小さな会社にとって、採用はいつも怖い。いい人を迎えたいのに、固定給を払い続けられる確信がない。もし合わない人を入れてしまえば、時間もお金も一気に消えてしまう。
それでも事業は前に進めたい。広告に大金をかける余裕もない。成果が出るまで耐える時間が長いほど、不安は大きくなる。
南アフリカのデジタルマーケティング会社Wowwは、そんな状態から出発し、「成果に応じて分ける」仕組みで採用のリスクを下げていった。少しずつ積み上げた工夫が、やがて会社の文化になっていく。
予算が少なくても優秀な人を採用する方法
お金に余裕のない小さな会社にとって、採用はこわい。いい人を雇いたい。でも正社員の給料を払い続けられる自信がない。しかも、チームに合わない人を入れてしまうと、時間もお金も一気に消える。
だから大事なのは、スキルだけでなく「この会社の目標に本気で乗れる人」を見つけることになる。気持ちが合わないと、最初は頑張れても途中で失速する。小さな会社ほど、その失速を取り返す体力がない。
南アフリカのデジタルマーケティング会社Wowwは、この壁を工夫で越えてきた。
Wowwが始まった日
Wowwは、会社や店がネットで成長するのを助けるチームだ。見やすくて速いサイトを作り、検索で見つけてもらえるように整え、デザインや文章、動画までまとめて支える。高品質なサービスを、できるだけ手の届く形で出す。それが目標だった。
創業者フェリックスは、大学でコンピューターやゲームデザインを学びながら、学生のころからサイト制作でお金を稼いでいた。卒業して考えた。「これ、仕事としてやっていける」。そして2016年、ひとりでWowwを立ち上げた。
最初の仕事は身近なところから始まった。父親のためのサイトを作った。それが実績になり、紹介が紹介を呼んで、少しずつ客が増えていった。
当時のフェリックスは、起業家が集まって暮らすシェアハウスのような場所に住んでいた。家賃を割り勘にして、それぞれが自分の事業を育てる。Wowwもまだ「会社」というより、ほとんどフリーランスだった。
ガーネットとの出会いで、会社が形になる
ある日、その家にガーネットがやって来た。話してみると、ガーネットは前の職場に強い不満を抱えていた。仕事の多くを背負っているのに、上司はあまり働かない。給料もボーナスも上がらない。そんな状況だった。
一方のフェリックスにも弱点があった。事業をちゃんとした会社にしたいのに、お金の管理が得意ではない。会計、税金、事務。どれも自信がなかった。
ガーネットは金融や、小さな会社を伸ばす仕事の経験がある。気づけば2人は、互いの足りない部分を埋め合える関係になっていた。
ただ、問題がひとつあった。フェリックスには、ガーネットに高い固定給を払う余裕がない。そこで2人は別の約束をする。「利益を分けよう」。会社が育てば、2人とも報われる。今は耐えて、未来を取りにいく。そう決めてパートナーになった。
広告に金を使えないなら、時間で勝つ
2人になったWowwが最初に選んだ作戦はシンプルだった。広告に大金を突っ込むのは無理。だから、検索で見つけてもらう力を育てる。
広告はお金を払えば早い。だが資金がいる。検索で上位に出る工夫は時間がかかる。けれど積み上がると、簡単には崩れない武器になる。
Wowwはコツコツ続けた。南アフリカで特定の検索語で上位に入り、ついには1位まで取った。時間を味方にした結果だった。
採用がこわい。本当に稼いでくれるのか分からない
検索での集客は、成果が出るまでに時間がかかる。つまり最初のWowwはずっと資金がきつい。人を増やしたいのに、高い給料が払えない。
しかも、採用には別のこわさがある。高い給料を求める人を雇っても、その人が本当に売上につながる働きをするかは分からない。もし外したら、会社が沈む。借金して雇うのは、できれば避けたい。
採用の失敗は、期待したレベルの仕事ができないことから起きやすい。Wowwはそこを正面から見た。そして、発想を変えた。
「成果で分ける」仕組みが生まれる
Wowwが考えたのは、会社に生み出した価値に合わせて報酬を増やすやり方だった。フェリックスとガーネットが最初に交わした「利益を分ける」という約束。それを、チームにも広げた形になる。
Wowwでは、会社が得た売上のうち大きな割合を、成果に応じてチームに分ける。価値を生み出せば、その分だけ報われる。逆に、成果が出ないなら、会社の負担がふくらみすぎない。
偶然の会話から生まれた工夫だったが、いつの間にか会社の中心の考え方になった。「会社が伸びれば、チームも伸びる」。その文化が根っこに残った。
成果だけにしない。安心できる土台も作る
会社が少しずつ安定してくると、Wowwは仕組みを改良した。成果だけに頼るのではなく、基本給も用意するようになった。
基本給があると、病気で休むときや休暇を取りたいときでも、収入がいきなり不安定になりにくい。安心できるから、入社のハードルも下がる。
ただし成果の上乗せは残す。スキルを伸ばす、効率を上げる、工夫する。その動機が消えない。長く働くほど基本給が上がる仕組みも作り、定着につなげた。
若手が早く評価される
この仕組みの強さは、結果を出す人を早く評価できる点にもある。
たとえば開発の仕事は、年数が長いほど給料が上がる会社が多い。だがWowwでは、「会社に価値を生み出せる」と示せば、経験年数が短くても評価されやすい。若手にとっては、成長のスピードが上がる環境になる。
働き方に余白ができる
Wowwは働く時間にも自由度を持たせた。最低限の労働時間は決める。そのうえで、もっと働いて収入を増やすか、生活とのバランスを優先するかを選べる。
音楽活動を大事にする開発者もいる。ツアーやバンドを続けながら、安定した収入もほしい。その人は、会社員の安定とフリーランスの自由の両方に近い形で働けている。
利益を最大化するより、チームに返す
この成果連動の仕組みは、誰もが褒めるわけではない。外部の専門会社に業務の流れを点検してもらったとき、「この仕組みをやめれば利益はもっと増えるかもしれない」と言われた。
それでもフェリックスとガーネットは、チームへの還元を選んだ。成功を分け合う方が、やる気が続く。辞める人が減る。結果として強いチームが残る。業界の中でも定着率が高いことを、仕組みの強みだと考えた。
南アフリカから世界へ
Wowwは創業から数年で毎年大きく成長した。外部の投資を受けず、2人の持ち分を守ったまま伸ばしてきたのも特徴だ。
新型感染症が広がったときは、さすがに苦しかった。契約を止めたり休んだりする客も出て、厳しい話し合いが続いた。
だがその後、流れが変わる。オンライン集客の重要さに気づく会社が一気に増えた。仕事が次々に入った。その年は過去最高の売上になった。
同時に、リモートで仕事を進める形も当たり前になった。オンライン会議に慣れた客が増え、遠隔のチームでも問題なく回る。Wowwはオフィスを手放し、海外展開に力を入れやすくなった。
次の目標は、海外比率を上げること
Wowwは毎月多くの客と仕事をしている。国内案件も海外案件もある。これからは海外の割合を増やし、チームもさらに大きくする計画だ。毎月安定して入る売上も増やしたい。
成長のために大事だと考えている判断軸が4つある。人、戦略、実行、お金の管理。文化や価値観、必要な人材がそろったら、次は戦略と実行の精度を上げていく。
さらに、国によるコストの差も生かす。強い経済圏の客から収入を得て、比較的コストの低い場所で運営する。そうすれば競争力が上がる。
南アフリカの強みで戦う
外注先として人気の国は他にもある。だが南アフリカには別の強みがある。ヨーロッパやイギリスと時差が近い。英語でのやり取りもしやすい。時差や言葉の壁が小さいと、仕事は速く進み、客も安心する。
値段が極端に安いわけではない。それでもヨーロッパの制作会社と比べると、コスト面で有利になりやすい。高い品質を、競争力のある価格で出せれば、会社の利益も伸びるし、チームの生活も良くなる。Wowwはそこに大きなチャンスがあると見ている。
まとめ
- 予算が少ない会社ほど、採用の失敗が致命傷になりやすい
- Wowwは「成果に応じて分ける」仕組みで、採用のリスクを下げた
- 会社の成長をチームに返す文化が、やる気と定着を支えた
- リモート化と海外展開で、南アフリカの強みを生かして世界を狙っている
