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寝室で始めた文字起こしサービスが12年伸び悩み…「技術じゃない」と気づいて年商1.6億円になるまで

7 min read2026年5月19日
寝室で始めた文字起こしサービスが12年伸び悩み…「技術じゃない」と気づいて年商1.6億円になるまで

ビジネス概要

事業タイプ

Other

フェーズ

拡大期

規模感

年商約1.6億円($1 million)規模

概要

雑音や訛りなど自動化だけでは崩れる音声を、人の多段階チェックで高精度な文字起こしに仕上げるサービス。

ターゲット

会議・インタビュー・動画の音声を文字化したい企業の業務担当者

主な打ち手

作業者の得意不得意を前提に、下書きは自動→人が4段階で見直す工程と、得意な人に仕事が届く割り振りを作った。

ストーリーの流れをザッとつかむ

事業の転機をタイムラインで一気読み

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自動文字起こしが当たり前になった今でも、「最後は人の手が必要だ」と感じる場面は少なくありません。雑音、早口、訛り、話者が重なるといった状況で、精度が一気に崩れる瞬間が現場には残っています。

音声文字起こしサービス「Scribie」も、最初から順調だったわけではありません。12年以上続けても成長の道筋が見えず、価格競争にも押され、苦しい時期が長く続きました。それでも同社は、年商約1.6億円($1 million)規模にまで成長しています。

転機は「技術」ではなく、他の要因にありました。何が成長を止め、何が追い風を確かな成果につなげたのか。その中身を追います。

音声を文字にする仕事のあり方が変わり始めた

会話やインタビュー、動画の音声を文字に直すと、あとで必要な部分を探しやすくなる。記事を書いたり、短い投稿文を作ったりもしやすくなる。

少し前までは、音声を聞きながら人が全部タイピングするのが当たり前だった。だが今は、音声がはっきりしていれば、コンピューターがかなりの精度で一気に文字にできる。

それでも現場では、最後は人の手が必要な場面が多い。雑音、早口、訛り、話がかぶる瞬間——こういうところで、自動の文字起こしは急に弱くなる。

この世界で長く戦ってきたのが、インド出身の技術者ラジブ・ポッダール。音声文字起こしサービス「Scribie」を作った人物だ。

ただし、最初の10年は順風満帆とはほど遠かった。大きな会社や、外から大金を集めた会社がどんどん成長する一方で、Scribieは思うように広がらない。生活面の悩みも重なり、「このままじゃいけない」という焦りが積もっていった。

寝室から始まったScribie

ラジブがScribieを始めたのは2007年。もともとプログラマーとして経験があり、大手企業で働いたこともあった。

別の事業がうまくいかず、家計を支えるための「最後の手段」として、寝室でサービスを作り始めた。ちょうどその頃、通話を録音する仕組みが広まり始めていた。録音した音声を「文字にしてほしい」という人が増える。ラジブはそこに賭けた。

読みは当たった。当時は文字起こしの単価が高く、1件約1.4万円($90)ほどで受けていたこともあった。今の相場とは大きく異なる。

その後、自動文字起こしの技術が進んでも、ラジブは急に会社を大きくしなかった。2013年までオフィスすら持たず、寝室とパソコンで十分だと考えていた。

ところが2019年、空気が変わる。私生活の問題が重なり、さらに大手サービスが自動化を武器に価格を下げてきた。12年以上続けてきたのに、成長の道筋が見えなくなった。

ラジブは悩んだ。「人が作業する以上、ミスはゼロにならない」。なのに、仕組みだけをいじって人の作業量を増やそうとしてもうまくいかない。競合のほうが、人を使った作業の回し方がうまかった。

「技術の問題ではない」と気づく

新しい考え方が必要だと感じたラジブは、2019年に、幻覚作用のある成分を含むきのこを使った体験に関心を持ち始めた。体験談や本を読み、やり方や注意点も学んだという。誰にでも合うものではなく、知識なしに試すべきではない、とも話している。

実際に体験したあと、頭の中の見え方が変わった。Scribieの成長を止めていた原因は、技術や仕組みの弱さではなく、「人の扱い方」だったと気づく。

ラジブはそれまで、文字起こしをする人たちを、同じ動きを繰り返す機械のように扱おうとしていた。だが現実の人間には得意不得意があるし、気持ちもある。思いやりを持ち、成長できるよう支える必要がある。そこにやっと目が向いた。

この体験をきっかけに、生活習慣も変えた。電子タバコをやめ、酒もやめ、体重が落ちた。ヨガと瞑想も始めたという。

そして事業のやり方を見直していた時期に、新型コロナが広がった。オンライン会議が一気に増え、「会議の内容を文字にしたい」という需要が爆発した。Scribieにも追い風が吹いた。

自動化が進んでも、人の手が必要な理由

自動の文字起こしは便利だが、音声の質に強く左右される。雑音が多い、話し方にクセがある、発音が聞き取りづらい——こうなると誤変換が増える。

ラジブは、オンライン会議の自動文字起こし機能の精度は95%程度だと見る。一方、人が確認しながら仕上げると99%まで上げられる。この差は小さく見えて、使う側にとっては大きい。

ただし、人が関わるサービスはコストがかかる。大手の自動サービスが安い料金で出てくると、同じ土俵では勝ちにくい。

そこでラジブは、精度の数字だけを追いかけない。大事なのは利用者が満足しているかどうか。問題があれば直す。そういう姿勢が、不満を大きくしないと考えている。

Scribieの武器は「4段階チェック」

Scribieの特徴は、人の作業を重視し、4段階で確認する流れを作ったことだ。

音声を小さな部分に分け、段階ごとに別の担当者が見直す。昔は「1人が作って、もう1人が確認する」2段階が一般的だった。ラジブはそこに3人目、4人目を加えた。

さらに時代に合わせ、最初の下書きはコンピューターで作る。そのあと人が順番に直していき、最後は一番うまい人たちが品質を確認する。

この仕組みにはもう一つ狙いがある。作業者が上達して上の段階に進めるようにすることだ。上の段階ほど短い時間で効率よく稼げるようにしたい、という考えがある。

Scribieには、毎月作業する人が約7,000人いる。登録して試験を通った人まで含めるともっと多い。人数が多いほど、空いている人に仕事を回しやすくなる。

作業者はログインすると、やりたい仕事を選べる。さらに、どの人がどんな話し方や発音に強いかを過去の結果から把握し、得意な人に合った仕事が届きやすいようにしている。

昔は「誰がやっても同じ結果」を目指していた。しかし、人は多様で、完全にそろえるのは無理がある。そこで発想を変え、「得意を生かす」方向に切り替えた。

宣伝よりも、仕組みで回す

利用者の多くは検索から自然にやってくる。特別な広告を打たなくても、長年の実績や過去に書いた記事が集客につながっているようだ。

作業者についても、ラジブは早い段階で「紹介で増える仕組み」を用意した。自分で必死に探し回るより、自然に人が集まる流れを作った。

2019年ごろは、ラジブとフィリピンの外部スタッフ2人で回していた。そこからチームは増え、アメリカの共同オフィスも使うようになったという。

次の山と、起業する人への言葉

Scribieは年商約1.6億円($1 million)規模に届いた。ラジブは「次の段階に入った感覚がある」と言う。次の目標は年商約8億円($5 million)。そのためには運営体制を作り直す必要があると考えている。

これまで大きな外部資金に頼らずに続けてきたが、資金集めに挑戦した時期もあった。ただ当時は、「どこまで大きくできるか」という問いに、自信を持って答えられなかった。それが結果に影響したかもしれない、と振り返る。

今は、外部資金が成長を速めることもあると考える。競合が急成長した背景にも、外部資金の力があったとみている。

最後にラジブが強く言うのは、始めるなら「好きで続けられること」を選べ、ということだ。好きになれないなら無理に続けないほうがいい。楽しめることをやったほうが、長く走れる。

そして、外部資金に頼らず進めるやり方には、無駄を減らし、本当に必要なところに集中する力が育つ、とも語っている。


ストーリーの流れ

ラジブ・ポッダール

インド出身の技術者で、プログラマーとして大手企業で働いた経験もある。別の事業がうまくいかず家計を支える最後の手段として、2007年に寝室で音声文字起こしサービスを立ち上げた。2019年に成長停滞と私生活の問題に直面し、技術ではなく人の扱い方が課題だと捉え直して運営を改善した。

Scribie

Origin

インド出身の技術者ラジブ・ポッダールが音声文字起こしサービス「Scribie」を作った。

  • ラジブはプログラマーとして経験があり、大手企業で働いたこともあった。
Origin

ラジブは別の事業がうまくいかず、家計を支える最後の手段として寝室でScribieを作り始めた。

  • 通話を録音する仕組みが広まり始め、録音した音声を文字にしてほしい人が増えていた。
  • ラジブはその需要に賭けた。
Problem

Scribieは最初の10年は思うように広がらず、成長の道筋が見えない時期が続いた。

  • 大きな会社や外から大金を集めた会社がどんどん成長する一方で、Scribieは伸び悩んだ。
  • 生活面の悩みも重なり、このままじゃいけないという焦りが積もっていった。
Problem

大手サービスが自動化を武器に価格を下げ、同じ土俵では勝ちにくくなった。

  • 人が関わるサービスはコストがかかるため、安い料金の自動サービスが出てくると不利になった。
Insight

ラジブはScribieの成長を止めていた原因が技術ではなく人の扱い方だと気づいた。

  • 人を同じ動きを繰り返す機械のように扱おうとしていたが、現実の人間には得意不得意と気持ちがあると捉え直した。
  • 思いやりを持ち、成長できるよう支える必要があると目が向いた。
Insight

ラジブは自動文字起こしの精度を上げることより、利用者の満足と改善を重視する方針に切り替えた。

95%自動文字起こし精度
99%人の確認込み精度
  • オンライン会議の自動文字起こし機能の精度は95%程度だと見ている。
  • 人が確認しながら仕上げると99%まで上げられると考えている。
  • 問題があれば直す姿勢が不満を大きくしないと考えている。
Action

Scribieは人の作業を重視し、4段階で確認する流れを作った。

  • 音声を小さな部分に分け、段階ごとに別の担当者が見直す設計にした。
  • 最初の下書きはコンピューターで作り、そのあと人が順番に直し、最後は一番うまい人たちが品質を確認する。
Action

Scribieは作業者が上達して上の段階に進める設計に切り替えた。

  • 上の段階ほど短い時間で効率よく稼げるようにしたいという考えがある。
  • 誰がやっても同じ結果を目指す発想から、得意を生かす方向に切り替えた。
Team

Scribieには毎月作業する人が約7,000人いる。

約7,000人毎月作業する人
  • 登録して試験を通った人まで含めるともっと多い。
  • 人数が多いほど空いている人に仕事を回しやすくなる。
Action

Scribieは作業者がログイン後にやりたい仕事を選べるようにした。

  • 過去の結果から話し方や発音の得意不得意を把握し、得意な人に合った仕事が届きやすいようにしている。
Growth

新型コロナの拡大でオンライン会議が増え、会議内容を文字にしたい需要が爆発した。

  • Scribieにも追い風が吹いた。
Growth

Scribieは宣伝よりも検索流入と仕組みで集客が回る状態を作った。

  • 利用者の多くは検索から自然にやってくる。
  • 長年の実績や過去に書いた記事が集客につながっているようだ。
Team

ラジブは作業者が紹介で増える仕組みを早い段階で用意した。

  • 自分で必死に探し回るより自然に人が集まる流れを作った。
Team

2019年ごろはラジブとフィリピンの外部スタッフ2人で回していたが、その後チームは増えた。

ラジブとフィリピンの外部スタッフ2人2019年ごろの運営体制
  • アメリカの共同オフィスも使うようになったという。
Monetize

Scribieは年商約1.6億円($1 million)規模に届いた。

年商約1.6億円($1 million)年商規模
  • ラジブは次の段階に入った感覚があると言う。
Scale

次の目標として年商約8億円($5 million)を掲げ、運営体制を作り直す必要があると考えた。

年商約8億円($5 million)次の目標
  • これまで大きな外部資金に頼らずに続けてきた。
Scale

ラジブは外部資金が成長を速めることもあると考えるようになった。

  • 資金集めに挑戦した時期もあったが、当時はどこまで大きくできるかに自信を持って答えられなかったと振り返る。
  • 競合が急成長した背景にも外部資金の力があったとみている。

3層インサイト

Scribieは12年以上続けても成長の道筋が見えない時期があり、価格競争にも押されて苦しい期間が長く続いた。
Scribieは年商約1.6億円($1 million)規模に到達した。
創業者ラジブ・ポッダールは2007年に寝室でScribieを始め、別事業がうまくいかず家計を支える「最後の手段」としてサービスを作り始めた。
当時は文字起こし単価が高く、1件約1.4万円($90)ほどで受けていたこともあった。
ラジブは2013年までオフィスを持たず、寝室とパソコンで十分だと考えていた。

品質が要求される業務では、自動化の精度限界を前提に「人による最終品質保証」を組み込むことで差別化できる。

根拠

-ラジブはオンライン会議の自動文字起こし精度を95%程度、人が確認しながら仕上げると99%まで上げられると見ている。

-Scribieは音声を小さな部分に分け、段階ごとに別担当者が見直す4段階チェックを採用し、最初の下書きはコンピューターで作ってから人が順番に直し、最後は一番うまい人たちが品質確認する流れにした。

成長を止めている原因が技術ではなく運用や人の設計にある場合、仕組みの作り直しが成長の転機になりうる。

根拠

-2019年に私生活の問題が重なり、大手サービスが自動化で価格を下げたことで、成長の道筋が見えなくなった。

-2019年の体験をきっかけに、成長を止めていた原因は技術や仕組みではなく「人の扱い方」だとラジブが気づいた。

-Scribieは音声を小さな部分に分け、段階ごとに別担当者が見直す4段階チェックを採用し、最初の下書きはコンピューターで作ってから人が順番に直し、最後は一番うまい人たちが品質確認する流れにした。

人の作業が介在する業務では、標準化で均一化するよりも、適性に合わせた配分設計のほうが成果を出しやすい場合がある。

根拠

-Scribieには毎月作業する人が約7,000人おり、作業者はログイン後にやりたい仕事を選べ、過去結果から得意な話し方・発音に強い人へ仕事が届きやすいようにしている。

-昔は「誰がやっても同じ結果」を目指していたが、発想を変え「得意を生かす」方向に切り替えたと述べられている。

需要が急に増えたとき、すでに対応できる体制が整っていると、その波に乗って成果を出しやすい。

根拠

-新型コロナの拡大でオンライン会議が増え、「会議の内容を文字にしたい」需要が爆発し、Scribieにも追い風が吹いた。

-Scribieは音声を小さな部分に分け、段階ごとに別担当者が見直す4段階チェックを採用し、最初の下書きはコンピューターで作ってから人が順番に直し、最後は一番うまい人たちが品質確認する流れにした。

-Scribieには毎月作業する人が約7,000人おり、人数が多いほど空いている人に仕事を回しやすいと述べられている。

広告への依存を減らすには、検索からの流入や紹介など、時間をかけて積み上がる集客の入口を作り続けることが有効になりうる。

根拠

-利用者の多くは検索から自然流入し、特別な広告を打たなくても長年の実績や過去記事が集客につながっているとされる。

-作業者についても、ラジブは早い段階で「紹介で増える仕組み」を用意した。

自動化を導入したが、一定条件で品質が落ちて顧客不満が出る。

1自動処理の出力に対して、人が最終確認する工程を明示的に追加し、品質保証の責任点を決める。
2作業を小さな単位に分割し、複数人が段階的にレビューする多段階チェックを設計する。
3「精度」など単一指標だけでなく、顧客の不満・修正要望を収集し、問題が出た箇所を優先して工程を改善する。

価格競争が激しく、同じ土俵(低価格)では勝ちにくい。

1価格だけで競合と比べられないよう、顧客が重視すること(例:仕上がりの品質、修正への対応)を把握し、それをサービスの流れに組み込む。
2品質を担保するための工程(レビュー段階、担当者の役割)を可視化し、提供価値として説明できる形に整える。
3コスト増に直結する工程は、前段を自動化しつつ後段を人が担うなど、工程ごとに最適な分担を再設計する。

人手作業のばらつきが大きく、標準化しても成果が安定しない。

1作業者ごとの得意領域を過去実績から記録し、案件特性に合わせて割り振るルールを作る。
2作業者が取り組む案件を選べる余地を残し、ミスマッチによる品質低下や停滞を減らす。
3上の段階ほど短時間でこなせるよう流れを見直し、上達や昇格が報酬や効率の向上につながる仕組みにする。

広告費を増やさずに安定した集客・採用を作りたい。

1検索で見つかる情報資産(事例、解説、実績)を継続的に蓄積し、自然流入の入口を増やす。
2顧客や作業者が紹介しやすい導線(紹介ルール、メリット、手順)を用意し、紹介が回る仕組みにする。
3短期施策よりも、長期で積み上がるチャネルの成果指標(流入経路、継続率)を定点観測し、改善を繰り返す。