につながりやすい分野だと位置づけられた。
Team

2022年初めに契約スタッフを2人雇い、運用体制を拡張した。

契約スタッフを2人追加採用人数
2022年初め採用の節目
  • カナダの政府関連組織との契約も狙って動いていた。
Insight

データ消失は人為的ミスや責任境界のあいまいさで起きやすく、数分で復旧したいニーズがある。

  • 契約者が誤ってコードの保管場所を削除してしまった例があった。
  • 移行作業中の消失や怒った契約者による削除などの例もある。
  • GitLabで社員の操作ミスにより大量のデータが消えた事故も知られている。
  • Backrightupは復旧スピードを重視して作られた。
Scale

将来はAzure DevOps以外も含めて仕事で使うデータのバックアップをまとめて提供する構想を持っている。

  • 複数サービスを選ぶとまとめた料金でバックアップできる形を想定している。
Scale

近接領域としてセキュリティ市場への展開も視野に入れ、暗号化の仕組み整備とSOC 2認証取得を進めた。

  • 社内では複数の鍵を使う暗号化などの仕組みを整えた。

コードは企業の命綱。でも、クラウドに預けているからといって「もしもの時」まで守られているとは限りません。

契約エンジニアとして現場を見てきたコートニー・ファーカーソンも、Azure DevOpsを使う大企業の中で、バックアップの「穴」に気づきながら、すぐには動けないもどかしさを抱えていました。消えたら終わる。それでも、対策は意外なほど手薄でした。

その停滞感を打ち破るために自分で作ったのが、バックアップサービス「Backrightup」。地味な課題に向き合った結果、年間約4,000万円規模($270,000)の継続売上へとつながっていきます。

地味だが必要な「バックアップ」が、大きな売上を連れてきた

会社がソフトを作るとき、コードは命綱になる。

マイクロソフトのAzure DevOpsは、そのコードを置き、チームで開発を進めるためのサービスだ。多くの企業が、ここに大切なコードを預けている。

しかし、長年その現場を見てきた契約エンジニアのコートニー・ファーカーソンは、ある「穴」に気づいた。

Azure DevOpsには、万が一の際にコードを取り戻すための、きちんとしたバックアップ専用サービスがほとんどない。

人為的なミスやハッキングが起きれば、何十万ドル(数千万円規模)もかけて作ったコードが消える。会社にとっては単なる事故どころか、事業が止まりかねない危機だ。

「ないなら、自分で作るしかない」

そうして生まれたのが、Azure DevOps向けのバックアップサービス「Backrightup」だった。

昼は契約社員、夜は起業家

コートニーは2005年、南アフリカの大学を卒業した。最初に入ったのはマイクロソフト関連のコンサル会社で、.NETを使った開発に携わりながら、南アフリカやオーストラリアの大企業を回り、システム構築や運用の相談に乗っていた。

その後オーストラリアへ移り、マイクロソフトのインフラ担当コンサルタントとして働く。5年ほどの間に、Azure DevOpsを大企業で運用する現場を何度も経験した。

ただ、コートニーは「会社員だけ」で終わるタイプではなかった。

仕事の合間に小さな事業を作っては売るということも続けていた。メールアドレスを収集するツールを作ったり、犬のエサを扱うネット通販を運営したりして、合計で約1億5,000万円規模(100万ドル台)の売却につなげた。

昼は契約社員、夜は起業家。そんな生活が続いていた。

DevOpsとクラウドが広がり、コードが集まる場所ができた

DevOpsは、ソフトを作る作業と動かし続ける作業をうまくつなげ、リリースまでの時間を短縮する考え方だ。自動化のツールも含まれる。

自動化には強力なサーバーが必要になることが多い。そこでクラウドが役立つ。自社で大規模なサーバーを持たなくても、必要な分だけ借りて使えるからだ。

開発に必要なものをまとめて扱えるサービスとしては、Bitbucket、GitLab、GitHubなどがある。マイクロソフトは2018年にGitHubを買収し、Azure DevOpsの存在感も増した。

Azure DevOpsは特に大企業で使われやすく、歴史のある大きな会社ほど、こうした仕組みにコードを集めていく傾向がある。

コードが集まる場所ができれば、次に重要になるのは「守り方」だ。

「バックアップがない」ことに気づいた瞬間、チャンスが見えた

オーストラリアの大手食品会社で仕事をしていたとき、コートニーはAzure DevOpsに「失ったコードを復元するためのアプリがほとんどない」ことに気づいた。

現場の担当者に「このコード、バックアップできないか」と聞かれ、調べてみても、良い答えが見つからない。

契約社員の立場では、大きな予算を動かしたり仕組みを変えたりしにくい。その場は黙ってやり過ごした。

でも、頭の中ではずっと引っかかっていた。

企業はアプリやシステム開発に毎年何十万ドル(数千万円規模)も投じることがある。コードが消えれば、その投資は一瞬で無駄になる。クラウドならバックアップも当然あると思いがちだが、Azure DevOpsには十分な仕組みが整っていない部分があった。

コートニーはこう考えた。

この問題は、解決策を作りやすい。しかも価値が大きい。「大切なコードが急に消えない」と分かるだけで、会社は安心できる。

契約の仕事が落ち着いたタイミングで、まずは基本的なバックアップの仕組みを作り、Azure DevOps利用者が集まる掲示板に投稿した。

そこには「こんな機能がほしい」という要望がずらりと並んでいた。しかも「Azure DevOpsのバックアップがほしい」という声は上位に入っていた。

困っているのは、自分だけではなかった。

数日後、いきなり大企業から連絡が来た

投稿から数日で、オーストラリア最大級の通信会社が興味を示した。固定電話やインターネットなど、社会インフラを支える巨大企業だ。

ただ、その時点のBackrightupは、そんな大企業に出せる完成度ではなかった。

コートニーは正直に伝えた。

「解決策はある。ただ、企業向けに整える時間が必要だ」

そこから急いで作り直した。安全性、運用、使いやすさ——大企業が求める水準に合わせて形を整えていった。

そして月末、その通信会社が最初の顧客になった。

いちばん難しかったのは「値段」だった

次の壁は値付けだった。

月約1万5,000円($100)程度の軽いツールとして売るのではなく、大企業の深刻なリスクを取り除くサービスとして、年約380万〜約460万円($25,000〜$30,000)の価値があると伝えなければならない。

同じ機能でも、見せ方と説明が変われば相手の受け取り方も変わる。大企業が本当に困っている問題であれば、価格もそれに見合ったものにすべきだ。

ここでコートニーは、販売の考え方を学んだ。

大企業の年間契約を取ったあとは、申し込みから利用開始までを自動化する仕組みも構築した。利用者が自分で申し込み、支払いまで完了すれば、そのまま使い始められる形だ。

売上は「一回きり」ではなく、継続して積み上がるようになった。

検索で見つけてもらい、静かに伸びた

コートニーには、犬のエサのネット通販を運営した経験があった。そこで学んだのが、検索で見つけてもらう工夫だ。

Azure DevOpsのバックアップを探す人は毎月一定数いる。検索結果の上位に表示されれば、毎日少しずつ問い合わせが来る。

派手な宣伝ではない。それでも、必要な人に届けば十分だった。

結果としてBackrightupは、1年足らずで本業の収入を上回った。2022年初めには契約スタッフを2人雇い、カナダの政府関連組織との契約も狙って動いていた。

記事の時点でBackrightupは、大企業4社と中小企業の利用者から、年間約4,000万円規模($270,000)の継続売上を得ている。

コードを守る話は地味だが、利益につながりやすい分野だった。

なぜDevOpsのバックアップが必要なのか

クラウドにコードを置く会社が増えるほど、データ消失のリスクも高まる。

原因として意外に多いのが、単純な人為的ミスだ。

大きな組織では外部の契約者と一緒に仕事をすることが多く、そこが弱点になりやすい。実際に、契約者が誤ってコードの保管場所を削除してしまった例もあった。

契約者は「会社が持っている」と思い、会社は「契約者が持っている」と思い込んでいた。責任の境界があいまいなときほど、事故は起きやすい。

ほかにも、別の場所へ移行する作業中にデータを失った例や、トラブルで怒った契約者が削除してしまった例もある。

社内でもミスは起きる。GitLabで社員の操作ミスにより大量のデータが消えた事故は、よく知られている。

コードはウェブサイトやサービスを動かす土台だ。失えばサイトが壊れ、利用者の情報も守れなくなる。しかも「いつか直せばいい」では済まない。

多くの現場では「数分で復旧したい」というニーズがある。Backrightupは、そのスピードを重視して作られた。

次は、バックアップをもっと広い世界へ

現在はAzure DevOpsのバックアップが中心だが、将来は仕事で使うさまざまなデータのバックアップをまとめて提供したい考えがある。

複数のサービスを選ぶと、まとめた料金でバックアップできるような形を想定している。

さらに近接する分野として、セキュリティ市場への展開も視野に入れている。社内では複数の鍵を使う暗号化などの仕組みを整え、SaaS企業向けのSOC 2という認証も取得した。

退屈に見える問題ほど、金になることがある

コートニーがこれまで手がけてきた事業には共通点がある。

小さくても確実に必要とされる困りごとを見つけ、ツールとして解決する。

犬のエサの事業では、重い大袋を毎月買いに行く手間を省き、定期的に自宅へ届ける仕組みを作った。別の技術系の事業では、表計算ソフトや文書からメールアドレスを抽出する作業を効率化した。

どれも派手ではない。だが役に立つ。

こうした「地味だが必要なもの」は、安定した売上につながりやすい。少人数でも運営でき、余計なコストをかけずに続けられる。

投資家に合わせて無理に成長を急がなくてもいい。家族との時間を守れる形の事業も作れる。

バックアップは目立たない。だが、誰かが本当に困ったとき、いちばん頼られる存在になる。