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「起業が楽しくない」全部ひとりで抱えるのをやめて年商9,000万円規模の組織を育てた選択

9 min read2026年2月26日
「起業が楽しくない」全部ひとりで抱えるのをやめて年商9,000万円規模の組織を育てた選択

ビジネス概要

事業タイプ

Agency

規模感

年換算で約9,000万円規模(約60万ドル)の売上

概要

Web3プロジェクト向けに、UI/UXを中心としたプロダクトデザインを提供するデザインエージェンシー。

ターゲット

Web3アプリやプロジェクトを立ち上げ・運営する企業/チームの意思決定者

主な打ち手

Web3特化で早期参入し、実績に見える制作物を用意してコミュニティ活動と直接送付で「断られる回数」を増やし、初期顧客獲得につなげた。

ストーリーの流れ

Problem

根性や長時間労働を正解のように語る空気に置いていかれ、起業も楽しくなくなっていった。

  • ミゲルは居場所を失い収入が途絶え、何度もやり直しを迫られた。
  • 新しいアイデアを始めるたびに開発もデザインも営業も経営判断も全部ひとりで抱えていた。
Insight

「根性で続ける」より「好きで続けられる場所」に移動したほうが結局は強いと結論づけた。

  • 消耗戦みたいなやり方だけが正解とは限らないと捉えた。
  • 好きなことを軸にすると学び続けやすく経験が積み上がると考えた。
Action

いじめで教室に居場所を失いコンピューター室に逃げ込み独学でプログラミングを学び始めた。

  • 周囲との機会格差を痛感し手で作れるスキルが欲しかった。
  • 学校代表としてプログラミング大会にも出て奨学金やインターン機会をつかんだ。
Action

大学を辞めて2013年に首都ボゴタへ移り人脈づくりとビジネスの勉強を続けた。

  • お金がほとんどない状態で25人で住む家の小さな部屋で暮らした。
  • 高校時代のインターン経験を頼りに仕事の機会を探し続けた。
Growth

ユニバーサル・ミュージック現地部門での仕事とフリーランス開発でアプリ開発が安定した収入源になった。

  • 有名アーティストを支えるモバイルアプリ開発に関わった。
  • 国内で「仕事ができるやつ」と見られ始めた。
Action

部署消滅で収入が途絶えた後に2015年からコンドームを20分で届ける配達アプリ事業を始めた。

  • 冗談半分で始めたが事業として形になった。
  • ネットで「コンドームの人」として知られるのが嫌になり手放す決断をした。
Monetize

2016年に支援組織から約1,600万円(約10万ドル)を調達し拠点をチリへ移して開発を続けた。

約1,600万円(約10万ドル)を調達資金調達額
  • ラテンアメリカでスタートアップ投資が盛り上がり始めていた時期だった。
  • さらに1年ほど開発を続けた。
Problem

レストラン事業などを経て起業が楽しくないと感じた原因が全役割をひとりで背負う状態だと分かった。

  • 飲食の現場は料理人探しや接客トラブルなど日々の細かい問題が多かった。
  • 人を雇ってチームを回す難しさは学べた。
Insight

「自分はコードに寄りすぎていた」と気づきデザインが信頼を作る入口になると捉え直した。

  • アプリやサイトで最初に目に入るのはデザインだと整理した。
  • 印象を決める役割に価値を見いだした。
Action

方針を切り替えてデザインに100%集中し大きな組織の中でデザイナーとして価値を売る道を選んだ。

  • 自己改善の旅のようにインドネシアのバリ島へ移り住んだ時期もあった。
  • 実績の見せ方を工夫して大手向けの制作物を作ったように見せるポートフォリオで売り込んだ。
Growth

2020年にデザインコンサルタントとして2社の案件を獲得し2年間でより大きな会社でより上位の役割へ上がった。

2020年デザインコンサル案件獲得年
2社の案件獲得案件数
  • 大企業の仕事で鍛えられていった。
  • 転機のひとつとしてメルカド・リブレでシニアUXデザイナーを経験した。
Insight

NFTの売買にも挑戦する中でWeb3に強く惹かれWeb3は暗号資産の成否とは別に続くと見立てた。

  • Web3で働く人は特に優秀だと感じていた。
  • 情報を分散して持つ仕組みが未来につながると考えるようになった。
Action

フリーランス仲間のネットワークを土台にWeb3アプリのデザインエージェンシー「Index96」を立ち上げた。

  • 付き合い始めて4か月の恋人のひと言が背中を押した。
  • Web3特化のデザイン会社としてはかなり早い参入だった。
Action

最初の顧客獲得のために安さで勝負せず実績に見える制作物を用意して送り続け活動量を増やした。

  • FacebookのWeb3コミュニティでも活動し存在を知ってもらう回数を増やした。
  • 断られる回数を増やす発想で行動を止めなかった。
Scale

フロントエンド開発者やプロジェクトマネージャーも雇い体制を広げながら3か月で10社の顧客を獲得した。

3か月で10社の顧客を獲得顧客企業数
3か月獲得期間
  • 顧客地域はドバイ、アメリカ、カナダ、ベルギー、コロンビア、バングラデシュまで広がった。
  • 価値に見合う金額を取る方針のまま獲得を進めた。
Monetize

Index96は安定した収入源になり事業の柱として機能した。

  • ただミゲルはひとつの事業に未来を預けるのは危険だと考えた。
Action

Index96のネットワークを活かしてナイジェリアやコロンビアのデザイナーと採用企業を結ぶ「First Layer」も立ち上げた。

  • ラテンアメリカとアフリカのフリーランスデザイナーとは2020年の契約仕事の頃からつながりを作っていた。
  • 地元での機会不足や人脈不足など実力以外の壁を埋める狙いだった。
Monetize

First LayerはIndex96でのテスト案件とトレーニングを経て企業が直接雇える状態にし月額費用を受け取るモデルを作った。

  • SNSで見つけたデザイナーに対し面接の言葉より実際の仕事で判断した。
  • 報酬は通常の仕事と同じように払った。
  • 企業からは最初の数か月間、育成とマッチングの月額費用を受け取った。
Growth

根性だけで戦う道をやめ好きな方向へ舵を切った結果として年換算で約9,000万円規模(約60万ドル)の売上につながる組織を育て上げた。

年換算で約9,000万円規模(約60万ドル)の売上年換算売上規模
  • デザインの知識と世界中のつながりを武器にした。
  • 道を開けたのは気合ではなく移動と選択だった。

「努力が足りないのかもしれない」。そんな不安を抱えながら、根性や長時間労働を正解のように語る空気に、置いていかれた気持ちになることがある。

コロンビア出身のミゲルも、最初から順調だったわけではない。居場所を失い、収入が途絶え、何度もやり直しを迫られた。ひとりで全部を抱えて、起業そのものが楽しくなくなっていった。

それでも彼は「根性で続ける」道を降り、「好きで続けられる場所」へ移動した。その選択の先で、年換算で約9,000万円規模(約60万ドル)の売上につながる組織を育てていく。何が転機になったのかは、ここから辿れる。

「朝から根性」よりも「好き」を選ぶと道が開ける

SNSの起業家コミュニティをのぞくと、成功のために徹夜で働けとか、何年も先が見えない状態に耐えろとか、そんな話が目につく。もちろん努力は大事だ。でも、消耗戦みたいなやり方だけが正解とは限らない。

コロンビア出身のミゲル・レンヒフォは、そのことを体で学んできた。今はWeb3のデザインスタジオ「Index96」を立ち上げ、世界中のプロジェクトのデザインを手がけている。さらに、ラテンアメリカやアフリカのデザイナーがちゃんと仕事に届くようにする仕組みまで作った。

ミゲルが遠回りしながらたどり着いた結論は、シンプルだ。「根性で続ける」より、「好きで続けられる場所」に移動したほうが、結局は強い。

いじめから逃げるために、パソコン室にこもった

ミゲルが「何かを作って稼ぐ」という考え方を持ったのは、かなり早い。15歳のとき、家族はコロンビアのカリで、裕福な地域へ引っ越した。ところが新しい学校では、家庭の事情が原因でいじめを受けることが増えた。

教室に居場所がなくなったミゲルは、学校のコンピューター室に逃げ込んだ。そこで独学でプログラミングを学び始める。周りの生徒が海外旅行の話をするたびに、「自分には同じチャンスが少ない」と痛感した。だからこそ、手で作れるスキルが欲しかった。

コードを書いている間は、他人の目から少し離れられる。やがてミゲルは学校代表としてプログラミング大会にも出た。奨学金を取り、有名テック企業のインターンの機会もつかむ。

未成年でインターンをしていたことを、ミゲルは後から思い出して笑う。今なら制度的にアウトかもしれない。それに当時の実力も完璧ではなかった。それでも、その経験が次の扉を開いた。

大学をやめて首都へ。チャンスは落ちていなかった

ミゲルは大学を辞め、2013年に首都ボゴタへ移った。だが大都市は、黙っていれば仕事が降ってくる場所ではない。お金はほとんどなく、25人で住む家の小さな部屋で暮らした。雨が降ると部屋に水が入ってくることもあった。

それでも、高校時代のインターン経験を頼りに、人脈づくりとビジネスの勉強を続けた。やがてユニバーサル・ミュージックの現地部門で仕事を得る。コロンビアの有名アーティストを支えるモバイルアプリ開発に関わった。

この頃から、国内で「仕事ができるやつ」と見られ始めた。フリーランスの開発も並行し、アプリ開発が安定した収入源になっていく。

「20分で届ける」コンドーム配達アプリを作った

ところがユニバーサルでの仕事は長く続かない。部署がなくなり、収入は途絶えた。手元に金がない状態に戻った。

そこでミゲルは、2015年に冗談半分で最初の事業を始める。ボゴタのどこにいても、コンドームを20分で届ける配達サービスのアプリだった。

ちょうどその頃、ラテンアメリカではスタートアップ投資が盛り上がり始めていた。2016年、そのアプリが投資家の目に留まり、支援組織から約1,600万円(約10万ドル)を調達する。拠点をチリへ移し、さらに1年ほど開発を続けた。

最初は「他にやることもないし、ダメでもいいからやってみる」くらいの気持ちだった。それが本当に形になった。でも、ネットで「コンドームの人」として知られるのが嫌になった。ミゲルはこの事業を手放す決断をする。

起業に疲れた理由は「全部ひとりで抱える」ことだった

その後ミゲルはコロンビアに戻り、レストラン事業にも関わりながら、フリーランスの開発契約で生活した。だが飲食の現場は、思っていた以上に複雑だった。料理人探し、接客トラブル、日々の細かい問題。神経をすり減らすことが多い。

それでも、人を雇ってチームを回す難しさは学べた。

ただ、ミゲルは次第に「起業そのものが楽しくない」と感じ始める。新しいアイデアを始めるたびに、開発もデザインも営業も経営判断も、全部ひとりでやっていたからだ。ずっと全役割を背負えば、当然燃える。

そこでミゲルは自分を見直し、「自分はコードに寄りすぎていた」と気づく。アプリやサイトで最初に目に入るのはデザインだ。印象を決め、信頼を作る入口になる。ミゲルは方針を切り替え、デザインに100%集中することにした。

大企業の仕事で鍛えられ、Web3に引き寄せられる

次の一手は、自分の事業を無理に回すことではなかった。大きな組織の中でデザイナーとして価値を売る道を選んだ。自己改善の旅のように、インドネシアのバリ島へ移り住んだ時期もある。

実績の見せ方も工夫した。大手向けの制作物を作ったように見せるポートフォリオで売り込み、2020年にデザインコンサルタントとして2社の案件を獲得する。そこから2年間で、より大きな会社で、より上位の役割へ上がっていった。

転機のひとつが、南米の大手EC企業メルカド・リブレでのシニアUXデザイナーの仕事だ。2021年3月から4か月、集中的に経験を積んだ。

同じ頃の2020年、投資先を探してNFTの売買にも挑戦し、Web3の世界に強く惹かれていく。Web3は、ブロックチェーンを土台にした次世代のインターネットの考え方で、暗号資産とも深く関係している。

ミゲルは、Web3で働く人は特に優秀だと感じていた。調べるうちに、情報を分散して持つ仕組みは未来につながり、プロジェクトによっては生活を大きく良くする可能性があると考えるようになる。

また起業したい気持ちは戻ってきたが、大企業の高い報酬にも慣れていた。背中を押したのは、付き合い始めて4か月の恋人のひと言だった。「もっと自由に旅をしたい。一緒に新しいプロジェクトを始めよう」

ミゲルは決めた。フリーランス仲間のネットワークを土台に、Web3アプリのデザインエージェンシー「Index96」を立ち上げる。Web3特化のデザイン会社としては、かなり早い参入だった。

最初の客がいない。だから「断られる回数」を増やした

立ち上げ直後の最大の壁は、最初の顧客をつかむことだった。ミゲルは「安さ」で勝負する気がなかった。価値に見合う金額を取る。そのぶん、最初は余計に難しい。

だからミゲルは、過去と同じ戦い方を選ぶ。実績に見える制作物を用意し、Web3のクリエイターへ送り続けた。FacebookのWeb3コミュニティでも活動量を増やし、「存在を知ってもらう回数」を増やした。

断られるたびに、ミゲルはこう考えた。「次の『はい』に一歩近づいただけ」

行動を止めないまま、フロントエンド開発者やプロジェクトマネージャーも雇い、体制を広げていく。

結果は速かった。3か月で10社の顧客を獲得。地域もドバイ、アメリカ、カナダ、ベルギー、コロンビア、バングラデシュまで広がった。そしてミゲルは、別の可能性にも気づく。

デザイン会社を「採用につながる仕組み」に変えた

Index96は安定した収入源になった。ただミゲルは、ひとつの事業に未来を預けるのは危険だと思っていた。

ミゲルは2020年に契約仕事をしていた頃から、ラテンアメリカとアフリカのフリーランスデザイナーとつながりを作っていた。Index96を始めた後、そのネットワークを活かして別の組織「First Layer」も立ち上げる。ナイジェリアやコロンビアのデザイナーと、採用したいスタートアップを結びつける仕組みだ。

アフリカやラテンアメリカには優秀なデザイナーが多い。だが地元では、仕事のチャンスが少ないこともある。人脈が足りない。ポートフォリオの作り方が分からない。相談できるメンターがいない。実力とは別のところで、仕事に届きにくい壁がある。

企業側も同じだ。信頼できるフルタイムのデザイナーを雇いたいのに、どこで探せばいいか分からない。そこでFirst Layerが、候補者を見つけ、育て、企業へつなぐ役割を担う。

ミゲルはSNSでデザイナーを見つけたあと、品質を確かめるためにIndex96でテスト案件を依頼する。面接の言葉より、実際の仕事で判断する。報酬も通常の仕事と同じように払う。数か月のトレーニングを経て、企業が直接雇える状態にする。企業からは最初の数か月間、育成とマッチングの月額費用を受け取る。

暗号資産が落ちても、Web3は終わらないのか

2022年後半、暗号資産市場は大きく落ちた。Web3への不安も強まった。それでもミゲルは、手応えを失っていない。暗号資産の成功や失敗とは別に、Web3そのものは続くと見ている。

むしろ今の調整は、関わる人が増えすぎる前に学び直す機会だと捉えている。影響を強く受けているのは主に技術業界で、ここから何が悪かったのかを理解し、改善していく段階だという。

苦しい起業家へのメッセージ

最後にミゲルのメッセージは明快だ。

「儲かりそうだから」「誰かがやっているから」という理由で選ぶと、途中で苦しくなる。好きで続けられるものを軸にしたほうがいい。

みんなと同じものを追いかけるほど、目立つのは難しくなる。好きなことを軸にすると、学び続けやすい。経験が積み上がる。やがてそれが仕事になり、成果になる。

ミゲルは「根性」だけで戦う道をやめた。好きな方向へ舵を切った。その結果、デザインの知識と世界中のつながりを武器に、年換算で約9,000万円規模(約60万ドル)の売上につながる組織まで育て上げた。

道を開けたのは、気合ではなく、移動と選択だった。