月額課金が当たり前になった今でも、「それしかない」と決めてしまうと、伸びるはずの芽を摘んでしまうことがある。
エンジニアだったFedも、仕事を辞めてから次に何を作るか迷い、手がかりを求めてオンラインコミュニティを長い時間かけて見て回った。宣伝に使えるお金も時間も限られる。そんな状況の中で、コミュニティの力を借りながら収益の形を変えていく。
結果として、The Hive IndexとGummy Searchの2つのサービスは、ほぼひとり運営のまま合計で約1,100万円規模(約$75,000)の収益につながった。月額課金にこだわらず、使われ方に合わせて試した選択が、どこで効いていったのか。
コミュニティをお金に変える、ひとり起業の話
SaaSと呼ばれるネットサービスでは、毎月お金を払ってもらう「月額課金」が定番になっている。毎月の売上が読みやすく、続けてもらいやすいからだ。
でも、作りはじめの時期に月額課金だけに決めてしまうと、逆に伸びるチャンスを逃すことがある。
エンジニアだったFedは、コミュニティをうまく使いながら、2つのサービスで収益の形を変えていった。The Hive IndexとGummy Search。どちらも大きなチームではなく、ほぼひとりで回しながら、合計で約1,100万円規模(約$75,000)の収益につながった。
鍵になったのは2つある。サービスの使われ方に合わせて「月額課金以外」も試したこと。そして、コミュニティからの強い応援を味方につけたことだ。
仕事を辞めて、コミュニティを探し回った
Fedはエンジニアとして働いていた。けれど、自分のアプリを作りたくなって仕事を辞めた。
次に何を作るか。そのヒントを探すために、個人で起業する人たちが集まるオンラインコミュニティを、長い時間かけて見て回った。そして「良さそうな場所」をまとめたリストを作った。
最初は友人に見せるためのメモのようなものだった。それが少しずつ広まり、やがてThe Hive Indexというサイトになった。公開すると、すぐに人気が出た。
月額課金が合わないサービスもある
The Hive Indexの目的はシンプルだ。「自分に合うコミュニティを見つけること」。
つまり、利用者は気に入ったコミュニティを見つけたら、もうこのサイトを毎月使い続ける理由がなくなる。こういうサービスに月額課金をつけると、利用者から見ると不自然になってしまう。
そこでFedは発想を変えた。お金を払うのは利用者ではなく、コミュニティの運営者。サイトの目立つ場所に載せる「スポンサー掲載」で収益化した。
The Hive Indexが伸びた理由
The Hive Indexが育ったのは、Fedひとりの力だけではない。妹の協力が大きかった。
Fedが開発や運営を進める一方で、妹は面白い起業フォーラムやコミュニティを探し、手作業でリストに追加していった。
ただ集めただけの一覧ではない。中身を確認して、ちゃんと選んで載せる。その丁寧さが強みになった。コミュニティの管理者ともつながりができ、ポッドキャストやイベントに呼ばれることも増えた。
今ではマーケティング、Web3、スケートボードなど幅広い分野を含む1,000以上のグループが載っている。有料メンバー制度があるか、ニュースレターがあるか、求人掲示板があるか、といった特徴でも分類されている。
無料コミュニティのほうが人は集まりやすい。でも有料コミュニティを探す人もいる。お金を払うことで参加者の本気度が上がり、安心できると考える人がいるからだ。
広告ではなく、スポンサーが自然だった
Fedは広告や紹介料の仕組みも試した。けれど、サイトの見た目が崩れる感じがしてやめた。
最終的にいちばん自然だと感じたのが、スポンサーとして上位に表示する方法だった。
The Hive Indexはこのスポンサー収益で、月に約7万円ほど(約$500)を生み出すようになった。無料で公開しているサイトとしては十分な結果で、次のサービスへ進むための入口にもなった。
Redditでの苦労が、次のサービスを生んだ
The Hive Indexを広めるために、FedはRedditをよく使っていた。広告にお金をかけられず、検索エンジン対策に時間を割く余裕もなかった。だから、人が集まる場所で「今まさに必要としている人」を見つけるしかなかった。
ただRedditは空気がある。あからさまな宣伝をすると嫌がられるし、コミュニティから追い出されることもある。
Fedが取った方法は、投稿で売り込むのではなく、コメント欄で会話に混ざりながら自然に紹介することだった。実際、使っていた約50のコミュニティのうち、追い出されたのは1つだけだった。
とはいえ、毎回手作業で「紹介できそうな会話」を探すのは大変だった。そこでFedは、キーワードを入れると関連する話題を集めてくれるプログラムを書いた。宣伝先を探す時間は、1日10分ほどにまで減った。
この仕組みは自分だけで使うにはもったいなかった。Fedは一般向けに公開することにした。ログイン、登録、データ保存ができる形に整え、いくつかのマーケティング系コミュニティに出した。
反応は大きかった。こうしてGummy Searchが広がっていった。
使い方は「宣伝探し」だけじゃなかった
利用者は会話を探すだけでなく、新しいビジネス案を考えたり、コンテンツ案を作ったり、競合を調べたりと、いろいろな目的で使い始めた。
Fedは反応を見てすぐに機能を足し、要望に合わせてサービスを育てていった。
月額課金が合わない人が多かった
Gummy Searchは便利だ。けれど、毎月使う人ばかりではない。必要なときに1回か2回使えば十分という人も多い。そうなると月額課金は不利になる。「今月はもう使わない」と解約されやすいからだ。
Fedは価格設定に悩んでいた。そんなとき、解約した人に理由を聞いた。
返ってきた答えはこうだった。
「サービスは好き。でも毎月は使わない。買い切りみたいに、一生使えるプランがあるなら買う」
Fedはここで決断する。思い切って「買い切り型の生涯プラン」を作った。
生涯プランが2か月で5万ドルを生んだ
Fedが用意した生涯プランは、月額料金の約10か月分にあたる価格だった。
月額で続けるか迷っていた人たちが、一気に生涯プランへ流れた。結果、2か月で数百件が売れ、合計で約750万円が入った($50,000)。
Fedは後に生涯プランの販売を止めた。それでも、初期の成功にとって重要だったと言う。サービスの価値を確かめられ、改善に使える資金も手に入ったからだ。
さらに追い風になったのが、Facebook上の「お得な買い切りプラン」を紹介し合うコミュニティだった。そこでは利用者が自発的に質問に答え、Fedの代わりに良さを説明する場面もあった。
Fedはここで学んだ。コミュニティは、広告費がない時期の事業を左右するほど強い。
Fed自身、SaaSの理想は月額課金のような継続収益だと考えている。けれど、立ち上げ期に生涯プランを出すことは、価値の確認、資金づくり、新しい利用者の獲得に役立つ場合がある。
今は月額課金に加えて、1日だけ使える「デイパス」のような仕組みも用意し、迷っている人を取りこぼさない工夫を続けている。
落ち込んだときほど、ユーザーと話す
Gummy Searchの収益は、これまで合計で約1,100万円ほど(約$75,000)になった。生涯プランのような一回払いも多いので、一般的な「継続売上」とは少し違う。それでも現在も月に約15万〜22万円ほどの収入がある($1,000〜$1,500)。
Fedはこれから、Reddit以外の場所にも対応を広げたいと考えている。宣伝はオンラインでの交流が中心だ。SNSで開発の進み具合を公開し、複数のコミュニティに投稿して利用者と会話している。
起業の初期は、気分が上下しやすい。うまくいっていると思った直後に解約が出て、自信がなくなることもある。
そんなときこそ、今使っている利用者と話す。何が役立っていて、何が足りないのかを聞く。それがいちばん効く、とFedは言う。
無理なペースを避ける
Fedは、短期間で次々にサービスを出す有名な起業家のやり方も参考にした。けれど、同じペースで大量に作ることは目指さなかった。
大切なのは「すばやく出す習慣」を身につけること。そう考えた。
個人で起業する人は、働き方が極端になりやすい。昼はフルタイムで働き、夜や週末に限界まで作業するか。逆に何もしないか。ゼロか100かになってしまう。
Fedがすすめるのは中間だ。生活費のためにフリーランスや契約の仕事をして、時間とお金の余裕を作る。プロダクトが伸びてきたら、少しずつそちらに比重を移す。
そうすれば、焦りから短期的な判断ばかりする状態を避けやすくなる。
Fedの話から見える収益化のヒント
- サービスの使われ方によって、月額課金が合わないことがある
- 一覧サイトのように「一度目的を果たしたら終わる」サービスは、スポンサーなど別の収益化が自然になりやすい
- 利用頻度が低いツールは、生涯プランや短期パスがあると迷っている人を取りこぼしにくい
- 価格設定のヒントは、解約者や利用者との会話から見つかる
- コミュニティの応援は、広告費が少ない時期の大きな武器になる
