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元英語教師が「売上ゼロで1年放置」で月900万円。日本IT求人サイトの光と闇

ビジネス概要

事業タイプ

Marketplace

フェーズ

拡大期

規模感

月6万ドル(約900万円)超

概要

日本で働きたい海外の開発者と、外国人採用に開かれた企業をつなぐ成果報酬型の求人サイト。

ターゲット

外国人エンジニアを採用したい日本企業の採用担当者

主な打ち手

検索流入と週次ニュースレターを軸に集客を広げ、成功事例の掲載とサイト文言・導線の改善で応募と採用を増やした。

30秒で分かる

1日本移住の開発者が、求人サイトで月6万ドル。

最初の1年は売上ゼロ

3年ほどで月6万ドル(約900万円)超

2狙いは「良い会社が見つからない」。

日本のIT業界で働く外国人は。

合う会社を探しにくかった。

3掲示板まとめが、サイトの原型に。

働きやすい会社の情報を集約。

2017年にシンプルなページ化。

体験談が集まる場に育った。

4求人サイト化で、企業が来なかった。

2019年4月に公開し反応は良好。

でも収益化と応募導線が未解決。

レビュー機能を外し企業に寄せた。

収益は企業からの成果報酬にした。

5伸びたのは集客の作り直し。

検索で見つけてもらう記事制作

週次ニュースレター

SNS発信

成功事例の掲載も効いた。

文章を平易にし導線を整えた。

2021年半ば頃に専業になった。

6本質は「収益を後回しにしない」。

成果報酬は採用が起きないとゼロ。

最初に企業だけ集めても売上は出ない。

早い段階で稼げる形を作る話だった。


ストーリーの流れ

Problem

日本のIT業界で働く外国人がカルチャーショックや環境不一致に直面しやすい現実があった。

  • 旧来の慣習が根強い企業では外国人に合った環境が整っていないことがある。
  • 多様な人材を大切にする会社は存在するが見つけにくいと気づいた。
Insight

働きやすい会社の情報を集約すれば同じ悩みを抱える人の助けになると考えた。

  • 掲示板やSNSで情報をまとめて紹介し始めた。
Action

投稿の集約から一歩進めて体験談が集まる場を作るためにシンプルなページを立ち上げた。

  • ほかの開発者も自分の体験を書き込める場所が求められるようになった。
  • 2017年にページを作成し、UIやUXが得意な真奈美も制作に加わった。
  • 企業紹介と体験談が集まる場所がJapan Devの原型になった。
Action

2019年4月にJapan Devを公開して手応えを得たが事業化の課題が明確になった。

  • 公開後の反応は良好だった。
  • 課題は収益化と企業へ直接応募できる導線の整備だった。
Action

Japan Devを求人サイトとして作り直し応募導線を整えた。

  • 開発者が求めているのは良い会社の情報だけでなく求人と応募方法でもあった。
  • 求人一覧と応募の流れを整備した。
Monetize

レビュー機能を取り下げて企業が参加しやすい形に寄せ、収益は企業から得るB2Bモデルに定めた。

  • ネガティブ情報が目立つ場は企業が参加しにくいという現実があった。
  • 応募者から料金を取る案も検討したが無料で使える状態を守りたかった。
  • 収益化を後回しにしたことが初期の大きな失敗だった。
Problem

営業経験ゼロのまま企業に売り込もうとしても反応が得られなかった。

  • B2Bマーケティングを独学で学び始めた。
  • 理念を語っても相手が知りたい具体的メリットが伝わっていなかった。
Insight

日本では採用失敗を避けたい心理が強く採用コスト削減の提案が刺さると掴んだ。

  • 終身雇用の名残で社員は長期投資になり企業は採用の失敗を避けたい。
  • 人材紹介会社に頼る企業が多く手数料が年収の30〜35%に上ることもある。
Action

採用が決まったときだけ報酬が発生する設計で採用コストを下げられると企業に提案した。

  • 求人文章を読みやすく整え会社紹介ページと応募ページを用意した。
  • 週次の求人通知も配信する形にした。
  • この提案でいくつかの有名企業とも契約できた。
Problem

企業集めに偏って応募者集めが不足し採用が起きず売上が立たなかった。

売上ゼロ最初の1年
  • 採用が起きなければ売上は出ない構造だった。
  • 最初の1年は売上ゼロのままだった。
Problem

コロナ禍の無収入が結婚生活と事業運営の両方に重くのしかかった。

  • 外出が減り1LDKの部屋で逃げ場の少ない生活が続いた。
  • 昼はそれぞれの仕事をこなし夜にJapan Devを進めた。
  • 契約がある以上止めるわけにはいかなかった。
Action

2020年末頃にマーケティングを大きく見直して集客手段を広げた。

  • 検索で見つけてもらうための記事制作を始めた。
  • 週次の求人をまとめたニュースレター配信を始めた。
  • SNSでの情報発信も強化した。
  • 特に効果が大きかったのは検索流入とニュースレターだった。
Growth

成功事例の掲載と文章の改善で訪問者の迷いを減らし事業が伸び始めた。

  • 企業と採用された人の成功事例をサイトに掲載し始めた。
  • 難しい言葉を減らし次に何をすればいいか分かる導線に整えた。
  • 見た目の美しさより行動してもらうことを優先する考え方に切り替わった。
Team

2021年半ば頃に2人とも会社員を辞めてJapan Devに専念できる状態になった。

2021年半ば頃専念開始
  • 改善の積み重ねが専念できる状況を作った。
Growth

最初の1年の売上ゼロを越えて3年ほどで月6万ドルを超える規模まで成長した。

月6万ドル(約900万円)を超える月次売上規模
  • 2人は日本でエンジニア向けの求人サイトJapan Devを立ち上げた。
  • 成果報酬型のリスクを背負って走り出した。
Insight

国境再開で日本で働きたい人が戻れば採用が増える一方で勢いが続く保証はないと捉えた。

  • 国境が閉じていた間は日本に移って仕事を探す人の動きが鈍かった。
  • 2021年から2022年にかけて状況が改善すると採用も増えた。
Monetize

信頼を積み上げて成果報酬型に加え求人1件ごとの先払い掲載料にも広げる構想を立てた。

  • 成功事例をさらに増やして求人サイトとしての信頼を高める方針を置いた。
  • 信頼が十分に蓄積されれば先払い型を取り入れやすくなると考えた。
Monetize

日本で働くための情報コンテンツを拡充して広告など別の収益源も開ける形を狙った。

  • ブログで手続きや住む場所の探し方なども扱う方針を示した。
  • 情報が充実すれば広告などの可能性が広がると見立てた。
Scale

企業側が自分で求人を更新できる仕組みを整えて運営負担を減らす方針を掲げた。

  • 2人だけの運営では事務作業・会計・マーケティング・開発まで負担が大きい。
  • 企業が自分で更新できればその分の手間を減らせる。
Insight

最後に残った教訓として立ち上げ直後から収益を後回しにしない重要性を言語化した。

  • 熱量だけで走り続ける時間を長くしすぎないことが大切だと整理した。
  • 早い段階で収益につながる形を作ることが前進の実感を生むと結論づけた。

日本が好きで移り住んだのに、働き始めると思っていた以上に「合わない」と感じる瞬間がある。環境の違いに戸惑いながらも前に進みたい——そんな停滞と迷いの中で、エリックは日本のIT業界で働く外国人がぶつかる壁を目の当たりにした。

やがて彼は、同じ悩みを抱える人のために情報をまとめ始める。最初は小さな試みだった。しかし続けるうちに「これを事業にできるのか」という不安が膨らんでいく。最初の1年は売上ゼロ。それでも止まらなかった先に、月6万ドル(約900万円)を超えるサービスが生まれた。

無収入の時期をどう乗り越え、何を変えたのか。話はそこから始まる。

日本に引っ越したら、カルチャーショックと恋が始まり、売上月6万ドルの事業につながった

エリックが初めて日本を訪れたのは17歳のとき。行き先は愛知の西尾で、1か月だけの滞在だったが、「いつか日本で暮らしたい」という思いが心に残った。

アメリカに戻って大学へ進み、日本語を学びながらコンピューター工学も修めた。卒業後はソフトウェア開発の道に進む選択肢もあった。でもエリックには、仕事を始める前にどうしてもやりたいことがあった。

日本で、本当に暮らすこと。

2013年3月、英語教師として富山の小矢部へ移り住む。それ以来、アメリカへ戻ることはなかった。

1年後に東京へ移り、ソフトウェア開発の仕事を本格的に始めた。2014年には言語交換の場で真奈美と出会い、友人関係から恋愛へと発展し、2017年に結婚した。

その数年後、2人は日本でエンジニア向けの求人サイトを立ち上げることになる。名前はJapan Dev。最初の1年は売上ゼロだったが、3年ほどで月6万ドル(約900万円)を超えるまでに成長した。

無収入から、どうやってここまで来たのか。話はそこから始まる。

Japan Devはどんなサービスか

Japan Devは、開発者やプログラマーなど開発チームで働く人向けの求人サイトだ。企業が求人を掲載し、興味を持った人が応募する仕組みになっている。

特徴はシンプルで、採用が決まるまで企業から料金をもらわない成果報酬型を採用している。

企業にとっては始めやすい一方、運営側は採用が発生しない限り売上がゼロになる。Japan Devは最初からそのリスクを背負って走り出した。

日本で働く外国人がぶつかる壁

エリックは日本の人や文化が好きだった。一方で、外国人が日本のIT業界で働くとカルチャーショックを受けやすいとも感じていた。

旧来の慣習が根強い企業では、外国人に合った環境が整っていないことがある。日本語が得意でない人や、日本の職場文化に慣れていない人ほど苦労しやすい。

自身もいくつかの会社を経験する中で、エリックはあることに気づいた。

「外国人を含め、多様な人材を大切にする会社は確かに存在する。でも、見つけにくい」

自分の困りごとを解決しようとして、仲間も助けることになった

エリックは、働きやすい会社の情報を掲示板やSNSでまとめて紹介し始めた。同じように困っている人の役に立てると思ったからだ。

やがて、投稿を並べるだけでは物足りなくなった。ほかの開発者も自分の体験を書き込める場所が求められるようになった。

2017年、エリックはシンプルなページを作成。UIやUXデザインが得意な真奈美もサイト制作に加わった。

この取り組みは2年かけて少しずつ育ち、Japan Devの原型となる「企業紹介と体験談が集まる場所」が形になっていった。

公開して見えた、次の2つの課題

2019年4月にJapan Devを公開すると、反応は良好だった。しかし、次の壁が立ちはだかった。

  • どうやってお金を生む事業にするか
  • サイトから企業へ直接応募できる形にするか

求人サイトに作り直す。でも企業が来ない

開発者が求めているのは「良い会社の情報」だけではない。「今どんな求人があるか」「どう応募するか」も必要だった。

そこで2人はJapan Devを本格的な求人サイトとして作り直し、求人一覧と応募の流れを整えた。

ただ、企業に求人を掲載してもらうには一つ問題があった。

初期のJapan Devには、会社の良い点も悪い点も書けるレビュー機能があった。正直な情報を集めたかったからだ。しかし企業は評判に敏感で、ネガティブな情報が目立つ場所には参加しにくい。

2人はレビュー機能を取り下げることを決断した。

対象となる「外国人にも開かれた企業」は数が限られている。関係をこじらせれば、事業が成り立たなくなるリスクがあった。

応募者から料金を取る方法も検討したが、仕事を探す開発者が無料で使える状態は守りたかった。

結果として、収益は企業から得るB2Bモデルに決まった。

そして2人は、後になって痛い教訓を得ることになる。

収益化を後回しにしたことが、初期の大きな失敗だった。

営業経験ゼロで、企業に売り込む難しさ

エリックは企業に求人掲載を提案するため、B2Bマーケティングを独学で学び始めた。

しかし営業経験はゼロ。ビジネスSNSで見知らぬ相手に長いメッセージを送っても、返事はほとんど来なかった。

理由は単純だった。相手が知りたいのは運営側の理念ではなく、企業にとっての具体的なメリットだったのだ。

そこに気づくまでに、時間がかかった。

日本の働き方の特徴が、強みになった

Japan Devの価値を伝えるヒントは、日本の職場文化の中にあった。

終身雇用の名残と、採用の怖さ

日本では長い間、一つの会社で長く働く考え方が根強かった。社員は長期的な投資となるため、企業は採用の失敗を避けたい。

その結果、人材紹介会社に頼る企業が多く、手数料は年収の30〜35%に上ることもある。

転職が増え、採用コストが積み上がる

転職が増えると採用の機会も増え、そのたびに紹介会社へのコストが発生しやすくなる。

エリックは企業にこう伝えた。

「Japan Devなら採用コストを下げられる」

紹介会社のように面接を代行するわけではない。その代わり、求人文章を読みやすく整え、会社紹介ページを作り、応募ページを用意し、週次の求人通知も配信する。そして採用が決まったときだけ報酬が発生する。

この提案でいくつかの有名企業とも契約できた。

ただ、ここに落とし穴があった。

企業集めに力を入れすぎて、応募者を集める努力が不足していたのだ。

採用が起きなければ売上は出ない。最初の1年は、売上ゼロのままだった。

コロナ禍で、結婚生活と事業が同時に試された

無収入の1年は、夫婦にも重くのしかかった。コロナ禍で外出が減り、1LDKの部屋で逃げ場の少ない生活が続いた。

昼はそれぞれの仕事をこなし、夜にJapan Devを進めた。企業からの問い合わせには夜に返信し、求人情報を更新し、バグも修正した。

契約がある以上、止めるわけにはいかなかった。

転機は2020年末頃に訪れる。マーケティングを大きく見直した。

飛び込み営業だけでは、もう伸びない

見知らぬ相手に連絡するだけでは限界があった。2人は集客の方法を広げた。

  • 検索で見つけてもらうための記事制作
  • 週次の求人をまとめたニュースレター配信
  • SNSでの情報発信

特に効果が大きかったのは、検索流入とニュースレターだった。時間はかかるが、積み上げると大きな力になる。

成功事例を見せ、文章を分かりやすくする

企業と採用された人の成功事例をサイトに掲載し始めると、事業は一気に伸び始めた。

さらにサイトの文章を見直し、難しい言葉を減らした。訪問者が「次に何をすればいいか」迷わないよう導線を整えた。

見た目の美しさより、実際に行動してもらうことを優先する考え方に切り替わった。

その結果、2021年半ば頃には2人とも会社員を辞め、Japan Devに専念できるようになった。

売上の波をならすための、次の一手

Japan Devの成長には、コロナ禍の落ち着きも追い風となった。国境が閉じていた間は、日本に移って仕事を探す人の動きが鈍かった。

2021年から2022年にかけて状況が改善すると、日本で働きたい人が戻り、採用も増えた。

ただ、この勢いが続く保証はない。2人は次の手を考え始めた。

信頼を高め、先払い型にも広げる

成功事例をさらに増やし、求人サイトとしての信頼を積み上げる。信頼が十分に蓄積されれば、求人1件ごとに事前に掲載料を受け取る方式も取り入れやすくなる。

日本で働くための情報を増やす

ブログのコンテンツを拡充し、手続きや住む場所の探し方なども扱う。情報が充実すれば、広告など別の収益源も開けてくる。

企業側の操作を楽にして、運営の負担を減らす

採用担当者が自分で求人を更新できる仕組みも整えたい。2人だけの運営では、事務作業・会計・マーケティング・開発まで負担が大きい。企業が自分で更新できるようになれば、その分の手間を減らせる。

最後に残った教訓は「収益を後回しにしない」

無収入の期間から得た教訓ははっきりしている。

熱量だけで走り続ける時間を、長くしすぎないこと。

立ち上げ直後は気持ちが強い。しかし時間が経つにつれ、体力も気力も削られていく。だから早い段階で収益につながる形を作ることが大切で、前進している実感が次の力を生む。

遠回りはあった。それでもJapan Devは、旧来の採用慣習に別の選択肢を示し、企業と海外人材の双方が動きやすい場所を作り上げた。

いまJapan Devは、開発者にとっての総合的な情報源になるという目標に向けて、次の進化を続けている。