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移民家庭育ちの無名会社員が「有料のInstagram」を夜と週末だけで作り続けた結果、登録者50万人。クリエイターに3億7,000万円を払った“直接課金”の全戦略

7 min read2026年3月30日
移民家庭育ちの無名会社員が「有料のInstagram」を夜と週末だけで作り続けた結果、登録者50万人。クリエイターに3億7,000万円を払った“直接課金”の全戦略

ビジネス概要

事業タイプ

Marketplace

フェーズ

拡大期

規模感

5年で登録者50万人規模

概要

クリエイターがファンから月額課金や限定コンテンツで直接収益を得られるプラットフォーム。

ターゲット

SNSでコンテンツを発信する個人クリエイターの本人

主な打ち手

アプリではなく決済手数料を抑えやすいウェブから開始し、フォロワーの多いクリエイターへ直接DMして初期導入を作った。

30秒で分かる

1会社員の開発者がTipSnapsで5年50万人。

クリエイターに約3億7,000万円を支払い

取引ごとに手数料10%で運営

2狙いは「宣伝だけ」を終わらせる。

企業に「無料で」と言われやすい

立場が弱い人ほど不利になりやすい

32016年に「有料のInstagram」にした。

短い無料と有料の壁を作った。

ファンが月に数ドル払う形に寄せた。

4最初はアプリでなくウェブにした。

決済手数料が重くなるのを避けた。

フォロワーの多い人へ直で口説いた。

初年で登録者10万人まで伸びた。

5勝ち筋は決済と一般向けの設計。

不正リスクで決済導入が難しかった

決済会社を複数組み合わせて対応

OnlyFansではなく一般向けに絞った

手数料10%でも残りは約5%

6この話の核心は「称賛より直接の支払い」だ。

広告中心のSNSだけでは生活費になりにくい。

ファンからすぐ届く仕組みが収入を変えた。


ストーリーの流れ

Problem

クリエイターが「宣伝になるから無料で」と言われ収入に結びつきにくい不公平が残っていた。

  • 宣伝だけでは家賃や食費を払えず生活を支えるにはお金が必要だった。
  • 立場が弱い人ほど低く見積もられやすい状況に巻き込まれやすかった。
Insight

不利な立場に置かれやすい人が努力しても報われにくい現実を変えたいという思いが核になった。

  • リオネル・ドゥジェはハイチから移住した両親の働き方を見てもっと稼げる道を探した。
  • 大企業でキャリアを重ねても少数派が見落とされやすい現実への問題意識が消えなかった。
Problem

会社ではアイデアを出しても止められ続け自分で作るしかないと腹を決めた。

  • Spotify登場時に対抗サービスを提案しても「余計なことをするな」と言われた。
  • 夜と週末を使って少しずつ形にし始めた。
Insight

企業ではなくファンが支える「有料のInstagram」という発想に到達した。

2016年発想の起点
  • 人気クリエイターが多くてもきちんと稼げているのは一部に限られていた。
  • 少数派のクリエイターは見つけてもらいにくく企業案件も一握りに偏りがちだった。
  • 無料の世界に「ここから先は有料」の壁を設け限定コンテンツを見たい人だけが払う形を描いた。
Action

アプリではなくスマホで使いやすいウェブサイトとして立ち上げた。

  • アプリだと決済手数料が重くなり少額をたくさん回すモデルでは致命傷になりかねなかった。
  • フォロワーの多いクリエイターに直接メッセージを送り無料で始められることと収入につながることを説明して回った。
Growth

口コミで広がり最初の1年で登録者が10万人に達した。

最初の1年で登録者は10万人初期登録者規模
  • 最初に動いたのはフォロワー100万人以上のフィットネストレーナーだった。
  • ファンの中のクリエイターにも話が伝わり「本当に稼げるのか」という関心が連鎖した。
Problem

サービス拡大のボトルネックとして決済の仕組み作りが大きな壁になった。

  • 多くの決済会社は新しいモデルに慎重で申し込み手続きも長かった。
  • サブスクや投げ銭はネット通販より不正利用が起きやすいとされていた。
Action

導入しやすい決済を選びつつ複数の決済会社を組み合わせてリスク分散した。

  • 盗まれたカードで使われやすい面があるという前提で運用設計を進めた。
Monetize

クリエイター売上から10%の手数料を取りつつ運営が成立するモデルを置いた。

手数料10%プラットフォーム手数料
  • 手数料のうち半分ほどは決済会社に渡りTipSnaps側に残るのは約5%だった。
  • 人数が増えればわずかな割合でも大きな金額になると捉えた。
Insight

OnlyFansやPatreonと異なり一般向けで「普通の人」が迷わず収益化できる場所を狙った。

  • TipSnapsは大人向けではなく一般向けでいく方針を決めていた。
  • ネットに慣れた一部の層向けに見えがちな既存サービスと違う立ち位置を選んだ。
Monetize

登録者30万人規模になった2019年にプラットフォーム改善のため資金が必要になった。

登録者が30万人規模資金需要の発生点
2019年資金調達フェーズ
  • 友人や家族だけでは足りず資金調達を学んで投資家に会いに行った。
  • 多くの投資家は相手にしなかったが最終的に3人のエンジェル投資家から小さな資金を得た。
Insight

評価されない経験が少数派が見落とされやすい構造への確信を強めた。

  • 同じ分野の会社が大きな資金を集める一方で実績があっても真剣に見てもらえない感覚が残った。
  • 称賛ではなく直接お金が届く仕組みが必要だという考えが固まった。
Growth

収益化が弱かった分野を成長余地として見込み設計を組み立てた。

  • 黒人の髪や美容、コメディ、料理、子どものインフルエンサーなど視聴者が多いのにお金が回りにくい領域に注目した。
  • 短い動画は無料で公開し長い解説や特別版を有料にする形を想定した。
Action

新機能TipPoolsとしてファンが先にお金を集め目標達成で特別コンテンツにアクセスできる仕組みを開発した。

  • 企画するのがクリエイターではなくファン側である点を特徴にした。
  • 支払った人だけがコンテンツにアクセスできる形にした。
Scale

TipSnapsは5年で登録者50万人規模に成長しクリエイターに合計約3億7,000万円を支払ってきた。

登録者50万人規模登録者規模
合計約3億7,000万円($2.5 million)クリエイター支払い総額
  • 大手SNSの広告収益がコンテンツ制作者に十分還元されないことへの対案として直接収益化の道を用意した。
  • 才能と努力がきちんとお金に変わる公平な土俵を目指した。

「宣伝になるから無料で」。そんな言葉に、クリエイターが立ち止まってしまう瞬間がある。

名前は広がるかもしれない。でも、宣伝だけでは家賃も食費も払えない。頑張っても収入に結びつきにくい不公平が、当たり前のように残っていた。

その現実を変えたい。努力がそのまま収入につながる道を増やしたい。そうして生まれたTipSnapsは、5年で登録者50万人規模に成長し、クリエイターに合計約3億7,000万円($2.5 million)を支払ってきた。

「宣伝になるから無料で」と言われる現実

クリエイターが企業からこう言われることがある。「お金は出せない。でも宣伝になる」。

たしかに名前は広がるかもしれない。でも宣伝だけでは家賃も食費も払えない。生活を支えるには、きちんとお金が必要だ。

しかも、立場が弱い人ほどこうした状況に巻き込まれやすい。たとえば黒人インフルエンサーは、同じ仕事でも低く見積もられやすいと言われてきた。頑張っても収入に結びつきにくい。そんな不公平が当たり前のように残っていた。

この現実を変えたい。努力がそのまま収入につながる道を増やしたい。そう考えて生まれたのがTipSnapsだった。

リオネルの原点は、家族の働き方にあった

TipSnapsを作ったのはリオネル・ドゥジェだ。

両親はハイチからアメリカに移住してきた。勉強もしていた。それでも条件のいい仕事にはなかなか届かなかった。父は整備士として働き、母は小売店で立ち仕事を続けた。

リオネルは思った。「家族のために、もっと稼げる道を見つけたい」。

工学の学位を取り、大企業で経験を積む。ソニー、バイアコム、ESPN、ジョンソン・エンド・ジョンソン。昼間はプロダクト管理の仕事をこなしながら、名だたる企業でキャリアを重ねた。

それでも心のどこかに、消えない思いがあった。自分と同じように、最初から不利な立場に置かれやすい人たちがいる。努力しても報われにくい人たちがいる。その現実を変えたい、という思いだった。

流行を読めても、会社では止められる

リオネルは早い段階から「次に何が来るか」を読む嗅覚を持っていた。

Spotifyが登場した頃、ソニーに提案したことがある。「対抗できるサービスを作るべきだ」。

しかし返ってきたのは冷たい言葉だった。「余計なことをするな」。

それからも、アイデアを出すたびに止められることが続いた。リオネルの中で何かが固まっていく。

だったら、自分で作るしかない。

夜と週末を使って、少しずつ形にしていった。

2016年の夜、「有料のInstagram」を思いつく

2016年のある夜、リオネルはInstagramを眺めていた。

人気のあるクリエイターはたくさんいる。でも、きちんと稼げているのは一部だけ。特に少数派のクリエイターは見つけてもらいにくく、企業案件を取れるのもやり方を知っている一握りに偏りがちだった。

そこでリオネルは発想を転換した。企業ではなく、ファンが支える形にできないか。

ファンのほんの一部が月に数ドルでも払えば、クリエイターは生活を支えられるかもしれない。

発想はシンプルだった。無料で見られる世界に「ここから先は有料」という壁を設ける。限定コンテンツを見たい人だけが払う。いわば「有料のInstagram」だ。

アプリではなく、まずウェブで始めた

TipSnapsは最初、スマホで使いやすいウェブサイトとして作られた。

理由は現実的なものだった。アプリにすると決済手数料が重くなりやすく、取引のたびに大きな割合を取られる可能性がある。少額をたくさん回すモデルでは、それが致命傷になりかねない。

立ち上げ方も地道なものだった。リオネルはフォロワーの多いクリエイターに直接メッセージを送り、「無料で始められる」「収入につながる」と一人ひとりに説明して回った。

最初に動いたのは、フォロワー100万人以上のフィットネストレーナーだった。

そこから口コミで広がり始める。ファンの中にもクリエイターがいて、「それ何?」「本当に稼げるの?」と話が伝わっていった。最初の1年で登録者は10万人に達した。

決済は、想像以上に高い壁だった

サービスを広げるうえで、決済の仕組み作りは大きな壁になった。

多くの決済会社は新しいモデルに慎重で、申し込みの手続きも長い。

理由もある。クリエイター向けのサブスクや投げ銭は、ネット通販より不正利用が起きやすいとされる。物が届く買い物と違い、デジタルの支払いは盗まれたカードで使われやすい面があるからだ。

リオネルは導入しやすい決済サービスを選びながら、リスクを分散するために複数の決済会社を組み合わせる形で対応していった。

手数料10%でも、積み上がると強い

TipSnapsは、クリエイターの売上から10%を手数料として受け取る。

ただし、そのうち半分ほどは決済会社に渡るため、TipSnaps側に残るのは約5%だ。

数字だけ見ると小さい。でも市場は大きい。フォロワー100万人のクリエイターなら、数万人が登録して支える可能性がある。人数が増えれば、わずかな割合でも大きな金額になる。

OnlyFansやPatreonとは、狙う場所が違う

似たサービスが増え、競争が気になる時期もあった。OnlyFansも勢いを増していく。

ただ、リオネルは方向性を決めていた。TipSnapsは大人向けではなく、一般向けでいく。

Patreonも老舗だが、ネットに慣れた一部の層向けという印象が強い。もっと「普通の人」が迷わず使えて、収益化できる場所を作りたい。それがTipSnapsの狙いだった。

インターネット上のクリエイターは何億人規模とも言われ、子どもの夢が「医者」や「弁護士」ではなく「YouTuber」や「インフルエンサー」になる時代になってきた。

資金集めは冷たく、小さな一歩から始まった

2019年、登録者が30万人規模になった頃、プラットフォームを改善するための資金が必要になった。

友人や家族だけでは足りない。リオネルは資金調達を学び、投資家に会いに行くようになった。

しかし多くの投資家は相手にしなかった。それでも動き続け、最終的に3人のエンジェル投資家から小さな資金を得ることができた。

「評価されない」経験が、確信に変わる

投資家とのやり取りは、リオネルに苦い感覚を残した。

同じ分野の会社が大きな資金を集める一方で、実績があっても真剣に見てもらえない。そこには、少数派が見落とされやすい構造があるのではないか。そう感じた。

そして思いはより強くなる。トレンドを作っているのに正当に扱われないクリエイターがいる。称賛されるだけでは生活は変わらない。必要なのは賞賛ではなく、直接お金が届く仕組みだ。

伸びるのは、「見過ごされてきた分野」

TipSnapsが成長の余地を見込むのは、これまで収益化が弱かった分野だ。

黒人の髪や美容、コメディ、料理、子どものインフルエンサー。こうした領域は視聴者が多いのに、お金が回りにくいことがある。

たとえば黒人の髪や美容の動画チャンネルはたくさんある。でも登録者が50万人いても、企業案件がなければ収入が少ないケースがある。

そこでTipSnapsの設計はこうなる。短い動画は無料で公開し、長い解説や特別版は有料にする。ファンの1%が月に約1,500円($10)払うだけでも、収入は大きく変わる可能性がある。

新機能TipPoolsは、ファンが先にお金を集める

リオネルは次の展開としてTipPoolsも開発した。

ファンが先にお金を出し合い、目標金額が達成されたら特別なコンテンツを見られる仕組みだ。ユニークなのは、企画するのがクリエイターではなくファン側という点で、支払った人だけがコンテンツにアクセスできる。

「今すぐ直接」お金が届く世界へ

TipSnapsは5年で登録者50万人規模に成長し、クリエイターに合計約3億7,000万円($2.5 million)を支払ってきた。取引ごとに10%の手数料を取りながら運営している。

大手SNSは広告で大きく稼ぐ。しかしそのお金が、コンテンツを作る人に十分還元されないことも多い。

だからこそ、クリエイターがすぐに、直接収益化できる道を用意したい。TipSnapsが目指すのは、才能と努力がきちんとお金に変わる、公平な土俵を作ることだ。