会社を続けていると、ふと立ち止まる瞬間がある。競合の真似ばかりしている気がする。売上が伸びない。狙っている相手に届かない。
このまま粘るべきか。それとも、方向転換するべきか。変えるのはこわい。でも、何も変えずに時間だけが過ぎていく不安も、確かにある。
Wodenもまた、その迷いの中で決断を重ねてきた会社だ。ある年には売上も社員数も2倍に伸び、14人のチームで毎年50社以上の新しいブランドに関わるまでになった。その転機は、「何を捨て、何に賭けるか」を選んだところから始まっている。
続けるか、方向転換するか
会社をやっていると、こんな瞬間が来る。
競合の真似ばかりしている気がする。売上が伸びない。競争がきつすぎる。狙っている相手に届かない。
このまま粘るべきか。それとも、進む方向を変えるべきか。
方向転換はこわい。だが、何も変えずに時間だけが過ぎるほうが、もっと危ないこともある。いいリーダーに必要なのは、続ける勇気と、変える勇気の両方だ。
Wodenは、その決断を何度も経験してきた会社だ。
2014年、Wodenはデジタルマーケティング会社として始まった。ところが2018年、大きく形を変える。「戦略的ストーリーテリング」に一本化したのだ。
今のWodenがやっているのは、企業の中心にある「語るべき物語」を明確にし、その物語に沿って会社全体の行動をそろえる手伝いだ。
方向転換後、Wodenは成長した。ある年には売上も社員数も2倍になった。14人のチームで毎年50社以上の新しいブランドに関わり、1社あたりの平均契約額は約750万円超($50,000超)。13週間のプログラムを通じて「自分たちはなぜ重要なのか」を言葉にし、「なぜ周りの人がそれを気にするべきか」まで伝わる形に整える。これまで300社以上がこのプロセスを経て変わってきた。
ひとつの仕事が、次の仕事につながる
共同創業者でCEOのエドは、最初から「起業家」だったわけではない。
大学では英文学を学び始めたが、途中で金融に転向し、最終的に中退した。自分に合う道が見つからず、大学という場所自体が合わないと感じたからだ。
そんなとき、ボーイスカウト時代からの友人ダンが、ニュージャージー南部で新聞社を立ち上げることになった。誘いを受けたエドは荷物をまとめてフィラデルフィアへ移り、そこで働き始めた。
ダンが新聞社を立ち上げ、エドは営業とマーケティングを担当した。新聞は1紙から始まり、最終的に14紙まで増えた。会社を売却したあとも2人は別の事業で一緒に働く。学生向け住宅の通信サービスを扱う会社だ。
Wodenの種は、その通信事業の中で生まれた。
通信サービスは商品として差が出にくい。どの会社も似た機能、似たメリットを並べるため、「自分たちは何が違うのか」を言葉にするのが難しい。
外部のマーケティング会社に頼んでも、表面だけ整えられてブランドの核に届かないことが多かった。エドとダンは、そこに強い不満を抱えていた。
デジタルマーケティングの現場は、消耗しやすい
2人は新聞社時代にも外部の会社と仕事をしており、業界全体に物足りなさを感じていた。だから自分たちでWodenを作り、「このやり方を変えられる」と信じた。
だが現実は甘くない。
デジタルやSNSのマーケティングは、すぐに価格競争になる。どれだけ良い仕事をしても顧客は「もっと安く」を求め続け、意味の薄い数字目標を追う圧力も強い。
チームはブログやSNS投稿を大量生産するような働き方になった。やりがいが薄れ、燃え尽きる人も出て、社員が定着しない。
そんなとき、ある顧客が相談してきた。
「自社の立ち位置が分からない」
Wodenはその会社のブランドストーリーを作り、その後のデジタル施策まで担当した。ところが契約が終わると解約された。普通ならショックで終わる話だ。
だが顧客はこう言った。
「ブランドストーリーは最高だった。でも、その後の施策はひどかった。ストーリーだけでも全額払う価値があった」
この一言が、2人の頭を打った。
自分たちが本当に価値を出せる場所は、数字を追う運用ではなく、会社の中心を言葉にするところではないか。
そこから2015年、エドとダンは「戦略的ストーリーテリング」をサービスとして形にする研究を始めた。
儲かる仕事を捨てるか、好きな仕事に賭けるか
2017年のWodenには、2つの柱があった。デジタルマーケティングと、戦略的ストーリーテリングだ。
利益だけ見れば、デジタルマーケティングのほうが強かった。儲かりやすい。だが仕事は消耗戦で、終わりのない回転輪のようだった。
一方、ストーリーテリングは顧客数も売上も少ない。それでもチームにとって意味があり、顧客への影響も大きかった。
小さな会社が2つの事業に同じだけ力を注ぐのは難しい。選ばなければならなかった。
最終的な決断は、細かい分析というより直感に近かった。
好きな仕事に集中する。
2018年、Wodenはデジタルマーケティング事業を売却し、戦略的ストーリーテリングに一本化した。
ただし、ここからが本当の勝負だった。
次の課題は「商品化」だ。戦略的ストーリーテリングは当時ほとんど前例がなく、手本がない。約束した成果を出しながら、売れて、再現できて、規模を広げられる形に整えるまで、ほぼ3年かかった。
そして最後にぶつかるのが、人の問題だ。
結局、会社は人で決まる。火を受け継いで走り続けられるチームがいるかどうか。Wodenは基準を下げず、文化に合い、やっていることを信じられる人を慎重に採用する方針を取った。
さらにエドは、ビジネスパートナーの持分を大きく買い取り、新しい方向性の中心としてWodenを前進させた。ダンは新しい通信会社を始め、エドもそこに関わっているが、Wodenの経営はエドが担う形になった。
方向転換後、Wodenは成長した。社員の定着率と満足度も高く、ある年には売上と社員数が2倍になった。次はチームを25人に増やし、年間60社の新規顧客を支援する計画で進んでいる。
人はなぜ物語に引き寄せられるのか
良い商品があっても、熱心なチームがいても、「人が気にしたくなるメッセージ」がなければ会社は失敗する。
エドは、ブランドの物語は単なるマーケティングではなく、戦略そのものだと考えている。
物語は、価値や他社との違いを定義する土台になる。狙う相手、商品、社風、立ち位置まで左右する。
組織の中心には必ず物語がある。それが「なぜこのブランドが大事なのか」を説明する。物語が社内で共有されると、顧客体験、営業、マーケティング、文化、成長など、さまざまな活動が同じ方向を向き始める。
人は昔から物語で心を動かされてきた。文字がない時代、人々は火の周りで物語を語り、情報を伝え合っていた。今は技術が進んで、その広がり方が大きくなっただけだ。
Wodenはまず、ブランドの物語を掘り起こす。経営陣、社員、顧客へのインタビューを行い、情報を整理して「StoryKernel」という核にまとめる。これが、そのブランドが自分たちをどう捉えるかの基盤になる。
次に、現地でのワークショップや「StoryGuide」という仕組みを使い、実行の設計図を作る。社風、顧客体験、成長戦略、ミッションなどを分析し、6〜9か月かけて新しい物語に合わせて会社を変えていく。
方向を変えたら、売り方も変わる
ストーリーテリングに切り替えた以上、Woden自身の営業とマーケティングも変える必要があった。
Wodenは自社にも同じプロセスを当てはめた。「何を提供する会社か」ではなく、「なぜそれをするのか」に焦点を当てて見せ方を整えた。
会社を始めるとき、ウェブサイトやロゴが必要だとよく言われる。そこにもう一つ重要な柱がある。ブランドストーリーだ。
物語は意味や価値を伝えるための基本的な手段であり、人と人がつながるために欠かせない。
ただし、物語の力は説明しにくい。だからWodenは最初から「ブランドストーリーを買ってほしい」とは言わない。まず顧客の痛みを整理し、その問題を戦略的ストーリーテリングがどう解決できるかを示す。
顧客の地域も変わった。デジタル会社だった頃はフィラデルフィア周辺が中心だったが、今は5大陸に広がり、業界もさまざまだ。
それでも狙う相手ははっきりしている。
Wodenが特に力を発揮するのは、会社が大きな成長の節目にいるときだ。資金調達を終えた直後、合併や買収のあと、新しい経営幹部が入って方向を変えたいとき。そういう場面で、物語が必要になる。
さらにWodenは、外から積極的に新規開拓する成長戦略も取っている。一般的な制作会社というより、SaaS企業に近い動き方だ。エドは制作会社出身ではないからこそ、過去の経験から学んだやり方をWodenに当てはめている。
チームには、物語に情熱を持ち、成長を追いかける文化がある。目指す姿が共有され、そこに向かって動く空気がある。
戦略的ストーリーテリングへの需要は大きい。Wodenはそれをできるだけ広く伝えようとしている。
