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「Slack通知は便利だが、ただの応急処置だった」無料1,200人→月200イベント上限で28%が有料化した設計

7 min read2026年2月27日
「Slack通知は便利だが、ただの応急処置だった」無料1,200人→月200イベント上限で28%が有料化した設計

ビジネス概要

事業タイプ

SaaS

フェーズ

拡大期

規模感

無料ユーザー約1,200人(2022年4月の本格公開時)

概要

特定ユーザーのサービス内行動を時系列で追えて、つまずきの原因特定とサポート対応をしやすくするツール。

ターゲット

自社サービスのカスタマーサポート/運用を行う事業者(プロダクト担当者)

主な打ち手

検索で拾われる具体的な技術疑問に答える記事を、言語違いなどで量産して流入を増やし、無料プランに月200イベント上限を置いて段階的な有料移行を促した。

ストーリーの流れ

Problem

カスタマーサポートでユーザーがどこでつまずいたか分からないまま離脱する問題が残り続けていた。

  • 通知で異常に気づけても前後の流れが見えず原因に届かない不安が消えない状況だった。
Insight

SlackやDiscordへの通知は便利だが応急処置であり時系列の文脈と安全性が欠けると分かった。

  • 単発の出来事は分かってもその前後の行動や迷いの長さが追えなかった。
  • メッセージアプリに情報を置くことで第三者に見られるリスクも残った。
Problem

航空マーケットプレイスCheckrideではITに慣れない利用者が簡単なつまずきで離脱し致命的になっていた。

  • パスワード再設定が分からないだけで数分で帰ってしまう人がいた。
Insight

特定の1人のユーザー行動をサービス内で時系列に追える道具が必要だと定まった。

  • 注文やDB更新のような細かいイベントをリアルタイムで追う既存分析ツールは苦手なものが多かった。
  • 安全で細部まで分かる形で行動を追えることが条件になった。
Action

この穴を埋めるためにLogSnagの試作品を作り反応で確信した。

  • 2022年1月に最低限の仕組みを作り友人や知り合いから「欲しい」という反応を得た。
Growth

紹介ページ投稿で公開直後に無料登録が急増し需要を実証した。

2日で320人が無料登録初期需要の証明
  • 掲示板などに投稿すると短期間で反応が集まった。
Action

Checkrideの運営を最小限にしてLogSnagへ集中する意思決定をした。

  • 2022年1月末に情熱が続かないと判断し早めに見切りをつけた。
Growth

掲示板やSNS中心の集客は顧客層とズレると見極め検索流入に軸足を移した。

  • 開発者や起業家が中心で規模も小さく狙いと合いにくかった。
Action

仕組みで記事を大量生成し検索されやすい疑問に答えるSEOを実装した。

  • コード例つきで具体的な記事を増やし同内容を別言語向けに作り変えてページ数を増やした。
  • 質問サイトのような別サービスも用意しAIがコードの質問に自動で答える仕組みを作った。
Growth

本格公開のタイミングで無料ユーザーが拡大し次の課題が有料化に移った。

無料ユーザーが約1,200人無料利用の拡大
2022年4月本格公開
  • 2022年4月の本格公開ころには検索の入り口が広がっていた。
Problem

最大の競合は高機能ツールではなく無料で導入が簡単なメッセージアプリ連携だった。

  • 無料が当たり前の世界でSlack通知以上の理由がないと支払いに至らない状況だった。
Monetize

無料プランに上限を置き使用量に応じて段階的に上位プランへ移る設計に作り直した。

  • 無料プランには月200イベントの上限を置きもっと使いたい人が自然に上へ進む形にした。
  • 上限に当たることで必要性がはっきりするようにした。
Monetize

上限到達者の有料転換が起きやすくなり支払いの理由を作れた。

上限に達した人のうち、上位プランへ移った割合は28%上位プラン転換率
  • 利用開始から約2か月で有料に移る人が出やすくなった。
Insight

LogSnagの核として「1人の行動を流れで追う」ジャーニートラッキングを中心概念に据えた。

  • 問題が起きた場所だけでなく前後の流れが見えることで原因を探しやすくサポートもしやすくなる狙いだった。
Insight

作りすぎは重く市場投入を遅らせるため早く出して短い周期で学ぶ重要性を得た。

  • 多端末対応が重く1人でやるには負荷が高かった。
  • 市場に出すまで4か月かかり本来は1〜2週間で反応を見て直したかった。

ユーザーがどこでつまずいたのか分からない。気づいたときには、もう離脱している。カスタマーサポートの現場には、そんなもどかしさが残り続けていた。

SlackやDiscordに通知を飛ばせば、とりあえずは見える。けれど、それは「応急処置」に近い。前後の流れが分からないままでは、本当の原因に届かない不安が消えない。

その穴を埋めるために作られたのがLogSnagだ。公開直後から反応は集まり、2日で320人が無料登録。さらに2022年4月の本格公開時には無料ユーザーが約1,200人まで増えていく。ただし、次の壁ははっきりしていた。無料に慣れた人たちに、どうやって「払う理由」を作るのか。

無料の応急処置で稼げないなら、ちゃんとした道具を作る

絆創膏は傷を隠せても、原因そのものは直せない。カスタマーサポートの現場でも、同じことが起きていた。

サービスの中でユーザーが何をしたかを知りたい。トラブルが起きた瞬間に気づきたい。なのに、よくあるやり方は「SlackやDiscordに通知を飛ばす」だけ。便利に見えて、肝心なところが見えない。

この穴を埋めようとして、シャヤン・タスリムはLogSnagを作った。ユーザーの行動を安全に、分かりやすく、流れで追えるサービスだ。

開発は順調だった。反応も良かった。最初から売上も出た。けれど本当の勝負は別にあった。無料に慣れた人たちに、どうやってお金を払ってもらうか。そのために、誰に売るか、値段をどうするかを何度も作り直すことになる。

「パスワードが分からない」で消えていく人たち

シャヤンは2020年にコンピュータサイエンスを学んで卒業し、その後は政府系の仕事で開発をしていた。2021年9月に退職し、自分のプロダクトで勝負する道を選ぶ。

最初に作ったのは航空分野のマーケットプレイス「Checkride」。アメリカで飛行訓練を受けたい人と、教官や試験官をつなぐサービスで、2021年12月に公開した。

航空の訓練や資格には大きなお金が動く。だから、ユーザーが途中で離脱するのは致命的だった。

ところが現実は厳しい。利用者の多くはITに慣れていない。「パスワードの再設定が分からない」だけで、数分で帰ってしまう人がいた。

もし、どこでつまずいたかをすぐに見つけられたらどうなるか。電話をする、案内を送る、手助けできる。シャヤンはユーザー行動をリアルタイムで追う方法を探し始めた。

Slack通知は便利だが、ただの応急処置だった

最初に試したのは、Discord、Slack、Telegramといったメッセージアプリへの通知だった。APIでイベントを送るだけ。導入も簡単で、しかもほぼ無料。

でも、これは応急処置にすぎなかった。

たとえば「ログインに失敗した」という1回の出来事は分かる。でも、その前に何をしていたのか、どれくらい迷っていたのか、その後どうなったのか。流れが見えない。

さらに、メッセージアプリに情報を置く以上、第三者に見られるリスクもある。サポートのために集めたデータで、プライバシーを壊すわけにはいかない。

シャヤンが欲しかったのは、特定の1人のユーザーについて、サービス内の行動を時系列でまとめて追える道具だった。しかも安全で、細かいところまで分かるもの。

分析ツールは世の中にたくさんあるが、注文やDBの更新のような「細かいイベント」をリアルタイムで追うのは苦手なものが多い。ならば、自分で作るしかない。そうしてLogSnagの方向が決まった。

まず試作品を作り、反応で確信する

2022年1月、シャヤンは必要な条件を満たす最低限の仕組みを作った。友人や知り合いに見せると、手応えは強かった。「これ、欲しい」という反応が返ってきた。

紹介ページを作って掲示板などに投稿すると、2日で320人が無料登録した。

シャヤンは2022年1月末、Checkrideの運営を最小限にしてLogSnagに集中する。航空コミュニティとの関わりは深かったが、情熱が続かないと判断した。続けられない事業は、いつか止まる。早めに見切りをつけた。

こうして、公開しながら作り続け、数か月で利用者と売上を伸ばしていく。

変わったSEOで、必要な人に見つけてもらう

掲示板やSNSで「作っている途中」を見せる方法も試した。だが、そこに集まるのは開発者や起業家が中心で、規模も小さい。狙っている顧客層と少しズレていた。

そこで効いたのが検索だった。

シャヤンはCheckrideのときから「仕組みで記事を大量に作る」方法を使っていた。地域ごとの飛行学校リストのようなページを作り、月700件ほどの登録につなげた経験がある。

LogSnagでも同じ考え方で攻めた。たとえば「PHPでメモリ使用量をどう追うか」のように、具体的で検索されやすい疑問に答える記事を増やした。しかも、コピーして使えるコード例つき。

さらに、同じ内容を別のプログラミング言語向けに作り変え、1本の記事から20本以上のページを作る形にした。

加えて、質問サイトのような別サービスも用意し、コードの質問にAIが自動で答える仕組みも作った。短期間でページが増え、検索で見つかる入り口が一気に広がった。

結果、2022年4月に本格公開するころには、無料ユーザーが約1,200人まで増えていた。

次の壁ははっきりしていた。無料の人たちに、どう支払ってもらうか。

無料に慣れた人たちに、払う理由を作る

LogSnagの競争相手は、別の会社の高機能ツールだけではない。もっと強い敵がいた。「無料で、導入が簡単」なメッセージアプリ連携だ。

無料が当たり前の世界で、わざわざお金を払うには理由がいる。最低でも、Slack通知でできること以上を提供しないといけない。

試行錯誤の末に効いたのは、使った分に応じて上のプランへ移る仕組みだった。

多くの人は、いきなり高いプランを選ばない。まず無料で試す。だから無料プランには月200イベントという上限を置いた。もっと使いたい人は、段階的に上のプランへ進む。

上限に当たると必要性がはっきりする。結果として、利用開始から約2か月で有料に移る人が出やすくなった。上限に達した人のうち、上位プランへ移った割合は28%だった。

無料の応急処置ではなく、ちゃんとした道具にお金が払われる形が、ここで見えた。

LogSnagの中心にある「1人の行動を流れで追う」発想

LogSnagの核は「ジャーニートラッキング」という考え方だ。

特定の1人のユーザーが、サービスの中で何をしたか。最初から最後まで、時系列で追えるようにする。問題が起きた場所だけでなく、その前後の流れが見える。だから原因を探しやすいし、サポートもしやすい。

今後は、メールの自動化や、見やすい分析画面の強化も足していく計画だった。

作りすぎのリスクと、「早く出す」ことの重さ

シャヤンは成果に手応えを感じつつも、最初のプロジェクトは大きすぎたとも振り返っている。

Android、iOS、デスクトップ、Mac、Windows、いろいろなブラウザ。対応するだけでも大変で、作って、動かして、試す必要がある。1人でやるには重い。

市場に出すまで4か月かかった点も、理想とは違った。本当は1〜2週間で出して、反応を見て直したかった。

学びはシンプルだ。早く作って、早く試して、早く失敗から学ぶ。同じ要望が何度も出るなら、それは足すべき機能の合図になる。

短い周期でユーザーの声を集めること。それが、サービスを強くする一番の近道になる。