記事一覧に戻る

顔出しゼロ、作業は1日2時間。それでも年に約1億円を生んだ「6時間動画」工場の光と落とし穴

6 min read2026年7月1日
顔出しゼロ、作業は1日2時間。それでも年に約1億円を生んだ「6時間動画」工場の光と落とし穴

ビジネス概要

事業タイプ

Media

フェーズ

成長期

どんな事業?

顔出しなしで複数のYouTubeチャンネルを運営し、台本・音声・映像をすべてAIで生成した6時間級の長尺動画(寝るための歴史動画など)を量産。広告収入を主な収益源とし、不要になったチャンネルは企業に売却することもある。

💰 いくら儲かった?

広告収入は月に約600万〜約900万円($40,000〜$60,000)、運営費は月に約100万円($6,500)で、年間約1億円規模($700,000)。1日あたり全チャンネル合計で約200万回再生。1本あたりの制作費は約9,000円($60)まで下がることもある。

💡 成功の気づき × 打ち手
1
気づき

2022年ごろに生成AIが広まり、顔や名前で勝負する個人より同じ型で大量に出す側が有利になると読んだ。視聴時間が長いほど広告収益で有利になるため、じっくり見る動画ではなく「流しておく」長尺コンテンツに需要があると気づいた。

打ち手

6時間級の『寝るための歴史動画』を主力に据え、台本・映像・音声をすべてAIで生成し自作ソフトで組み立てを自動化。1本あたり制作費約9,000円で量産できる体制を作り、月の固定費を約100万円に抑えながら月約600万〜900万円の広告収入を得ている。

2
気づき

いろいろなジャンル(子ども向けゲーム、動物まとめ、いたずら系、アニメ切り抜き、インド映画、有名人のうわさ話)を試し、伸びたものだけ残してダメなら捨てるという検証を繰り返した結果、意外にも長時間の歴史動画が最も稼げると判明した。

打ち手

当たりジャンルに集中しつつ、最近は掲示板の怖い話読み上げ+ゲーム映像という『怖い話を聞きながら寝たい人』向けの新しい組み合わせも試し、既存の型に少しだけズラしを入れて競合と差別化している。

3
気づき

自社ソフトの宣伝動画でAI制作の手法を公開したところ、真似が一気に広がり、穴場だったジャンルがあっという間に競合だらけになった。うまくいく型ほど早くコピーされることを身をもって経験した。

打ち手

個人がAI長尺動画で大きく稼げる時期は2027年ごろまでと見積もり、資金力のある企業が参入する前に先行者利益を取り切る方針で動いている。

年に約1億円(約7000万円)を稼ぐ22歳がいる。顔出しはせず、毎日の作業は「見守り」が中心で、だいたい2時間だという。

鍵になったのは、じっくり見せる動画ではなく「流しておく」ための長尺コンテンツ。台本も声も映像もAIに任せ、量産できる形に整えた。その仕組みはどこまで再現できて、どこに落とし穴があるのか。

顔を出さずに稼ぐ。22歳が作った動画工場

アダビア・デービスは22歳。大学を中退したあと、動画投稿サイトで複数のチャンネルを運営し、年に約1億円規模($700,000)を稼いでいるという。本人いわく、毎日の作業は「見守り」が中心で、だいたい2時間。

デービスが狙ったのは、いわゆる「じっくり見る動画」ではない。むしろ、途中で眠ってしまうことすら前提にした動画もある。ネットにはAIで大量生産された中身の薄い動画があふれていて、英語圏ではそれを「AI slop」と呼ぶことがある。ここでは「AIで大量に作られた中身の薄い動画」として話を進める。

いろんなジャンルを試し、当たりを残した

デービスは最初から一発で成功したわけではない。いろいろ作って、伸びたものを残し、ダメなら捨てる。チャンネルを作っては運用し、売ったこともある。

手がけたジャンルは幅広い。

  • 子ども向けのゲーム動画(マインクラフトなど)
  • 動物の面白い場面を集めたまとめ
  • いたずら系
  • アニメの切り抜きのような編集動画
  • インド映画の場面集
  • 有名人のうわさ話

その中でいちばん稼げたのは、意外なジャンルだった。長時間の歴史動画だ。6時間ほどの「寝るための歴史動画」で、落ち着いた声が淡々と語り続ける。見るというより、流しておくためのコンテンツだ。

台本も声も映像も、AIに作らせた

デービスの仕組みはシンプルだ。顔を出さない。型をそろえる。増やしやすくする。

動画の素材はすべてAIでそろえる。台本を作り、映像素材を用意し、読み上げ音声もAIで生成する。それらをつなげて長尺に仕上げる流れは、自分たちのソフトで自動化しているという。

うまく回ると、1本あたりの制作費が約9,000円($60)まで下がることもある。しかも完成品は6時間級。人の手でやれば重労働になる部分を、機械に任せた。

月に約600万〜900万円(約4000万〜6000万円)が入り、固定費は約100万円(約650万円)

デービスの説明では、広告などの収入は月に約600万〜約900万円($40,000〜$60,000)。運営費は月に約100万円($6,500)で、主に小さなチームの人件費だという。

取材側は収入の記録や画面の写しも確認したとしている。中には、1つのチャンネルだけで月に数百万〜数千万円(何万〜何十万ドル)の入金がある例もあったという。全体を平均すると、年に約1億円規模($700,000)ほどになる計算だ。

10歳で編集にのめり込み、空気の変化を嗅いだ

デービスは子どものころから動画投稿サイトを見て育った。10歳ごろにはゲーム実況を自分で考え、編集に1日6時間を使っていたという。

当時は「好きで作る」雰囲気が強かった。しかし2022年ごろ、文章を生成するAIが一気に広まり、ネットの空気が変わったと感じた。顔や名前で勝負する個人より、同じ型で大量に出す側が強くなる。そう読んだ。

チャンネルを売って現金を手にし、大学をやめた

大学生のころ、デービスは最初のチャンネルを企業に売ったことがあるという。企業はそのチャンネルを自社商品の宣伝に活用した。

その資金で車を買ったため、学費に回す余裕がなくなったとも語っている。さらに、授業と動画制作を両立しようとするとどちらも中途半端になる。そう判断して大学をやめた。

遠回りに見えるが、デービスにとっては「今の波に乗る」ほうが大事だった。

ネットは会話の場ではなく、注意を売買する市場になったとデービスは考えている。

デービスは今のネットを次のように見ている。「考えを交換する場所」ではなく、「注意を集めてお金に換える仕組み」だと。広告を出す会社がいるから動画サイトが成り立つ。だから動画は、広告に都合のいい形へ引き寄せられていく。

その中でデービスが最重要とするのは視聴時間だ。どれだけ長く見られたか。そこが強いほど、広告面で有利になりやすい。

最初の数秒で、離脱するか決まる

視聴者はすぐ離れる。だから最初を作り込む。色のコントラストを強くしたり、冒頭の声のトーンを工夫したりして、目と耳をつかむ。

わざと見直させて、時間を伸ばす

まとめ動画では、一瞬だけクモの映像を挟むことがあるという。「今、見えた気がする」と思わせて巻き戻しを誘う。

短い動画では、画面のテキストをわざと誤字にすることもある。コメントで指摘させるためだ。止めて読ませ、反応させ、結果として視聴時間を伸ばす。

AIの薄い動画が増えすぎて、景色が変わった

別の調査では、新規ユーザーに表示される動画の2割以上が「AIで大量に作られた中身の薄い動画」だという結果もある。そうした動画だけを出すチャンネルが、合計でとてつもない再生数と登録者数を集め、広告で大金を生んでいるともされる。

デービスは超大手というほどではないが、作ったり売ったりしたチャンネルには登録者が数十万人から100万人を超えるものもあるという。今は全体で1日に約200万回再生されていると話す。

自分のやり方を見せてしまい、同じ動画が増えた

デービスは大きな失敗も語っている。自分たちのソフトを宣伝する動画で、AIを使った制作方法を公開したことだ。

真似はあっという間に広がった。同じ型の動画が増え、せっかくの穴場が、あっという間に競合だらけになった。ネットでは、うまくいく型ほど早くコピーされる。デービスはそれを身をもって知った。

本当に怖い相手は、個人ではなく大企業

デービスが警戒するのは、個人の模倣より資金力のある企業だ。儲かる型が見つかれば、企業は人も金も投入して大量生産できる。

だからデービスは、個人がAIで長尺動画を作って大きく稼げる時期は、2027年ごろまでではないかと予想している。早く動いた人が有利な時期は、永遠には続かないという見立てだ。

流行を作るより、勝っている型の隙間を探す

デービスは新しい流行をゼロから作るタイプではない。すでにうまくいっている形を観察し、その中で小さな工夫を見つけるほうが得意だという。

最近試しているのは、掲示板の投稿を読み上げる動画とゲーム映像を流し続ける動画の組み合わせ。よくある体験談ではなく、怖い話に寄せる。「怖い話を聞きながら寝たい人」を狙う。

大きく外さない型に、少しだけズラしを入れる。それがデービスのやり方だ。

AIが増えるほど、「本物っぽさ」が逆に価値になる

デービスは、AI動画が増えすぎると、人々が「本当にその人が作った」と感じられるものを求めるようになると考えている。

編集を盛りすぎない。視聴者を引っかけるような小技をやりすぎない。そういう作り手に支持が集まる可能性がある。

しばらくは状況が荒れるかもしれない。それでも最後に残るのは、顔が見える人や信頼される発信者だとデービスは考えている。


3層インサイト

アダビア・デービスは22歳で、大学中退後に動画投稿サイトで複数チャンネルを運営し、年に約1億円規模($700,000)を稼いでいると述べている。
本人によれば、日々の作業は「見守り」が中心で、作業時間はだいたい2時間だという。
デービスは複数ジャンルを試し、伸びたものを残し、ダメなら捨てる運用を行い、作っては運用し、売ったチャンネルもある。
最も稼げたジャンルは長時間の歴史動画で、6時間ほどの「寝るための歴史動画」を制作している。
動画は顔出しせず、台本・映像素材・読み上げ音声をAIで生成し、それらをつなげて長尺化する工程を自分たちのソフトで自動化しているという。

複数の仮説を小さく試し、成果が出たものだけを残す運用は、成功する可能性を高める。

根拠

-デービスは複数ジャンルを試し、伸びたものを残し、ダメなら捨てる運用を行い、作っては運用し、売ったチャンネルもある。

-最も稼げたジャンルは長時間の歴史動画で、6時間ほどの「寝るための歴史動画」を制作している。

制作工程を標準化・自動化できると、低コストで大量に出せるようになり、日々の作業を監視・調整に絞れる。

根拠

-本人によれば、日々の作業は「見守り」が中心で、作業時間はだいたい2時間だという。

-動画は顔出しせず、台本・映像素材・読み上げ音声をAIで生成し、それらをつなげて長尺化する工程を自分たちのソフトで自動化しているという。

-うまく回ると制作費は1本あたり約9,000円($60)まで下がることがあると述べている。

長尺コンテンツは制作の設計次第で視聴時間を稼ぎやすく、広告収益モデルと相性が良い場合がある。

根拠

-最も稼げたジャンルは長時間の歴史動画で、6時間ほどの「寝るための歴史動画」を制作している。

-デービスは最重要とするのは視聴時間だと述べている。

-デービスの説明では収入は月に約600万〜約900万円($40,000〜$60,000)で、運営費は月に約100万円($6,500)で主に小さなチームの人件費だという。

再現可能な手法を公開すると模倣が急増し、優位性(穴場)が短期間で失われるリスクがある。

根拠

-自分たちのソフトを宣伝する動画でAI制作方法を公開したところ模倣が急速に広がり、同じ型の動画が増えて競合が増えたと語っている。

技術の変化を読み、勝ち方が変わると判断したタイミングで動き方(型・量産・顔出しの有無)を切り替えることが、成果に直結することがある。

根拠

-2022年ごろに文章生成AIが広まり、顔や名前で勝負する個人より、同じ型で大量に出す側が強くなると読んだと述べている。

-動画は顔出しせず、台本・映像素材・読み上げ音声をAIで生成し、それらをつなげて長尺化する工程を自分たちのソフトで自動化しているという。

新規コンテンツ/新規事業の勝ち筋が不明で、何が伸びるか読めない。

1複数ジャンル(または複数訴求)を同時並行で少量リリースし、指標で伸びたものだけを継続する。
2一定期間で「残す/捨てる」の判断基準を事前に決め、基準未達の企画は停止して次の仮説に切り替える。
3成果が出た型はテンプレートにまとめ、次の企画でも同じ構成を使い回せるよう整理する。

制作コストと制作時間が重く、量産や運用拡大ができない。

1制作工程を分解し、台本・素材準備・音声・編集・公開などの各工程で標準手順(テンプレ)を作る。
2繰り返し作業を自動化または半自動化し、日次作業を「監視・品質確認・微調整」に寄せる。
31本あたりの制作費と制作時間を継続計測し、ボトルネック工程から順に改善する。

広告モデルなどで視聴時間(滞在時間)が重要だが、短尺では伸びにくい。

1長尺化しても成立するテーマ(流し見・ながら利用・睡眠用途など)を選び、長時間視聴に耐える構成を設計する。
2長尺制作を前提に、素材・ナレーション・構成をパーツ化してつなぎやすい設計にする。
3収益とコスト(運営費)を月次で並べ、長尺化による収益増と追加コストの差分を検証する。

再現性の高いノウハウを公開・共有することで、競合が増える懸念がある。

1公開する情報を「考え方」と「具体手順」に分け、差別化の核となる手順や運用データは開示範囲を限定する。
2模倣が起きた場合に備え、次の型(次のテーマ/次の切り口)を常に並行で探索しておく。
3公開後に競合増が確認されたら、テンプレの一部(テーマ、構成、見せ方)を速やかに更新し、同型競争からずらす。