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元議会スタッフが「政治対応をSaaS化」で年2800万円。スタートアップ支援の全戦略

8 min read2026年3月8日
元議会スタッフが「政治対応をSaaS化」で年2800万円。スタートアップ支援の全戦略

ビジネス概要

事業タイプ

Agency

フェーズ

立ち上げ期

規模感

創業から9か月で年間売上見込みは約2,800万円($180,000)

概要

スタートアップが規制当局・議会に自社の実情を伝え、新しい法律への対応や政府窓口との接続を進めるためのロビー/政策対応支援を提供する事業

ターゲット

規制対応が必要なスタートアップの経営者

主な打ち手

献金で法案を動かす型ではなく、新しい法律の理解・対応支援と政府側に実情を分かりやすく伝える活動に注力した

30秒で分かる

1元議会スタッフ2人が9か月で年商約2,800万円。

スタートアップ向け政治対応支援の会社を立ち上げた

コンサルで稼ぎつつ道具化も進めた

2入口がない問題を見つけた

規制が先に決まりやすい

小さな会社は声の届け先が分からない

人脈も予算も足りない

32人の経験が土台になった

元軍人で議会の政策担当も経験した人がいた

研究機関などで政策と現場をつないだ人がいた

2016年ごろ同じ職場で議論が続いた

4まずは「通じる状態」を作った

安い価格で政策アドバイスを提供した

献金で動かす手法は合わないと判断した

制度の理解と窓口特定を支援した

5伸びたのは紹介と発信だった

顧客は紹介で少しずつ増えた

記事を積み重ね定期的に発信した

人脈は全部は公開せず慎重に動いた

6本質は「政治の翻訳」だった

本質は、政治を動かす前に「現場の話が通じる入口」を作ることだった。


ストーリーの流れ

Problem

規制当局の監視が強まる中でスタートアップは現場に合わないルールが増えても声の届け先が分からない状態に置かれている。

  • 意見を言いたくても入口が見つからず制度だけが先に決まっていく感覚に追い込まれる。
Problem

ロビー活動は大企業のものという空気がスタートアップを政治から遠ざけている。

  • 人脈も予算もない会社にとって政治は関係ないのではなく関わりたくても関われない領域になりがちである。
Insight

大企業と小さな会社の資金格差が政策への影響力格差を生み世論が反映されにくい構造を固定化している。

  • ロビー活動に約1億5,000万円($1,000,000)を使える会社とゼロの会社では前者が圧倒的に有利になる。
Insight

高額報酬の顧客が優先される結果として多くの創業者が本気で話を聞いてくれる相手を見つけられない。

  • ジェイソンはその帰結として政府への信頼が過去最低レベルまで落ちていると見ていた。
Team

ジェイソン・フライとメアリー・ジョーンズは政治と政策の現場経験を背景に問題意識を共有した。

  • ジェイソンは議会で政策を扱う役職を歴任し議員の立法担当責任者として働いた時期もあった。
  • メアリーは10年以上にわたって大学や研究機関やシンクタンクで研究成果を政策担当者に届ける役割を担った。
Insight

2016年ごろの出会いを通じて政治の世界でテクノロジーが役に立つのかという問いが事業構想へつながった。

  • 同じシンクタンクの別部署で同じオフィスを使っていた縁で会話が増えた。
Action

2022年初めに2人は同時に仕事を辞めTerrapin Strategyを立ち上げた。

2022年初め同時退職と創業
  • パンデミックで在宅勤務になりスタートアップの世界に目が向いたときに小さな会社向けのロビー支援を本気で形にしようと考えが固まった。
Action

まず需要検証として手の届きやすい価格でロビー活動や政策アドバイスの提供を始めた。

  • 現場で学びながらサービスの形を整えていった。
Action

献金で法案を動かす旧来型ではなく新しい法律の理解と対応支援および実情を伝える活動に勝ち筋を置いた。

  • 政治を動かすよりまず通じる状態を作ることを優先した。
Action

政府対応の実務を方向づけと窓口特定から設計し面談につなげるプロセスとして運用した。

  • 会社の目標が政府の現状とズレているなら近い制度や流れに合わせて考え直す必要がある。
  • どの部署が担当で誰が制度を運用しているのかを特定しこの制度に合う企業がいると伝える。
Growth

顧客は紹介で少しずつ増え創業から9か月で年間売上見込みは約2,800万円($180,000)まで伸びた。

年間売上見込みは約2,800万円($180,000)創業9か月時点の売上見込み
創業から9か月初期成長の節目
  • 2人はコンサルにとどまらず政治対応をSaaS化できないかという挑戦を始めている。
Action

スタートアップと議員や行政側をつなぐ仲介役として関心企業を集め政治側の関係者と結びつけた。

  • どちらか一方の都合だけでなく双方にとって意味のある形を目指している。
Growth

顧客獲得のために記事を積み重ね定期的に情報発信して学びを隠さず共有した。

  • 完璧ではないと認め学びながら進んでいると発信することがメアリーの心理的負担を軽くした。
  • 政府内の人脈をすべて表に出すことはせず慎重さを保った。
Monetize

支援会社として得た利益を再投資してプロダクト開発に充てSaaS展開を見据えた。

  • 政府対応にも専用の道具が必要だという考えがプロダクト化の起点になった。
Scale

政策の動きを把握し政府との関係を一元管理できるプラットフォームを試作品として目指している。

  • 開発中のアプリはOperatorとUpstreamの2つである。
  • Operatorは法的なやり取りも含め連絡や記録を管理できるCRMのような仕組みを目指している。
  • Upstreamは将来的に政府資金の情報や担当者とのやり取りが成果につながったかまで追えるようにしたい。
Problem

必要なソフトやデータベースが想像以上に高額で手順の標準化にも時間がかかるという誤算に直面した。

  • 問題が複雑で同じ手順を繰り返せる形に整理するだけでも時間がかかった。
Problem

政治の世界の保守性が新しいテクノロジー導入への疑いを生み設計の難易度を上げている。

  • 確立されたやり方を尊重しながら別の形に変えていく必要がある。
  • 露骨な反対は少なくても失敗を待っているような空気を感じることがある。
Action

2人は逆方向に進む覚悟を決め目指す姿からぶれないことを最大の課題として前進している。

  • 政治の世界は変わりにくいが変えられたときの意味は大きいと捉えている。

規制当局の監視が強まるほど、スタートアップは「制度だけが先に決まっていく」という感覚に追い込まれる。現場に合わないルールが増えても、どこに声を届ければいいのか分からない。意見を言いたくても、入口が見つからない。

ロビー活動は大企業のもの——そんな空気がある。人脈も予算もない会社にとって、政治は「関係ない」のではなく「関わりたくても関われない」領域になりがちだ。

その壁を壊そうと、2人が動き出した。創業から9か月で年間売上見込みは約2,800万円($180,000)。コンサルにとどまらず、政治対応をSaaS化できないか——その挑戦が始まっている。

ロビー活動をSaaSにできるのか

近年、テクノロジー企業は政府から厳しい目を向けられることが増えた。暗号資産への取り締まり、大企業への訴訟、労働組合の動き。ニュースを追うほど、企業が規制当局と向き合う場面が増えているのが分かる。

ワシントンでは、大企業が多額の資金を投じてロビー活動を行う。法律や制度が動く場所に、人と金を張りつけられるからだ。

しかしスタートアップや小さな会社は違う。「この制度は現場に合っていない」「新しい技術がある」と伝えたくても、やり方も人脈も予算も足りない。声を出したいのに、入口が遠い。

その壁を壊そうとしたのが、ジェイソン・フライとメアリー・ジョーンズだ。2人はTerrapin Strategyを立ち上げた。狙いはシンプルで、スタートアップでも政治の場で意見を届けられるようにすることだ。

創業から9か月で年間売上見込みは約2,800万円($180,000)まで伸びた。しかも2人は、ただのコンサルで終わらせる気はない。政治の世界にテクノロジーを持ち込み、いずれはSaaSとして展開しようとしている。

議会の近くで生まれた出会い

ジェイソンは子どものころから、家の中に政治があった。父はレーガン支持、母はモンデール支持。意見が真逆でも同じ屋根の下で暮らす環境の中で、勝ち負けより「どうやって一緒に前に進むか」を考えるようになった。

同時多発テロの後、ジェイソンは軍に入り、イラクへも複数回派遣された。帰国後は政府の仕事に戻り、議会で政策を扱う役職を歴任。議員の立法担当責任者として働いた時期もあり、政治の最前線の空気を肌で知っていた。

一方のメアリーは、10年以上にわたって大学や研究機関、シンクタンクで働いた。研究成果を政策担当者に届け、必要な人と人をつなぎ、組織運営まで担う立場へと成長していった。法律と経済を扱う組織の責任者も務めた。

2人が出会ったのは2016年ごろ。同じシンクタンクの別部署でありながら、同じオフィスを使っていた縁で自然と会話が増えた。話題はいつも似ていた。「政治の世界でテクノロジーは役に立つのか」「普通の人や小さな会社は、どうすれば力を取り戻せるのか」

少数に力が集まりすぎている問題

議会の周りで多くの関係者と接するほど、2人は現実を突きつけられた。大企業や業界団体は高額なロビイストを雇える。だが小さな会社にはそれが難しい。

メアリーが強く感じていたのは、世論が政策に反映されにくいという問題だった。ロビー活動に約1億5,000万円($1,000,000)を使える会社とゼロの会社では、前者が圧倒的に有利になる。政治の世界に入るための壁は高く、有名な事務所を雇い、現地で存在感を持つことが「当たり前」になっている。

ジェイソンは、その結果として政府への信頼が過去最低レベルまで落ちていると見ていた。ロビイスト側も、どうしても高い報酬を払える顧客を優先する。多くの創業者は「自分たちの話を本気で聞いてくれる人」を見つけられないでいる。

メアリーはこう考えた。大企業でなくても、新しいアイデアについて意見を言う権利はある。金や人脈がある人だけが順番を飛ばして前に出られる状況は、変えなければならない。

最初はオフィスでの議論だった。それでも2人は別々の職場に移った後も、この問題を忘れなかった。パンデミックで在宅勤務になり、スタートアップの世界に目が向いたとき、考えが固まった。「小さな会社向けのロビー支援を、本気で形にしよう」

2022年初め、2人は同時に仕事を辞めた。安定を手放す怖さはあった。それでも、誰かの助けになる仕組みを作れる可能性のほうが大きいと判断し、Terrapin Strategyが動き出した。

スタートアップのためのロビー活動

まず必要だったのは「本当に求められているのか」の確認だ。2人はロビー活動や政策アドバイスを手の届きやすい価格でスタートアップに提供し始め、現場で学びながらサービスの形を整えていった。

顧客は紹介で少しずつ増えた。ただ、献金を積み重ねて法案を動かす昔ながらのやり方は、小さな会社には向かないとすぐに分かった。

そこで2人は別の勝ち筋に力を入れた。新しい法律を理解して対応する支援、そして政府側にスタートアップの実情を分かりやすく伝える活動だ。政治を「動かす」より、まず「通じる状態」を作ることを優先した。

ジェイソンがまず重視するのは方向づけだ。会社の目標が政府の現状とズレているなら、近い制度や流れに合わせて考え直す必要がある。スタートアップの技術が新しすぎて、政府側が何をしているのか把握できていないケースも多い。だから、地図を作るところから始める。

方向が決まったら、次は窓口探しだ。どの部署が担当で、誰が制度を運用しているのかを特定し、「この制度に合う企業がいる」と伝える。場合によっては担当側に話を聞く義務があることも示しながら、面談につなげていく。

最初は懐疑的な反応をされることもある。しかし話が通じた瞬間、空気が変わる。相手が椅子にもたれ、ため息をついてから「今やっていることが分かった」と言う——その瞬間を2人は大切にしている。そして、その理解にたどり着くまでの時間を短くしたいと考えている。

ただし、政府との関係は「金を払えばすぐ結果が出る」ものではない。勝つことも負けることもある長いプロセスだ。メアリーは、政府が必ずしも話を聞いてくれないことが顧客の不満になりやすいと言う。だからTerrapin Strategyは、政府を飛び越えて目的を達成するのではなく、今ある規制の中で「どこに当てはまるか」を探し、そこから前に進む方針を取っている。

学びを公開しながら進む

Terrapin Strategyは、スタートアップと議員・行政側をつなぐ仲介役としても動く。関心のある企業を集め、協力したい政治側の関係者と結びつける。どちらか一方の都合だけでなく、双方にとって意味のある形を目指している。

顧客獲得のための情報発信にも力を入れた。記事を積み重ね、定期的に発信する。政治の世界でスタートアップを運営して得た学びは、なるべく隠さず共有する方針だ。

メアリーにとって「完璧ではない」「学びながら進んでいる」と認めて発信することは、気持ちを楽にする行為でもあった。

ただし、政府内の人脈をすべて表に出すことはしない。それは大きな強みであると同時に、新しい会社が信頼を築くのが難しい世界でもある。慎重さが求められた。

GovTechを作る挑戦

現在のTerrapin Strategyは、テクノロジー企業というより支援会社に近い。それでも2人は、仕事をSaaSの形にして広げることを見据えており、利益を再投資してプロダクト開発に充てている。

ジェイソンはこう考える。営業には営業向けのツールがある。マーケティングにも専用のツールがある。なら政府対応にも、専用の道具が必要なはずだ。

試作品として目指しているのは、企業が政策の動きを把握し、政府との関係を一元管理できるプラットフォームだ。

開発中のアプリは2つある。1つ目はOperator。政府対応を支えるサービスで、法的なやり取りも含め、連絡や記録を管理できるCRMのような仕組みを目指している。2つ目はUpstream。データ中心のツールで、将来的には政府資金の情報や、担当者とのやり取りがどれくらい成果につながったかまで追えるようにしたい。

ただ、現実は甘くなかった。必要なソフトやデータベースは想像以上に高額で、問題も複雑だった。同じ手順を繰り返せる形に整理するだけでも時間がかかり、これは誤算だった。

さらに政治の世界は保守的で、新しいテクノロジーを持ち込むだけで疑いの目が向けられやすい。メアリーは、確立されたやり方を尊重しながらも別の形に変えていく必要があると言う。露骨な反対は少なくても、失敗を待っているような空気を感じることがある。

それでも2人は、あえて逆方向に進む覚悟を決めている。プロダクト設計は楽しい。しかし最大の課題は、目指す姿からぶれないことだ。

政治の世界は変わりにくい。だからこそ、変えられたときの意味は大きい。ジェイソンとメアリーはこれが長い勝負だと分かっている。それでも、良い時代はこれから来ると信じて、Terrapin Strategyを前に進めている。