わずか6週間で約15万人が利用し、売上は約4,500万円($300,000)規模――。2020年の年末、ある「オンラインのプレゼント交換」が一気に広がった。
きっかけはシンプルだった。「今年のクリスマス会、どうする?」。集まれない状況で、毎年の恒例行事が消えそうになる。代わりを探しても、ちょうどいい仕組みが見当たらない。
なら作るしかない。会社員だったデビッドは、妻と開発者を巻き込んで短期間で形にした。なぜこの遊びはオンライン化が難しく、どうやって「場の空気」まで再現したのか。
6週間で約4,500万円を生んだ、オンラインのプレゼント交換
アメリカの人気ドラマ「The Office」に、クリスマスパーティーのプレゼント交換が大混乱する回がある。
最初は、相手を決めてこっそり贈る「シークレットサンタ」だった。ところが上司がプレゼントにがっかりして、急にルールを変える。次の人は、新しいプレゼントを選ぶか、すでに開けられたプレゼントを奪うかを選べる。会場は一気に騒がしくなる。
この遊びは地域によって呼び方が違うが、アメリカの職場では昔からクリスマス会の定番だった。ところが2020年、新型コロナで集まれなくなり、毎年の恒例行事が消えそうになった。
会社員のデビッド・マンカレラも、その空気を肌で感じていた。「オンラインで同じことができないか」。探してみたが、ちょうどいいサービスが見つからない。
なら作るしかない。デビッドは妻と開発者を巻き込み、短期間でオンライン版を形にした。結果は想像以上だった。わずか6週間で約15万人が利用し、売上は約4,500万円($300,000)規模に達した。
「今年のクリスマス会、どうする?」から始まった
2020年8月。デビッドは同僚たちとビデオ会議をしていた。話題は「年末のイベントをどうするか」だった。
誰かが言った。「今年はプレゼント交換、無理かもな」
そこでオンラインの代わりを探す流れになった。デビッドも調べた。だが、これだと思えるサービスがない。似たものすら、ほとんど見当たらなかった。
このとき、ひらめきを感じたという。世の中にないなら、作ればいい。
デビッドはビジネスを学び、小さな事業を試した経験もあった。ソフトウェア開発の仕事にも長く関わってきた。だからこそ「すでに競争が激しすぎる場所」ではなく「まだ穴が空いている場所」だと判断できた。
大きな資金もいらない。うまくいかなければ小さな作品で終わる。うまくいけば多くの人が使い、働き方さえ変えられるかもしれない。そう考えて動き出した。
妻と開発者を誘い、6週間で走り切った
まずデビッドは、妻のレライアと一緒に「遊びの流れ」を整理した。レライアは服のネット販売をしていて、商品を届ける段取りにも慣れていた。ゲームの手順だけでなく、遊び終わったあとにプレゼントを買って送るところまで、現実的に回る形を考えた。
次に、以前の職場で知り合った開発者アンドジェイに連絡した。話はすぐまとまり、3人で数日後には作業を始めていた。
当時は、少人数でもサービスを立ち上げやすいツールがそろっていた。サイト作成ツールでページを用意し、必要に応じてメール配信や問い合わせ対応のツールを足していく。最初から完璧を目指さず、まず回せる形を選んだ。
2020年9月、まずは紹介ページを公開した。掲載したのは「どんなサービスか」とメール登録の入り口だけ。完成前に、先に旗を立てた。
その後、検索で見つけてもらえるよう記事を増やした。プレゼントのアイデア集など、役に立つ情報を積み重ねていった。
そして感謝祭の直前、サービスを正式公開した。事前に情報を出していた分、公開した週から申し込みが一気に増えた。
広がるほど直す場所が増え、毎週アップデートした
人が集まれば、問題も集まる。
公開時点の機能は必要最低限だった。たとえば、入力した名前を後から修正できない。小さな不便が、利用者が増えるほど大きな不満になる。
利用者の声を拾い、翌週には直す。そんな調子で、作りながら走り続けた。
それでも6週間で約15万人が利用した。約3,000チームが遊び、約2,000社が関わり、プレイ回数は約1万1,000回。売上は約4,500万円($300,000)規模だった。
広がった理由は運だけではない。検索で見つけてもらう工夫に加え、検索連動の広告も活用した。後半はメディアへの働きかけも行い、朝の有名番組で紹介されたときは本人も驚いたという。
この成功を機に、デビッドは次の決断をする。2021年5月、会社を辞めてサービスと新たな企画に集中する道を選んだ。夫婦で一緒に事業を進めたいという目標も、ここで現実になった。
利用者からの反響も大きかった。「会社の恒例行事を続けられた」「人と集まれない期間が長かったけど、久しぶりに自分らしく楽しめた」。そんな声が届いた。
取り合いがあるからこそ、オンライン化が難しかった
デビッドの地元では、この遊びは別の名前で呼ばれていた。ただ、多くの人には「ホワイトエレファント」として知られていたため、サービス名もその呼び方に合わせた。どの名前がよく使われているかを事前に調べて決めた。
この遊びは、ただのプレゼント交換よりルールが複雑だ。誰がどのプレゼントを手に入れるか、最後まで決まらない。途中で奪い合いも起きる。だから「誰に何を送るか」を事前に決めて配る方式では再現できない。
オンライン版の流れはこうだ。
- 主催者がゲームを作り、参加者を招待する
- 参加者が事前にプレゼントを登録する
- 登録されたプレゼントが画面に並ぶ
- 進行役が操作し、開ける・取り上げるを進める
プレゼントの登録は、ネットショップの商品ページのURLを入力する形にした。商品名や画像が自動で取り込まれ、画面に表示される。包み紙のデザインも選べるようにした。
操作を進行役だけに任せたのも意図的だった。全員が黙って自分の画面で選ぶより、声を出してやり取りするほうがパーティーらしい。オンラインでも「場の空気」を作りたかった。
ゲームが終わると、誰がどのプレゼントを手に入れたかが一覧でわかる。最初は受け取った人の名前やメールを参加者同士で共有し、送付の相談ができるようにしていた。
ただ、大人数の会社では社員同士で個人情報を共有したくないケースもある。そこで、主催者が共有範囲を選べるように改良した。
個人や家族向けには最大25人まで無料で遊べるプランを用意した。25人を超えるグループには1回99ドル(約15,000円)の有料プランを設け、管理機能を追加した。収益の中心はこの有料プランだった。
冬に偏るサービスを、どう育てるか
ホワイトエレファントは冬の行事だ。つまり、利用が集中する期間が短い。前年の結果をもとに改善を積み重ね、次のシーズンで試すしかなかった。
リモートワークが増え、離れた場所の仲間とイベントをしたい需要は続く。一方で、集まれる機会が増えればオンラインを使わない人も出てくる。先行きは単純ではない。
2021年のシーズンに向けて、細かい改善を積み重ねた。
- 参加登録の流れをわかりやすくした
- 包み紙の種類を増やした
- 結果をまとめて出力できるようにした
- より多くのネットショップから商品名と画像を自動取得できるようにした
冬だけに頼らない形も模索している。誕生日会や出産祝いへの展開も視野にある。ただ今は、「プレゼントを選んで買う作業」を助けるツールとして伸ばすことを検討している。サービスの存在自体をまだ知らない人が多いからだ。
ユーザーの声に流されず、芯だけは手放さない
デビッドが大切にしているのは、利用者の声を聞きながらも、作りたいものの核心を守ることだ。
欲しいと言われた機能でも、追加した途端に使い心地を損なうこともある。何が価値で、なぜ必要なのか。そこを見失わない。そのうえで、使う人が楽しいと思える形に整える。
この成功には時代の偶然も大きい。だが、日ごろから困りごとに目を向け、思いついたアイデアを調べ続ける習慣が、次のチャンスにつながる。デビッドの物語は、そのことをはっきり示している。
