記事一覧に戻る

約60万円から始めた服作り。「何がほしい?」と聞き続けたら、TikTokで注文が止まらなくなった日

7 min read2026年6月22日
約60万円から始めた服作り。「何がほしい?」と聞き続けたら、TikTokで注文が止まらなくなった日

ビジネス概要

事業タイプ

Other

フェーズ

成長期

どんな事業?

体形・サイズ・年齢に関係なく誰でも歓迎される服を、注文を受けてから1人で手縫い製作する受注生産型アパレルブランド。ニューヨークの小規模店舗から仕入れた布を使い、幅広いサイズ展開と細かな調整に対応し、モデルや布の種類からも商品を探せるようにして販売している。

💰 いくら儲かった?

月売上およそ150万〜190万円($10,000〜$12,000)規模。2021年春にはニュース記事とTikTok動画の拡散が重なり、2日間で普段の1か月分に近い売上が出て新規注文を一時停止した。

💡 成功の気づき × 打ち手
1
気づき

2020年秋ごろからSNSでフォロワーに「どんな服がほしいか」「どんな形がいいか」を直接質問し、返ってきた答えをラフ画や写真で見せて意見を集めるやり方を強めたところ、買い手が制作過程に参加することで「自分の服だ」と感じるようになった。

打ち手

質問→ラフ画提示→選択肢で確認という流れを新シリーズ制作に組み込んだ結果、発売初日の売上が過去の3倍になったこともあった。

2
気づき

注文を受けてから作る受注生産方式は在庫リスクと大量廃棄を避けられる一方、担保がないため融資では不利になり、数字や資料がそろっていても断られた。それでもミシン3台で1人製作・在庫ゼロの体制なら、売れ残りコストなしで事業を継続できると判断した。

打ち手

約60万円の小規模な資金集めで創業し、別の仕事と並行しながら注文が入った分だけ作る体制を維持。ニューヨークの家族経営店から倉庫在庫や処分予定の布を安く仕入れ、地域の店舗支援とコスト削減を両立させた。

3
気づき

2021年春、大手ニュースサイトの取材記事で「本気で寄り添うブランド」として紹介された約1か月後に、TikTokで第三者がサイズの幅広さやモデルの多様性を評価する動画を投稿し、2つの露出がほぼ同時期に重なった。

打ち手

注文殺到で新規受付を一時停止したが、SNSで制作状況を伝え続けて買い手との接点を切らさなかった。サイト再開後は新シリーズを出していなくてもすぐに購入が入り、一過性の話題を継続的な注文につなげた。

月の売上は約150万〜190万円($10,000〜$12,000)規模と紹介されることもある。けれどSmartGlamourの始まりは、たった約60万円($4,000)を集め、小さく作って売るところからだった。

「ファッションは一部の人のもの」。そんな空気に違和感を抱きながら、体形やサイズに関係なく誰もが歓迎される買い物体験を作りたい。マロリーはその思いを事業として形にしていく。

大きな戦略転換があったわけではない。聞き方を少し変え、買い手と一緒に作る。その積み重ねが、注文の流れまで変えていった。

「服は一部の人のもの」という空気が嫌だった

マロリーは子どものころから服が好きだった。けれど「ファッション」という言葉に漂う気取った感じがどうしても好きになれなかった。選ばれた人だけが楽しむもので、そこに入れない人が最初からいる。そんな世界に見えた。

マロリーが信じていたのはもっとシンプルなことだ。服には人の気持ちを明るくする力がある。自信を与えてくれることもある。体形やサイズに関係なく、今の自分のままで歓迎される。そんな買い物体験を作りたい。その思いがSmartGlamourの出発点になった。

服作りを学んだのに、現場は「会社の都合」が先だった

マロリーはニューヨークの学校で服作りを学び、業界で働き始めた。好きなことを仕事にできるはずだった。

でも現場で見えたのは、作る楽しさより会社の都合が優先される現実だった。創造性より利益。売れる人だけを相手にする空気。働く人に無理をさせる仕組みもあった。

職場では納得できない扱いが続いた。工場や仲介業者とのやり取りでも疑問が積み重なっていく。より良い環境を求めて転職を繰り返す人の話も聞いた。法律を守らない働かせ方が当たり前になっている場面にも直面した。買う側が想像する以上に、問題が多い世界だった。

安定を捨てたら、やっと息ができた

会社で出世する道はあった。それでもマロリーの気持ちは沈んでいった。作りたいものが作れない。発想も押さえつけられる。そこでマロリーは、安定した給料の仕事を離れる決断をする。

生活のために、仕事は何でも引き受けた。教える仕事、服の直し、オーダーメイドの制作、裕福な客の専属仕立て。できることを全部やった。

その時期、パートナーとの会話が大きな転機になる。服には人を変える力がある。嫌な面ばかり見てきたけれど、本当は人の表現や自信を支えるものにしたい。マロリーはその思いを言葉にした。

パートナーは、会社勤めのころより今のマロリーのほうが生き生きしていると気づく。マロリーの根っこにあるのは、体形や年齢に関係なく誰もが大切にされていると感じられることだった。「なぜ服の世界はこうでなきゃいけないのか」。その疑問が、SmartGlamourの出発点になった。

約60万円($4,000)から始めて、まずは小さく作って売った

問題は資金だった。大きな金額を出してくれる知り合いはいない。だから2013年、マロリーは小さな資金集めをして約60万円($4,000)を集めた。

そのお金で少量の服のシリーズを作り、同時に別の仕事も続けた。うまく回り始めたら別の仕事を減らし、SmartGlamourに時間を割いていく。最初から大きく勝負するのではなく、続けられる形で始めた。

サイトも必要だったが、外注する余裕はない。基本的なサイト作りができる父親に助けてもらい、最低限の形を整えた。のちに服が好きなデザイナーとも協力し、物々交換のような形で見せ方も磨いていく。

注文が入ってから作る。だから在庫を抱えない

SmartGlamourの基本は「注文を受けてから作る」やり方だ。マロリーはミシンを3台持ち、デザインを描き、手で縫い上げる。写真撮影もサイト更新も問い合わせ対応も、ほとんどを自分でこなす。手伝いはSNS対応をする短時間スタッフが少しだけ。

注文後に作るから、作り置きの在庫を抱えずに済む。売れ残った服を大量に廃棄することも減り、無駄の少ない運営につながる。

布の多くはニューヨークの小さな店から仕入れる。家族で営む店も多く、家賃が高くて移転を繰り返している店もある。そこには倉庫で眠っていた布や、処分されそうだった布が混ざることもある。品質に問題のない布を手ごろに手に入れられて、地域の小さな店も支えられる。マロリーはそこに意味を感じていた。

ただ、このやり方は融資では不利になりやすい。以前相談したとき、数字や資料はそろっていても、担保がないことで断られた。「先に作って売る」商売と違うため、理解されにくい壁もあった。

「何がほしいか」を本気で聞くと、服の作り方が変わる

SmartGlamourが目指すのは、サイズが大きい人も小さい人も、年齢が違っても、誰もが大切にされていると感じられることだ。幅広いサイズを用意し、必要なら細かな調整も選べるようにしている。中間サイズで困る人にも対応しやすい。

2020年秋ごろ、世の中の状況に合わせてマスク作りもした。その後はSNSの使い方を工夫し、小さなシリーズを作るときにフォロワーへ直接聞くやり方を強めた。

どんな服がほしいか。どんな形がいいか。質問を重ねて返ってきた答えをもとに、写真やラフ画を見せながら意見を集める。作り手だけで決めない。買い手と一緒に作る。

すると発売初日の売れ方が変わった。過去と比べて初日の売上が3倍になったこともあった。作る過程に参加できたことで、買い手が「自分の服だ」と感じられるようになったからだ。

サイトでも「選びやすさ」を追求した

体のラインが出る服が苦手な人もいる。動きやすい形を探す人もいる。自分と体つきが近いモデルを見て選びたい人もいる。SmartGlamourでは服の種類だけでなく、モデルや布の種類からも探せるようにした。

もし希望のものが見つからなければ、相談して特別に作ることもできる。

モデル選びにも特徴がある。実際とかけ離れた見せ方で過度な期待を持たせるのではなく、実際の体形に近い人たちが着た姿を見せたい。そこでさまざまな人に声をかけ、撮影に協力してもらった。協力した人は、体に合わせて作られた服を受け取れる。作り手とモデルの両方にメリットがある形だった。

ニュース記事とTikTokが重なって、注文が爆発した

2021年春、SmartGlamourは一気に注目を集める。きっかけは、ほぼ同じ時期に重なった2つの出来事だった。

1つ目は、大手ニュースサイトでの取材記事。多くの人が共感し、広く読まれた。別のブランドの動きが「本気で寄り添っていない」と批判される流れの中で、SmartGlamourが良い例として紹介された。

そして約1か月後、今度はTikTokで別の人が「誰でも買いやすい会社」を評価する動画を作り、SmartGlamourを取り上げた。モデルの体形やサイズの幅広さ、選び方の工夫が伝わり、動画は一気に拡散した。2日間で、普段の1か月分に近い売上が出た。

注文が殺到し、マロリーは一時的に新規注文を止めざるを得なかった。一人で作り続けるには限界がある。それでもSNSで状況を伝え続け、買い手との連絡を絶やさなかった。制作が追いついてサイトを再開すると、新しいシリーズを出していなくても、すぐに買う人が現れた。

大きく変えたのは戦略じゃない。「聞き方」を少し変えただけである

SmartGlamourは、毎月およそ150万〜190万円($10,000〜$12,000)程度の売上になっていると紹介されている。今も注文は積み上がり、制作は続く。

うまくいった理由は、まったく別のことを始めたからではない。もともと人の声を聞き、希望に合わせて作ってきた。そこに「質問を増やす」「答えをすぐラフ画などで見せる」「選択肢を出して確認する」という流れを加えただけだった。

買い手は「見てもらえている」「話を聞いてもらえている」と感じやすくなる。SmartGlamourの広がりは、偶然だけで起きたものではない。小さな調整の積み重ねが、結果を大きく変えた。


3層インサイト

SmartGlamourは当初、約60万円($4,000)を集めて小さく作って売る形で始まった。
マロリーは2013年に小さな資金集めをして約60万円($4,000)を用意し、その資金で少量の服のシリーズを作った。
SmartGlamour立ち上げ初期は別の仕事も続け、事業が回り始めたら別の仕事を減らしてSmartGlamourに時間配分を移した。
外注する余裕がなく、父親の助けで基本的なサイトを作り、のちにデザイナーと協力して物々交換のような形で見せ方を磨いた。
SmartGlamourは「注文を受けてから作る」方式で、在庫を抱えにくくし、売れ残り廃棄を減らす運営につなげた。

小さな初期資金でも、少量生産と段階的な時間配分の移行で事業を立ち上げられる。

根拠

-SmartGlamourは当初、約60万円($4,000)を集めて小さく作って売る形で始まった。

-SmartGlamour立ち上げ初期は別の仕事も続け、事業が回り始めたら別の仕事を減らしてSmartGlamourに時間配分を移した。

-マロリーは2013年に小さな資金集めをして約60万円($4,000)を用意し、その資金で少量の服のシリーズを作った。

受注後生産は在庫リスクと廃棄を減らせる一方、金融機関に理解されにくく資金調達の障壁になりうる。

根拠

-SmartGlamourは「注文を受けてから作る」方式で、在庫を抱えにくくし、売れ残り廃棄を減らす運営につなげた。

-注文後生産のやり方は融資で不利になりやすく、数字や資料がそろっていても担保がないことで断られたことがある。

顧客の要望を質問で具体化し、早い段階でラフや画像を見せて確認するプロセスは、発売直後の売上を押し上げうる。

根拠

-フォロワーに質問を重ね、写真やラフ画を見せて意見を集める形にした結果、発売初日の売上が過去比で3倍になったことがある。

-成功要因として、質問を増やす、答えをすぐラフ画などで見せる、選択肢を出して確認するという流れを追加したと述べられている。

-2020年秋ごろに世の中の状況に合わせてマスク作りを行い、その後SNSでフォロワーに直接聞きながら小さなシリーズを作るやり方を強めた。

外部への露出で注文が急増した際は、受注を一時制限しながら状況を継続的に発信することが、信頼の維持と再開後の購入につながりうる。

根拠

-2021年春に大手ニュースサイトの記事と、その約1か月後のTikTok動画が重なって注目が集まり、2日間で普段の1か月分に近い売上が出た。

-注文が殺到して一時的に新規注文を停止し、SNSで状況を伝え続けて買い手との連絡を絶やさず、サイト再開後は新シリーズがなくても購入が発生した。

外注が難しい局面では、身近な協力者や物々交換型の協業で必要機能(制作・見せ方)を補完できる。

根拠

-外注する余裕がなく、父親の助けで基本的なサイトを作り、のちにデザイナーと協力して物々交換のような形で見せ方を磨いた。

初期資金が小さく、いきなり専業で事業を回すのが難しい。

1初期は少量の試作品・小ロットを作って販売し、需要と原価構造を確認する。
2既存の収入源を残したまま開始し、売上が安定したタイミングで稼働時間を段階的に移す。
3外注が難しい作業は、身近な協力者に手伝ってもらったり、お互いに得になる形で協力し合ったりして、最低限の体制を整える。

在庫リスクや廃棄を抑えたいが、供給体制と資金繰りの両立が課題になっている。

1受注後に生産する商品ラインを設け、在庫を持つ範囲を意図的に限定する。
2受注から納品までの工程と所要日数を明確にし、顧客へ事前に伝える。
3資金が必要な場合は、担保がないと融資を断られる可能性を前提に置き、前払い受け取りや分割納品、支払い条件の調整など別の方法を検討する。

新商品が当たらず、発売初動の売上が伸びない。

1顧客に「欲しい形・使い方・気になる点」を質問し、回答をまとめて何を作るか言葉にする。
2要件をもとにラフ案や参考画像を提示し、複数の選択肢で追加確認を取る。
3発売前に「顧客の回答がどう反映されたか」を示し、参加感を作る。

外部露出で注文が急増し、供給能力を超えてしまう。

1供給能力を超えた時点で新規受注を一時停止し、再開条件と目安時期を明確にする。
2進捗・遅延見込み・対応方針を定期的に発信し、問い合わせ導線を一本化する。
3再開後も新作投入に頼らず、既存商品の購入導線を整えて需要を受け止める。