解雇や交通事故は、どちらも生活の基盤を一気に揺るがす出来事だ。
看護師として働いていたリア・ゴンザレスも、その連続に直面した。心身がすり減り、次の職場に応募することすら怖い。けれど止まれない現実の中で、彼女は「働き方そのもの」を作り替えていく。
最初は自分の手で回していた仕事は、やがて人を育て、任せ、つなぐ事業へ。リアが何を捨て、何を掴んだのか。
解雇と事故が、人生のハンドルを切らせた
リア・ゴンザレスは、最初から起業家になりたかったわけではない。
看護師として働いていたが、職場の空気は重く、心も体もすり減っていった。ある日、仕事を失う。次の職場を探す道もあった。でもリアは、応募して落ちることが怖かった。もう一度あのしんどさに戻るのも怖かった。
「会社を作ろうと思って始めたわけではなく、必要に迫られて始めたのです」
リアの起業は、夢からではなく、現実から始まった。
得意なことを、お金に変える方法を見つけた
リアは整理整頓が得意だった。細かいミスにもよく気づく。周りを見渡すと、忙しい人ほど「本当にやるべき仕事」に集中できず、メール返信や予定調整といった細かい作業に追われていた。
なら、自分がそこを引き受ければいい。
リアは、離れた場所から事務作業を手伝う仕事を始めた。具体的にはこんな内容だ。
- メールの送信や返信の下準備
- 連絡の催促や確認
- データ入力
- 予定調整と会議の設定
- 事務用品の注文
派手ではない。でも、こういう仕事があるから会社は回る。
看護師に戻らない選択は、結果として収入につながっていった。
「全部自分でやる」を捨てるのが、次の壁だった
仕事が増えると、リアは気づく。一人で抱え込むほど、伸びしろが消えていく。
リアは相談相手を見つけ、料金を払って助言を受けた。数か月先の動きを整理して、事業をどう広げるかを一緒に考えてもらうためだ。
そこで一番変わったのは考え方だった。
仕事が増えたら、誰かを雇って任せる。自分が全部やらない。そうしないと、事業は大きくならない。
リアはさらに、外出先でも対応できる公的書類の手続き代行なども学び、できることの幅を広げていった。
「リアに頼みたい」という状態を超えるには、人を育てるしかない
ただ、リアには不安があった。
「依頼が来るのは、私だからではないか。人を増やしても意味がないのではないか」
その不安に対して、助言者はこう言った。
「なら、リアみたいに動ける人を何十人も作ればいい。教えればできる」
リアは少しずつ採用を始めた。海外のスタッフも含めてチームを作り、国内でも連絡役や補佐役を置いて、体制を整えていった。
世界的な流行と交通事故で、全部が止まりかけた
2020年。世界的な感染症の広がりが始まったころ、リアは交通事故に遭う。
けがだけではない。心も大きく揺れた。病院では面会が厳しく制限され、夫も会いに来られなかった。頼れる人が近くにいないまま回復を目指しながら、それでも仕事は止められなかった。
リアは振り返る。
「本当は自分の体を心配するべきなのに、依頼主がどう思うかばかり気にしていた。手術が何度も必要だったのに、仕事のことが頭から離れなかった」
鎖骨と手首を骨折したまま仕事を続け、手術も感染症の影響で延期されそうになった。リアは病院にお願いして、なんとか手術を受けられるようにした。
このとき、リアは初めて本気で「任せる」しかなくなった。細かく口を出して管理する余裕はない。仕事の進め方を手放す練習になった。
頼るしかなかった。でもそれが、のちに大きな力になる。
働かない選択ができない現実もあった
リアは、事業を始めるのに想像以上のお金がかかることも思い知った。
「気づいたら始まっていた」
そんな感覚に近く、準備は十分ではなかった。だから、けがをしても仕事を止められなかった。
方向転換して、「相性の良い人探し役」になった
回復しながら、リアは考えた。この先、何を伸ばせばいいのか。
海外スタッフと働く中で、良い人材に出会う難しさも感じていた。そんなとき友人から「手伝ってくれる人を探したい」と相談を受ける。
そこでリアはひらめいた。
自分が事務作業をするのではなく、手伝ってくれる人を探して紹介する側に回れば、もっと多くの人を助けられる。
こうしてリアは、起業家などの依頼主に合うアシスタントを探してつなぐ仕事へと、事業の軸を移していった。
海外の女性の「働ける場所」も守りたかった
リアと一緒に働く海外スタッフには、家庭の事情で外に出て働きにくい女性が多い。
リアは、そうした人たちが仕事で成長できるように研修を用意し、きちんとした報酬と安定した仕事につなげることを大事にした。
その国では経済が成長し、仕事の機会も増えている。一方で競争も激しい。だからこそ、安心して働ける場所を作る意味があるとリアは考えた。
同時に、資金に余裕がない起業家にとっても、無理のないコストでサポートを得られるメリットがあった。
学びを広げるため、音声番組も始めた
リアは起業家向けに、学びを共有する音声番組も始めた。
話すのは仕事のことだけではない。売り方や広め方に加えて、体調管理、食事、誰もが安心して働ける環境づくりまで扱う。リア自身が痛い目を見てきたからこそ、机上の話で終わらない。
料金は最初に一度だけ。紹介の後も見守る
リアの紹介サービスは、最初に決まった金額を受け取る形だ。依頼主が料金を支払い、アシスタントへの報酬は依頼主が直接支払う。
紹介の流れは丁寧だ。過去の仕事ぶりの確認や面談を行い、候補を数人まで絞り込む。決まった後も、仕事がスムーズに始まるようにしばらく様子を見守る。
初めて人を雇う依頼主も多い。最初は進め方を一緒に整える必要がある。
リアが重視するのは、スキルだけではない。人柄や相性も見る。お互いが気持ちよく働ける組み合わせでないと、長く続かないからだ。
小さく始める人に伝えたいこと
リアが一番伝えたいのは、恐れに負けないことだ。
相談相手を見つけること。無料で学べる場を使うこと。最初はしばらく自分の給料が出ない前提で、お金の余裕を考えておくこと。
それから、見た目が魅力的な新しいツールや仕組みに飛びつきすぎないことも大事だ。
「経費にできるから必要」
この考え方は危険だ。本当に必要かどうかを冷静に見極めなければならない。
数字を見ないと、事業は迷子になる
リアは、お金の管理を任せる相手を持つことも勧めている。収支を記録して整理してくれる人がいると、何がうまくいっていて何が無駄なのか判断しやすくなる。
支出は慎重に考えるべきだが、考えすぎて行動が止まるのも良くない。時間も、前に進む勢いも失ってしまう。
必要な投資は決断し、動き続ける。それがリアの結論だ。
嵐を越えて、次の景色へ
解雇と交通事故。人生を揺るがす出来事を経験しながら、リアは仕事の形を変え、任せる力も身につけた。
今は毎月の売上が安定して積み上がり、事業は以前より強くなった。また予期しない出来事が起きるかもしれない。それでもリアは次の目標を見ている。
怖さを抱えたままでも、前に進める。
リアの物語は、それを証明している。
