昼は現場でペンキを塗り、夜はパソコンの前で仕組みを作る。そんな生活を、グレッグはほぼ30年続けてきた。
しかし時代が変わるにつれ、職人が自力で集客するのは難しくなっていった。便利だったはずの口コミサイトや業者紹介サイトは、いつしか「払わなければ仕事にならない」空気を強め、職人たちの間に迷いと不安が積み重なっていった。
それでも彼は、職人が主役になれる場所を諦めなかった。2021年に立ち上げたServiceBookieは、2年足らずで年商約3,800万円規模(25万ドル規模)に近づいている。ここに至るまでの試行錯誤が、この話の本編だ。
口コミサイトに負けないために、元ペンキ職人が作った新しい仕組み
グレッグは塗装職人として働きながら、夜になるとパソコンの前に座り、ネットのビジネスを作り続けた。そんな生活を、ほぼ30年も続けてきた。
1990年代末、ネットの求人掲示板や広告が広がり始めたころ、グレッグは誰よりも早くオンライン集客に乗り出した。広告費がまだ安い時代で、少ない費用で多くの見込み客を集められた。
ところが2000年代に入ると状況が変わる。口コミサイトや業者紹介サイトが増え、職人と客をつなぐ便利な存在になった。最初は、職人の味方だった。
だがグレッグには、やがて別の景色が見えてきた。便利だったはずのサイトが職人から客を遠ざけ、最終的には「金を払えば紹介してやる」という形に変わっていったのだ。
なぜ大手サイトが強くなるのか
検索結果では、ページ数の多いサイトが上位に出やすい。業者紹介サイトは地域別・業種別にページをいくらでも作れるため、検索上位を取りやすい。
その結果、職人が自分で作ったホームページは埋もれてしまう。仕事を取るには大手サイトの「見込み客紹介パック」を買うしかない、そんな空気が生まれていった。
グレッグは思った。職人が大手に頼り切らず、きちんと客とつながれる場所が必要だ、と。
グレッグはどんな人間か
塗装の免許と、ネットへの挑戦
グレッグが塗装業の免許を取ったのは1995年、30代のころ。同じ時期に、ネットにも強く引かれ始めた。
1998年には高速回線をいち早く導入し、自分の塗装会社のホームページを作り、オンライン広告にも取り組んだ。当時それをやる職人はほとんどいなかった。グレッグは「ネットで仕事を取る」ことを、早い段階で実践的な技術として身につけていた。
その後もさまざまな仕組みを作った。宿題サポートサービスのようなアイデアも形にしたが、学校との契約が難しく、広がらなかった。
2000年代半ばには、大型店の在庫処分品を売る仲間と販売サイトを運営し、1年で大きな売上を出した。ただ競争が激化し、数年後には事業を売却した。
普通なら「落ち着きがない」と言われそうな動きだが、グレッグの考えは違う。金だけが目的ではない。難しい課題を解くこと自体が面白い。簡単じゃないから、やる価値がある。そういうタイプだった。
家族を支えた、本業の強さ
副業を何度試みても、生活の土台は塗装会社だった。ネット広告が安かった時代にうまく活用できていたため、少ない費用で仕事につなげられた。1件の見込み客が数ドル程度で取れ、競争も今ほど激しくなかった。
「見込み客を奪って売り返す」への怒り
便利だったサイトが、いつの間にか変わった
最初のころ、口コミサイトや業者紹介サイトは便利だった。少ない費用で目立ちやすく、仕事も増えた。
しかし市場が大きくなり投資資金が流れ込むと、運営側はより多く稼ぐ仕組みを強化していった。職人が払う金額は上がり、紹介される見込み客の質は下がっていった。
空振りの問い合わせでも、料金が発生する
グレッグが特に問題視したのはここだ。紹介サイトは外部の提携先から問い合わせを集めることがあり、その中には本気で依頼する気のない人も混ざっている。
相場を知りたいだけの人でも「見込み客」として扱われ、職人はそのたびに料金を払う。働く前から、金だけが消えていく。
「自分に来たはずの問い合わせ」が、ライバルにも流れる
さらに深刻なのは、客が特定の職人に連絡したつもりでも、同じ問い合わせが複数の業者に送られる仕組みだ。
職人は高い料金を払ってその問い合わせを受け取る。しかし同時に、ライバルにも同じ情報が渡っている。グレッグはこれを「奪って売り返しているようなもの」と感じた。
こうした不満はグレッグだけのものではない。口コミサイトの影響力を問題視したドキュメンタリーもあり、小さな事業者が「広告を買わないと不利になる」と感じる実態が取り上げられている。
対抗するためのサービス作り
職人向けの対抗サイトから始まった
多くの職人はネットの仕組みに詳しくない。検索で上位に出るための工夫には、時間も知識も必要だ。
しかしグレッグは違った。検索で勝つ仕組みを理解していた。「なら、同じ武器を職人側のために使えるはずだ」と考えた。
2020年、塗装職人向けの対抗サービスを作った。これが出発点になる。
2021年、ServiceBookieを立ち上げる
2021年、グレッグはServiceBookieを始めた。住宅メンテナンス系の職人が、大手の業者紹介サイトに頼らなくても客に見つけてもらえる場所を作ることが目的だった。
立ち上げから2年足らずで、年商は約3,800万円規模(25万ドル規模)に近づいた。ハウスクリーニングやペット関連など、扱う分野も広げていった。
Facebookグループで仲間を集めた
グループ機能の追い風
2020年ごろ、SNSではおすすめグループが表示されやすく、参加者が増えやすい時期があった。グレッグはそれを「無料で広められる波」と見た。
サービスと並行して職人向けグループを作り、広告や口コミも活用して広げていった。塗装職人のグループは約4,000人規模に成長した。
さらに、ハウスクリーニングや便利屋など別の業種も集まり始めたため、グレッグは方向転換する。サービス名も内容も広げ、より多くの職人が使える形に変えた。
その後、業種を問わない職人向けの2つ目のグループも作り、約15,000人規模まで育てた。
宣伝だけの場所にしない
グレッグは分かっていた。グループが宣伝だらけになれば、人は去る。
会話が続くよう運営側が関与し、必要に応じて見守り役も置いた。SNSが好きで人に教えるのが得意な人に協力してもらい、投稿の管理や助言を任せたこともある。
人数が増えた今は、宣伝投稿を減らし役立つ内容を増やす方針にしている。メンバーが宣伝したいなら、SNSで直接発信するよりServiceBookie内の掲載ページに登録するよう促す。こうしてSNSからサービスへの流入が増えていった。
別の事業にもつながった
グループ運営の経験は、新たな仕事も生んだ。職人向けにSNS広告を運用するサービスだ。
検索広告よりSNS広告の方が見込み客を集めやすい場面がある。そう考えたグレッグは、1週間の広告運用プランなどを用意し、見た目にもこだわった広告を作っていった。
職人が主役になる業者紹介サイト
無料の基本ページと、有料で増やせるページ
ServiceBookieでは、職人は無料で紹介ページを1枚作れる。年額の利用料を払うと、サービス内容ごとにページを増やすことができる。
なぜページを増やすのか。検索サイトはページ単位で情報を収集するからだ。たとえば「外壁塗装」と「室内塗装」を別ページにすると、それぞれで検索に引っかかる可能性が上がる。
これは大手サイトがずっとやってきた手法でもある。グレッグはその仕組みを、職人側に有利な形で活用したかった。
職人が増えるほど、検索にも強くなる
登録する職人が増えページ数が増えるほど、検索での存在感も高まる。結果として、職人が多額の広告費を払わなくても自然に見込み客が集まる流れを作れる。
ただし、過去に紹介サイトで嫌な思いをした職人は警戒する。その警戒を解くには、時間をかけて伝え続けるしかない。グレッグはそこも覚悟している。
広がるサービス領域、次の狙い
住宅関連から、さらに外へ
ServiceBookieは工事系にとどまらず、住宅ローン関連の分野も扱い始めた。今後はハウスクリーニングや便利屋がさらに増えると見ている。
試しにハウスクリーニング業者を集める投稿をしたところ、短期間で多数の問い合わせが来た。需要の大きさを実感した出来事だった。
次はペットサービス
グレッグが次に注目するのはペットサービスだ。移動式の犬洗い車、散歩代行、ペットの世話など、街の中には仕事の形がたくさんある。
既存のペット系サイトは手数料が重なりやすい。そこに、わかりやすい年額制で勝負できる余地がある。グレッグはそう読んでいる。
最後に残ったメッセージ
グレッグが最後に語ったのは、起業の根っこにある話だった。
やめた瞬間、何も起きない。挑戦を続ける限り、可能性は残る。成功している人間も、金だけで動いているわけではない。強い情熱があるから続けられる。
昼はペンキを塗り、夜は仕組みを作る。その積み重ねが、職人が主役になれる場所を生んだ。
