利用者4万人以上。確認済み口コミ4,103件で評価は5点満点中4.7。アプリ上で処理された仕事の総額は約870億円(6億ドル)ともされる。QuoteIQは、工事業者の現場で「毎日使うツール」として広がっていった。
ただ、その出発点は華やかな製品会議ではなかった。見積もり、スケジュール、写真、請求、回収、連絡――バラバラのツールと情報に振り回される現場の混乱だった。
外部の大きな資金に頼らずプロダクトを形にし、広告費をかけずに拡大できたのはなぜか。現場の視点を大切にしながら、一つのツールにまとめ上げた経緯を追う。
現場の混乱から生まれた業務アプリであるQuoteIQ
家の修理や清掃、芝の手入れ、高圧洗浄。こうした仕事をする工事業者の毎日は、想像以上にやることが多い。
見積もりを作り、スケジュールを組み、作業員を動かし、写真で記録を残し、請求書を送り、支払いを回収する。その合間に顧客からの連絡が入り、次の仕事の問い合わせも来る。
QuoteIQは、この流れを「一つの場所」でつなげるアプリとして作られた。見積もり、スケジュール、請求、支払い、チーム管理、連絡、口コミ依頼までをまとめて扱える。
出発点はソフト会社の会議室ではなく、現場の混乱そのものだった。
中心にいたのは共同創業者のマイク・ビダン。もう一人の共同創業者はジャスティン・ロジャース。2人とも工事業者の仕事を知り、教える側にも立ってきた人物だ。
QuoteIQは「外部の大きな資金に頼らず、2人で作り上げた」とも語られている。現在の公表情報によると、利用者は4万人以上、50種類以上の業種で使われ、評価は5点満点中4.7、確認済み口コミは4,103件。アプリ上で処理された仕事の総額は約870億円(6億ドル)以上ともされる。
料金は14日間の無料お試しがあり、約4,300円($29.99)から。人数制限なしのプランは約5万8,000円($399.99)まで用意されている。
「仕組みで回す」を体に覚えた会社員時代
ビダンのキャリアは1997年に始まった。大手企業で営業や宣伝、運営に関わりながら、仕事を速く正確に進めるための考え方を身につけた。
ここで大事なのは、気合や根性で回すのではなく「決まった手順」に落とし込むことだ。誰がやっても同じ結果が出るよう作業の順番を整え、ミスが起きやすい箇所をあらかじめ潰す。仕事を人ではなく仕組みに乗せていく発想だ。
起業も、いきなり会社を辞めて勝負したわけではない。働きながら別でサービス業の事業を作り、時間の使い方や作業の流れを固め、少しずつ自走する形にしていった。
サウスカロライナ州の士官学校を卒業していることも紹介されている。規律や段取りを重んじる姿勢は、こうした背景とも重なる。
現場での毎日が「足りないもの」を教えてくれた
2005年、ビダンはサービス業の会社を立ち上げる。芝の手入れや高圧洗浄のように、地域の競争が激しく、段取りの差がそのまま利益の差になる分野で、複数の会社を成長させてきたとされる。
ジョージア州サバンナで「All American Pressure Cleaning」を運営していることも紹介されている。
現場では毎日さまざまな問題が起きる。見積もりを間違えれば利益が消える。作業員の割り当てを間違えれば一日が崩れる。写真が残っていなければ説明ができない。請求が遅れれば資金が回らない。進み具合を伝えなければ顧客の不安が募る。
こうした積み重ねが、「何がうまくいき、何がうまくいかないか」をはっきりさせた。
さらに別の問題も見えてくる。工事業者の仕事は、複数のアプリ、表計算、紙のメモが混在しやすい。情報があちこちに散らばり、同じことを何度も入力し、引き継ぎで抜けが生じ、確認のために探す時間が増える。
ビダンの中に、「最初から最後まで一つでつながる仕組みが必要だ」という動機が育っていった。
先に信頼を集めてから、プロダクトを出す
2019年、ビダンの動画チャンネルが伸びたとされる。工事業者に向けて、集客の考え方、売り方、仕事の回し方を教える内容で、登録者は58万人以上になったという。他のチャンネルも合わせると、合計200万人以上が視聴しているとも書かれている。
重要なのは、売り込みではなく「役に立つ情報」を先に出していた点だ。
ソフト会社の経営者としてではなく、現場で作業員を動かし、請求の回収に追われ、失敗も経験した人間として話す。だから言葉に重みが出る。見ている側も「この人は分かっている」と感じやすい。
本も出しており、25年分の成功と失敗をまとめた内容だと紹介される。小さな高圧洗浄の会社から始まり、今の仕組みづくりにつながった流れが語られている。
この時点で、ビダンの周りには「すでに彼を知っている人」が増えていた。後にQuoteIQを出すとき、その土台が効いてくる。
既存の業務アプリに我慢できなくなった2022年
2022年、ビダンは既存の業務アプリへの強い不満からQuoteIQを共同で立ち上げたとされる。現場で働く人にとって必要なものが足りない、と感じたという。
共同創業者に選んだのがジャスティン・ロジャース。工事業者向けの情報発信で知られ、動画で多くの視聴者を持つ人物として紹介されている。
2人とも、工事業者の仕事を知っているだけではない。教える側として何度も同じ質問を受けてきた。つまり「どこでつまずくか」を熟知している。
だからQuoteIQは「現場の声で形を決める」ことを優先できた、と語られる。
外部の大きな資金を入れなかった点も強調されている。お金を集めて急成長を狙うより、作りたいものをブレずに作る。そのための選択だったという見方になる。
広告に頼らず、2023年に一気に広がった
QuoteIQは2023年に一般公開された。公開後すぐに多くの利用者が集まった。しかも広告費は使っていない、と説明されている。
細かな増加数は示されていないが、方針は明確だ。
広告でまだ知らない人に向けて押し広げるのではなく、動画などで信頼を積み上げてきた相手に届ける。すでに価値観が合っている人たちにまず使ってもらう。
広告費を抑えられれば、その分を改善やサポートに回しやすい。ただしそのやり方はごまかしが効かない。使い続けてもらえなければ、口コミは広がらないからだ。
バラバラのツールを一本にまとめるという発想
QuoteIQの狙いは、見積もりのテンプレートを用意するだけではない。問い合わせから入金まで、情報が途中で途切れないようにすることにある。
主な機能として紹介されているのは次の通りだ。
- 見積もりと請求書の作成・送付・支払いの受け取り
- カレンダーでスケジュールを管理し、作業員の割り当てやリマインドを行う
- 作業員のスケジュール、勤務時間、チームの管理
- 顧客とのやり取りをまとめ、アプリ内のメッセージで整理する
- 現場写真を撮って見積もりと紐づけ、記録に残す
- 作業後に口コミの依頼を自動で送る
- メールやメッセージの自動送信で、連絡やフォローアップを手間なく行う
- 見込み客の状況を一覧で追い、売上の見通しを立てやすくする
- 材料や在庫を、車両や倉庫ごとに把握する
- 文章作成や見積もり作りを補助する機能、24時間の電話対応を手伝う機能など、判断を助ける機能
- 地図や衛星写真を使って、現地に行く前に大まかな寸法を出し、最初の見積もりを作りやすくする
現場の人が一番困るのは、仕事が増えると「管理の手間」も増えることだ。QuoteIQは、その増え方を小さく抑えようとしている。
人数が増えても料金が読みやすいようにした
QuoteIQには14日間の無料お試しがあり、約4,300円($29.99)から始まる。公表されているプランは次の通りだ。
- Essentials:月約4,300円($29.99、1人)
- Beginner:月約1万1,000円($74.99、2人)
- Pro:月約2万2,000円($149.99、4人)
- Elite:月約3万6,000円($249.99、7人)
- Max:月約5万8,000円($399.99、人数制限なし)
会社は「人数が増えるたびに追加料金が積み上がりにくい」点を強みとして挙げている。工事業者は、作業員だけでなく事務や営業スタッフも増える。人が増えるたびに料金が跳ね上がると、先の計画が立てにくい。その不安を減らすための設計という考え方が見える。
数字が示すのは、現場のツールとして受け入れられたこと
QuoteIQについて公表されている規模の数字は次の通りだ。
- 利用者4万人以上
- 50種類以上の業種で利用
- 口コミ評価は5点満点中4.7、確認済み口コミは4,103件
- アプリ上で処理された仕事の総額は約870億円以上(6億ドル)
「毎日使う人が4万人以上」という表現もあり、数字の表現には幅がある。それでも、現場のツールとして広く使われていることを伝えたい意図は一貫している。
いまも前に出るのは、現場目線という約束
ビダンはサバンナに拠点を置き、事業を動かしながら仕組みづくりとソフト開発を続けていると説明されている。
「現場で使える形」を守るために、使い方動画や学習用ページ、利用者同士が集まれる場も用意している。紹介で広がる仕組みもあり、紹介した人に報酬が出る制度では、紹介経由で発生した支払いの一部が紹介者に還元される仕組みだと書かれている。
売って終わりではなく、使い続けてもらう前提で回している姿勢が見える。
現場の苛立ちが、一つのツールに変わった
QuoteIQの物語はシンプルだ。
現場で仕事を回してきた人間が、バラバラのツールで疲れ切る毎日に耐えられなくなった。だから、最初から最後までつながる仕組みを作った。先に信頼を積み上げていたから、広告に頼らず広げることもできた。
外から見えない部分は残る。売上や社員数、開発の詳細な時期などは分からない。それでも筋は通っている。
現場の困りごとから生まれ、信頼のつながりで広がっていった。QuoteIQは、そういう起業の形を示している。
